試食 (消費財の"お試し")

[はじめに] [目次]

試食と言えば、スーパーやデパ地下で小さく切ったものを渡されるイメージがあると思う。三角巾を頭にまとった人が、爪楊枝の先にソーセージだったりお菓子だったり。観光地などに行っても、お土産屋さんでそんな光景に出くわす。

店頭での試食とサンプルの試食

ただ、試食は店先で食べるだけとは限らない。お店で貰って家に持って帰る試食のタイプもあるし、宅配で受けとる試食もある。

持ち帰るとか送るといっても、爪楊枝に刺さったままではない。一般的には小さな袋に小分けにされたものが多いと思う。試供品、いわゆるサンプルだ。家でそのまま食べられるものもあれば、調理を必要とするものもある。試飲も文字通り飲み物の"お試し"で、試食と同じくくりである。

試食や試飲は、試着などの様にフィット感を確かめるための”お試し”というよりも、どういう味かを知るための”お試し”のことの方が多いかもしれない。もちろん、真剣に味を確かめて買いたい人もいる。ワインにこだわりのある人なんかはそうだ。嗜好品の専門店などでは全商品試食させてくれるところも稀にあるが、みんなが皆そうとは限らず、スーパーやコンビニだとそうはいかない。服の試着だと普通は何でも着させてくれるが、試食はそうではない。

試食は試着と違って、試したものの形がなくなってしまう。だから、何度でも好きなだけ試してください、とは言いにくい。そこで、店頭試食やサンプルといった形で、小口に切り分けられているとか、少量のパッケージを渡されることも多い。メイク用品や生活雑貨などでも同じ類だと思う。無料が前提になっていることが多いので、商品の構造や売り手のブランド戦略にもよるが、比較的そんなに値が張らないものであることが多い。

そんな試食も、店頭試食(試用)と持ち帰り(試供品)とでは、"お試し"の仕方や性格が異なってくる。

一般的に試供品とは、いわゆる「サンプル」で、どちらかといえばあらかじめ持ち帰り用にパッケージ化されたものを指す。渡されたその場で試食はしない。店頭での試食品も、試してもらうために提供するという広い意味での試供品ではあるのだが、厳密には試供品ではない。

低価格品ゆえに、多くの人に試してもらいたいがゆえに、ひとつの試供品の配布にそんなに手間暇もかけていられない。多くの人に渡す、受け取ってもらうがまずは大事だ。そして、もらった側も手間暇かけない。つまり、使われない。タンスかどこかに眠ってしまう。サンプルのもらいっぱなしは、試すことを後回しにさせてしまう。

レシピ

その点、店頭試食の方が確実に試食してもらえる。加えて、ある程度の時間の会話やプレゼンテーションの時間を得られる。スーパーの試食販売は、食べ方も含めた提案型だ。試食品は加工品や食材のことが多いので、商品をそのまま手を加えずに食べられることは少なくて、何かしらの手間がかかる。

ただ、味を知ることについては“お試し”できるが、作ることについては店頭で"お試し"できないのが普通だ。しかし、料理をしているところは見せてくれることもある。ついでに、教えてもくれるし、アドバイスもくれる。見ることでイメージがしやすいから、台所に立っても取り掛かりやすい。

これは、実演販売と呼ばれるものだ。実演販売は、元来は「ガマの油売り」の様な派手なパフォーマンスのことを言った。その全国ネット版が「ジャパネットたかた」かもしれない。最近は、派手さよりも実益重視で、試食販売も実演販売に含まれる。デモンストレーションである。試着の様なシミュレーションとは違う。

一方で、サンプル配布での実演販売のケースは少ないかもしれない。試供品がタンスの肥やしになる理由にはいろいろあるが、使い方、作り方がわからない、イメージしにくい、だから手を付けにくい、というのもひとつの要因だと思う。

使い方がわからない、使いこなし方がわからないと使ってもらえないなら、売り手も配る意味がない。だから大抵は、レシピや手引き的なものが書いてあるか、付いている。文字数も限られるので、表現の幅が広い自社WEBで紹介するほか、レシピ共有サイトとのコラボもある。

1分動画

ただ、レシピがあっても、頭では理解できても着手は意外と手間取るものだ。イメージは大事だ。そこで、動画で作り方を紹介するケースも増えてきた。ただし、最初は珍しかった動画も今では当たり前で、全部見るのも手間に感じる人は多い。なので、最近は短尺動画が主流だ。

1分動画レシピの類は、メーカーだけではなく一般ユーザーも作る。それも、キレイに楽しいキャプションも付けて気軽にSNSに共有する、そういう時代だ。レシピも大事だけれど、伝え方はもっと大事なのだ。そんな動画へ誘導するためのQRコードが商品に付いている。でも、それですら手間に感じる時代だ。

一方で、通販の試供品は、その手間の敷居を下げる。試供品が手許に届いた頃を見計らって、売り手はたとえば動画のURLをメールやSNSでプッシュ通知できるし、逆に動画を見てもらってから試供品を送ることもできる。

ライブコマースというカテゴリも登場した。閲覧環境も進化して、実演販売をしながら、レシピをユーザーと共有することなども可能だ。まだまだ普及はしていない。

試供品プラスα

試供品が、調味料や材料単体だけだと、そのままでは料理にならない。レシピに沿って必要な材料や、時には調理器具を新たに買う必要があるとなると、レシピを見て試しに作りかけても、そこで止まってしまう。

そこで、有料だけど”お試し”セットとして必要な材料を一式揃えることもある。ハードルは一気にさがる。レシピを見てそのまま料理を続けられる。特殊なケースだと、道具が付いてくるキットもある。

高額の健康食品などだと、"お試し"購入者に指導サービスがアフターサービスとして付いてくることもある。電話で相談に応じるところもあるが、コーヒーなんかだとカフェに集まってもらって講座を開くこともある。

マリアージュも一種の食べ方提案だ。ただし、料理の作り方ではなく、組み合わせ方だ。Aという料理に合う料理を選ぶペアリングだ。組合せの模索は雲をつかむような話だから何かしらの提案が必要で、ワインのテイスティング(試飲)とソムリエもその役割を担う。マリアージュは番いの相手が必要になるから、ついで買いを促す。

無料か有料か

さっき、試食は形を失うと言った。一度胃袋に入ってしまえば、戻して店頭に並べなおすことはできない。そこで、試食はその消えてしまった食材の費用を誰が持つのかがひとつのネックになる。

試食は無料のことが多い。少量で試せるものが多いというのもある。もちろん、最終的には売り手側の販促費用としてあらかじめ含まれているし、買った人の代金から引かれてもいる。だいたいは、1回あたりの試食の原価や費用は安い。相当の値段がするものやブランドのある商品の場合は、お金を払わずに試食できるとしても、そう簡単に試せないこともある。

店頭試食の有料化という試みもあった。たとえば、成城石井でもそういう取り組みがあった。高級スーパーだと原価やブランドイメージの問題もあるので、ものによって簡単に無料試食してもらうわけにはいかない。そこで、試したい人には併設のレストランで少しお得な値段で試食してもらって、良かったらまたお店で買ってもらうというものだ。

持ち帰りの試供品でも、有料のものがないわけではない。以前はサンプル専門店というものもあった。都心の一等地に店舗を構え、食品だけではなくコスメなんかも含まれるけれど、多少の入会費や年会費を払うことで、無料でたくさん試供品を持ち帰ることができた。対価としてアンケートに回答してもらうことでメーカーのマーケティング支援という色彩もあった。メディアにも取り上げられ、連日お店の前は大行列だった。ただ、長くは続かなかった。

理由はいろいろとあるだろうけれど、一般的にタダを前提としたアプローチは買い手の質を下げると言われる。フリーライダーの問題だ。フリーライダーとは、対価を支払わないで便益を享受する人を指す。タダ乗りの人が増えて顕著になると、お金を払ってでも買おうとする好ましい買い手を駆逐してしまうことがある。"お試し"の世界でもある話だ。それは、作り手や売り手であるクライアントやメーカーにうま味がない。

無料と有料によってアプローチは大きく変わる。無料の”お試し”の場合、受け取っても貰い手の頭の中の優先順位は低くなりがちで試してもらう機会を失いがちだ。物量作戦になる。その点、有料で試食する人は本気の人が多い。財布を痛めているから、元手を取ろうとする。

ただし、有料にしたところで、試食しようとする人の頭数は一気に減る。マス向けの無料試食の有料化がうまくいかないのは、その辺りにも要因があった。トレードオフの関係だった。しかし、通販になると多少、風向きが変わる。

送料と受益者負担

通販にもサンプル専門店というのもあって、こちらも脚光を浴びた時があった。ただ、本業外のトラブルもあったりして、伸び悩んだ。しかし、今は有力ネット企業の傘下に入ってモデルチェンジを行い、今では規模が拡大している。そのチェンジというのが、ユーザーに対して送料などの一部の受益者負担を課したことだ。※事例:サンプル百貨店

サンプル専門店に限らず、通販の試食では有料のケースは多い。それは、どちらかというと、送料負担の色彩が強い。送料は無料化が広がる中でも、負担する側にとっては馬鹿にならない。無料試供品にお金を払うのは嫌でも、送料には理解を示すユーザーは多い。試供品が無料ゆえに、逆に送料くらいは、とでも言うべきか。それにより本気度の識別が可能になる。

高価格の健康食品などは利幅も大きいことも多いから、「初回無料お試し」と銘打つ気前のいいところも多い。もちろん、顧客情報を得られるので、オフラインと違って後日セールスもしやすいから、回収もしやすい。

一方で、送料分などの一部負担なんかではなく、売り手側がこれだけは試してもらいたいという品をパッケージにしたバージョンの有料の”お試し”セットもある。それを試してから出ないと、うちの商品は売らない、そういうところもある。一回食べてみて、それで良かったらうちの商品を買ってください、というメッセージだ。商品に自信のある会社ならではの為せる業だ。

セルフメイド試食

ここまで書いてきたものは、売り手側で試食用にお膳立てされたものだ。しかし、そればかりが試食ではない。買い手側の自発的な試食もある。「試し買い」と称される世界だ。通常の商品を購入し、試しに食べて、良ければまた買うしリピーターにもなる。だいたい、スーパーの商品棚の前に立って初めての商品を手に取って、悩んでいる時はそうだ。買い手の懐や金銭感覚にもよるが、大なり小なり試し買いは、無自覚的に行われていることは多い。

この試し買いを誘発するために、売り手側もそれに適したサイズや価格にして通常商品として売っていることもある。通常商品より小さなサイズにした正規品(プチサイズ)であったり、複数個をセットにしたひとつの商品をバラ売りにしたりして、販売価格も抑えている。「量り売り」という手法もある。砂糖や醤油なんかだとそういうこともできる。買い手は、少量化によって有料"お試し"をしている。※事例:クリスマスケーキの"お試し"サイズ(ローソン)

もうひとつ、ジェネリック型というアプローチもある。ある商品をというよりは、その商品の世界やジャンル自体が未経験の時だ。たとえば、メロンを食べたことのない人がいたとして、何千円もする人気のAというメロンをいきなり買うのは躊躇するから、数百円で済むBを買って、まずメロンの世界を知る、といったパターンである。メロンが好きになったら、Aを試すのだ。高額から定額までの価格帯バリエーションを備えているメーカーだと、そういうこともできる。

試食の組織化

普通は、ひとつの試食やサンプルだけのために出掛けない。「ついで」や「ながら」で試食したり試供品を貰ったりするのが普通だ。

試食が目的やゴールになると、試食で終わってしまう。その先がない。デパ地下グルメ・ツアーをする人がいるけど、よかったら買って帰るという人は少ない気がする。事例:美味しんぼの“辰さん

そもそも、スーパーの試食コーナー自体が、常設されているわけではなく、期間限定の"お試し"であることが通常だ。それに、試食販売は減少傾向にあるという。最近はポップアップストア形態のところもある。ただし、高級食材や観光地のお土産屋さんなんかになると、「いつでも」ということはある。

調味料や加工食品などの低価格薄利の大量生産商品は、作り手も「薄利多売」を考えるので、試食も「多食」してもらいたい。どこかのスーパー1店舗でやればいいというものでもなくて、だいたいは多くのお店で一斉にやろうとする。そうしないと費用対効果が悪い。なので、試食コーナーの組織化・ネットワーク化が大事だ。

組織化する相手はスーパーとは限らない。飲食店や社食、学食、料理教室などとのコラボレーションという技もある。お店の料理に試用してもらって、卓上で宣伝してもらう。ただ、飲食店側にも料理に当然コダワリがあるので、タダで食材を提供して宣伝料を払ったとしても簡単には組んではもらえない。なので、食以外の意外なコラボを企むこともある。

イベント効果

「多食」という意味では、イベントなど大勢の人が集まるところも狙われる。会場では、試食コーナーや試供品配布をたまに見かける。ただ、配るだけ配って、受け取る側も「もらいっぱなし」になることは多い。悲しいことに会場のゴミ箱に捨てられていることもある。

せっかく配るからには、「ぱなし」にならない様、少しでも「その後」を考えるのは担当者の宿命だ。無料サンプルの対価として、アンケートに回答してもらうケースが多いが、書く方も書いてもらう方も手間だ。だから、最近はとりあえず「QRコード」を設置して、遷移先でアプリをダウンロードしてもらったり、WEBでコンタクト先を取得したりする。

イベントの中には試食試飲を主役にした試食会、試飲会イベントも増えてきた。同時に色々な品に触れられるからよい。主催者は試食試飲をイベントとして集客をする。いい品が集まれば、有料でのイベントでも活況を呈する。お金を出して試しに来る人は本気だ。その場でファンというコアなリピーターが生まれることもある。売り手である商品メーカーも本気になる。

いいイベントにするために、ファンを作るためには、単に目当ての品を飲み食いしてもらうだけにはしない。企画やコンテンツも大事だし、場所も大事だ。たとえば、お茶の試飲をするにも、有明のビッグサイトや幕張メッセよりも、古い町並みの古民家の方が雰囲気も出る。インスタ映えも期待できる。

フィッティングが大事な試着よりも、試食は出会いの色彩が強い。未経験の味という未知の世界との遭遇だ。出会いの場として、物語にふさわしい舞台は効果的だ。実際、私の様に味のよくわからない凡人でも、築何百年の由緒ある建物で伝統の味というものを試食させてもらうと、貴重な味覚を経験したように感じるし、手に取ってレジに向かってしまう。

もし、それが友人や家族が一緒だと尚更だろう。会話も盛り上がるし、敷居は下がるし、配る側も接触もしやすい。SNSでも拡散させやすい。試食は物語の一部だから、登場人物とそのやり取りは重要だ。

試食は受け身

試食販売の店員さんたちのことをマネキンと呼ぶ。最近は女性だけでなく男性も増えてきた。この人たちも、物語の登場人物のひとりだ。しかも、街角や店頭の何気ない光景に溶け込んだこの人たちが、ソーセージをめぐるひとつの物語のカギを握っている。

入場料が必要な試食イベントとは違って、ありふれたスーパーの試食というのは受け身のことが多い。チラシを見てセール品のソーセージを買いに行っても、チラシを見てソーセージの試食をしに行く人は圧倒的に少ないのではないかと思う。店内を歩いていたら、たまたま声を掛けられているうちになんとなくとか、気づいたら爪楊枝にささったソーセージを持たされていたというのはよくある話だ。私はその口だ。

マネキンさんのフレンドリーな語り口や、パワフルな巻き込む力はすごい。商売上手な凄腕のプロがあちこちにいるらしく、伝道師と呼ばれたり、おせっかい上手な人だったりするが、敷居を下げ、スムーズに接触するのが上手だ。キッカケというものは色々だけど、こういう会話でもキッカケとなって物語はスタートしている。これがなかったら、感動の発見や出会いはなかったかもしれない。美味しさのついでに、予定外の買い物をしてしまって帰り道に後悔する人ももちろんいる。

スーパーだけではない。街中やイベントでサンプルとして貰うのもそうだし、ノベルティとして貰う景品のこともある。通販や何か別の送付物のオマケで入っていることもある。これらも、受け身だ。

頼んでもないのに送られてくるサンプルもある。ポスティングもだ。でも、そこから発展する確率は、店頭での会話よりはよほど低い。もちろん、売り手は長期的な認知の向上や打率を考えての施策なので、即買いを期待も促してもいるわけではない。

ギフト

一方で、知人友人から贈られるギフトの食べ物はどうだろうか。一種の無料試食になっていることがある。当然、その費用は贈り主が負担している。誕生日プレゼントやお中元でもらったもの、同僚からお裾分けでもらったお菓子、お土産もそうだ。そこからファンになることはないだろうか。無機質な貰い物より、知り合いからの贈り物ギフトの方が、そのあとのコミュニケーションや物語は生まれやすい。

ギフトのデジタル化もそれを後押ししている。例えば、LINEでスタンプをプレゼントするのなんかもそうだが、SNS上の会話の中での気軽なギフトはもはや当たり前の光景だ。スタンプだけでなく、コンビニやファストフードで使える100円前後のコーヒーやお菓子の交換券なども挨拶代わりに贈られる。

低価格で手間のかからないカジュアルギフトは裾野と敷居を一気に下げ、メーカーにとって好ましい試食の機会を拡大している。従来のクーポンやノベルティの様なものも、技術を活用し形を変えると物語性のあるギフトに生まれ変わる。事例:ギフティ

レストランの試食

飲食店で出される食事にだって試食はある。スタバなどに行くと、スタッフが小さなカップに入ったコーヒーやケーキを試飲試食として配っている光景を見たことがある人もいると思う。

レストランは小売ではなくサービスだ。提供するのは食材の集合体ではなく、料理であり、料理人による付加価値だ。モノが出されるけれども、俗に言うコト消費の世界だ。

ただ、そのレストランが日常の光景の中なのか、非日常の世界なのかで試食の傾向も変わる。頻繁に通うスタバと一生に1回行くか行かないかわからないフレンチとの違いとでも言うべきだろうか。価格帯や近さで比例するかもしれない。

非日常の体験は、それ自体がゴールのことが多い。またお越しくださいと言われても、簡単にはリピーターになれないお店もある。ワインのテイスティングは別として、値の張るコースメニューを試しに食べにきましたとは言いにくい。

ただし、レストランの場合は、ランチという試し方がある。ディナーで訪れた時よりも安く味わいやすい。お店側も、ランチは採算ギリギリで味を知ってもらって、ディナーでゆっくりお酒もいっぱい飲んでもらって利益を出すという考えのところも多い。ランチ以外にも、季節や記念に応じたフェアやキャンペーンもある。今ならテイクアウトで味を知ってもらって、来るべき時にお店でゆっくり食事をしてもらいたいという思いも急増している。

お店の関係者には、グランドオープン前の試食会という名のレセプションパーティがある。手ぶらというわけにはいかないから、実際は無料ではない。お店側も、新人スタッフ教育のためにオペレーションの予行演習や本番テスト(試験)としてデモンストレーションに用いている。

中食はどうだろうか。スーパーや弁当屋さんに置いてある調理済み総菜やお弁当の類だ。これはテイクアウトが前提だ。店頭試食や試食パックの様な詰め合わせセットを置くところもあるけれど、中食で特徴的なのはタイムセールだ。保存が効かないから、時間が経ったり、閉店時間が近付いたりすると一気に値下げをする。これが試食の代わりを果たしている。

消費財の“お試し”

試着が耐久財の"お試し"であったのに対して、試食は非耐久消費財の"お試し"の代表例だ。非耐久財や消費財の定義は色々とあるけれど、ココロミル論ではシンプルに食べ物のように、使うとすぐに明らかに形が失われ、やがて跡形もなく消える商品を、耐久財に対しての消費財としている。

洗剤なんかの日用品もそうだし、サプリ、化粧品、鉛筆やノートなどの事務用品(消耗品)もそうだ。

消費財の”お試し”も、耐久財の"お試し"と同様に、共通する手法だったり課題だったりがある。費用の負担のことから、渡し方など当てはまるものは多岐にわたる。もちろん、耐久財にも適用されるものもある。もちろん、試着のところで取り上げたものも試食で当てはまるものもあるし、そうでないものもある。試食では、ARとか仮想試食というのはあまりない。

この各論については、チャプター03以降で追々取り上げていきたい。





この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?