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【はじめに】 "試みる"を論じてみる

はじめまして。香川と申します。
試みる。その文字に見覚えはあっても、不意に言われるとあまりピンと来ないタイプの言葉かもしれません。が、これから次の様なことを書いていってみようと思っています。

ココロミル論のポイント

まず、その前に確認しておきたいのが"試みる"と”試す”とは違うということです。”試す”が目的である対象のことを確かめるひとつの工程であるのに対して、"試みる"は、その試すことになったキッカケや試すことのその先のゴールなど、”試す”の前後も含んだ一連のプロセスだということです。しかし、はじめの頃の段階では、ゴールはよくはわかっていません。進んでいくうちに見えてくる存在です。やってみないとわからないのです。とりあえず、やってみます。しかし、それだけでは不都合も生まれます。成果も芳しくないかもしれません。詳細は追々書くとして、まず【はじめに】においては、

■"試みる"とは、上手な「やってみないとわからない」の実践

としようと思います。大雑把ですが、次の様な点に着目しています。

・まず”はじめの一歩”を進むことの重要性。時には、”重い腰を持ち上げる”工夫も
”お試し”の機会を積極的に持つことで、その対象のことを知り、確かめる
・このプロセスを通じて自分だけが感じ取れる生の情報を活かして、次の行動および最終的な判断へ反映していく、効果的なサイクル
・不確実性が前提のプロセスでありながら、”イチかバチか”ではなくて、コントロールされた「やってみる」であること

この考え方は日常の買い物から人生の大きな決断まで、広くあてはまるかもしれません。時には、問題解決や意思決定のひとつのアプローチ方法にもなるのではないでしょうか。

そして、試食や試着、試乗などの様々な”お試し”の機会は、"試みる"を可能にする不可分で不可欠の重要な装置・仕組みです。”お試し”は日常の買い物の世界で発展してきたものであり、また興味深いものでもあるので、これから書くことの多くは売り手のマーケティングや販売促進の視点に寄ると思います。その方が面白味もあり関心を持っていただけるかもしれません。

そこで、試みられる側でもある売り手側視点のポイントとして、以下のことも前もって挙げてみたいと思います。従来の”お試し”の話とは違うかもしれません。

■ "お試し"をしっかり作りこみ、はっきり伝える。
”お試し”はオマケではない。"お試し"の様々な手法や機能、新しい仕組みを工夫し組み立て、プログラムを充実させ、曖昧で中途半端な従来のお試しから一歩前に進む。体感性、オープンネス、退出の自由など、"試みる"にあるべきポリシーを様態に応じて今一度見直し、プログラムに反映させる。そして、積極的にその新しい”お試し”を買い手に伝える。

00-1_お試しの位置

■ "試みる"を舞台に起承転結の物語が生まれやすくする。
"試みる"は起(キッカケ)、承(接触)、転(お試し)、結(意思決定)の起承転結の物語の上で成り立っている。「転」を中心にマーケティングを見直してみる。起承転結それぞれの過程がうまくいく様な舞台をつくる。時には紆余曲折もあるが、それをプラスに活かせるようにする。そして主人公である書い手と、それを支える登場人物との関係も含め、"試みる"の舞台で書い手の物語が魅力的なものになるよう仕向ける。

00-1_起承転結

■ "試みる"ために敷居を下げて、背中を押す工夫をする。
""お試し"は、一歩前に踏み出すための機会であり役割がある。にも拘らず、さまざまなハードルに阻まれることも多い。ハードルは”お試し”だけではなく起承転結すべてに潜む。そこで、手間、空間、時間、距離、お金、人間の敷居を中心に、物理的、心理的な敷居を低くする。また、"試みる"の舞台へと背中を押す人やキッカケが、物語には必ず存在する。特に、前に進む力を与えてくれる「導く人」の役割を上手に引き出せる仕組みをつくる。

00-1_背中と敷居

■ 新しいテクノロジーや外部リソースを積極的に活用する。 
試みるの物語もIT化の前と後で大きく変わった。これまでは特にネット、スマホ、SNSなどが果たした役割が大きかった。現在は、VR、AR、IoT、AI、ロボットなどの技術を先取する動きも多い。またEC、動画サービスをはじめ様々な新しいオンラインサービス活用も増えている。積極的に取り入れることで"お試し"のプログラムや効果を充実させ、物語を魅力的なものにし、敷居を下げて背中を押す工夫や取組みを支える。

00-1_技術活用

そして、売り手側の視点を裏返せば、買い手にとっても”試みる”を上手に活用することで満足のいく買い物ができます。買い手側の上手な"試みる"作戦の立て方についても折を見て触れてみたいと思います。

ココロミル論の大まかな流れ

今のところですが、だいたいこんな感じで考えています。
※目次はこちら

[01]:"試みる"論
そもそも"試みる"とは何だろうか。時には「前進のきっかけ」、時には「既成概念の破壊」、時には「ムダ」、時には「チャレンジ」、時には「自分を映す鏡」。結論としては「やってみないとわからない」を上手にやることなんだというようなことを書いてみます。これも、書いてみないとわからないです。

[02]:さまざまな試〇
試着、試食、試供品、試乗、試聴、試写、試し読み、試住、試算、「試」のつくものはたくさんあります。「試」のつかない隠れ”試みる”も含めてみると、買い物や暮らしにいかに溶け込んでいるかがわかると思います。テクノロジーによって"試みる"も革新を遂げています。買い物の場だけではなく、ビジネスにも人生の節目にも"試みる"仕組みは存在します。そんな様々な"試みる"の世界を紐解いてみます。

[03]:"お試し"のしくみ
ここでは、精神論的な"試みる"論や"お試し"論ではなく、構造的に体系的に「"お試し"とは何だろう」を書いてみたいなと思っています。ここからは、主に商品・サービスの世界がベースになります。耐久財、消耗財、人的サービス、デジタル・サービスなど商品のタイプによって"お試し"の構造も異なってきます。そんな”試みる”を構成する機能(試供品、レンタル、シミュレーションなど)やその進化系、また、その課題。そもそも"お試し"にはルールがあるわけではないので、あるべき姿などにも触れようと思ってます。

[04]:"試みる"は物語(マーケティングを組みなおしてみる)
“試みる”には大なり小なりの起承転結の物語があります。ここでは、起=キッカケ(情報、紹介、偶然)、承=コンタクト(予約、紹介・マッチング、相談)、転=”試みる”(お試し)、結=意思決定(ツール、相談相手、価値基準、タイミング)の段階に分けてみます。物語のその後となるエピローグ(アフターサービス)についても触れます。物語を構成する登場人物との関係から、買い物やマーケティングをいつもと違う視点で見ることができればと思います。

[05]:敷居を下げる
売り手が買い手に試みてもらうには敷居を下げることが必要です(時には上げることも必要ですが)。まずは物理的なものより気持ちの面での敷居を下げることですが、手間、空間、時間、距離、お金、人間の6つの敷居に焦点を当ててみたいと思います。

[06]:背中を押す
知るにせよ、触れるにせよ、試みるにせよ、決めるにせよ、何かを始める時には人の影響を受けていることが多いはずです。"試みる"の物語に登場する人物には様々なポジションがあります。背中を押すのは人とは限りません。そして売り手にはできない役割もあります。ともすれば、何事もなく過ぎ去ってしまう出会いや物語への人の関与を起こしやすくする装置についてやります。

[07]:導く人、いざなう人の役割
物語の中で特に重要な役割を演じる人について。時にキッカケをつくり、時に見本となり、時に相談にのり、時に背中を押してくれる人。その関係値。メンター、コーチ、専門家、先輩、友人、家族、AI・ロボット、売り手など様々なアクターがある中で、その役割や効能などを書いてみます。

[08]:体験と非日常
体験=”試みる”と思われがちですが、そうではありません。それ自体が目的やゴールになる体験は手段としての"試みる"ではないのですが、その分、日常や通常とは違った要素も含んでいることが多いので、逆に物語を活性化させる場合もあります。体験を売るのか、体験で売るのか。ここでは、いわゆる「コト消費」の話や、非日常がもつ効果などについて書いてみたいと思っています。

[09]:テクノロジーが変える"試みる"
ネットの普及前と後とではあきらかに"試みる"は変わりました。さまざまな新しい技術は単純に”試みる”を支える技術だけではなくて、"試みる"全体の敷居を下げ、背中を押すコミュニケーションやプロセスを大きく変えています。デバイス、アプリ、IoT、VRなど各種技術の観点から"試みる"をあらためて整理したいと思います。

[10]:売り手から見る"試みる" 
"試みる"を売り手側からみた”おさらい”になる予定です。"試みる"の発想で売り方、マーケティングを考えてみるにはどうしたらいいか。単純にITを活用するとかSPの手法を部品のように導入するとかではなくて、ベースとなる考え方の様なものを提示できたらと考えてます。

[11]:買い手から見る"試みる" 
どちらかというと、売り手側の視点での話が多くなってしまう"試みる"論ですが、逆に買い手側の視点で"試みる"をどう活用するとよい買い物をしたなと少しでも思えるか。前項とは逆の視点での全体的な整理になってしまうと思いますが、買い物や暮らしの知恵や心得的な視点でまとめてみます。

[12]:ビジネスにおける"試みる"
BtoBの世界にも"試みる"はあります。プロトタイプ(試作品)、β版(試用版)、テストマーケティング(試験販売)、シミュレーション(試算)など。消費者向けの"試みる"と比べると、組織的で体系だった取組みが多いので一見、物語や敷居といった話は関係ないようにも思えますが、実際はどうなのか、営業活動の中の”試みる”や、事業におけるリスク管理と"試みる"的アプローチなども取り上げたいです。

[13]:人生の中の"試みる"
買いもの/売りものが中心の話ですが、進学、就職、結婚‥など、"試みる"は人生の大切な節目でお買い物とは違った既に定着した”試みる”の様式が存在します。それに限らずに、暮らしの中での"試みる"の活用や応用の可能性などについても考えられたらと、今のところ思っています。

書き進めてみるにあたって

・"試みる"の要点のひとつは、「まず一歩進む」です。私もまずは書いてみることを大事にしました。なので、あとで加筆されていたり、内容が変わっていたりするかもしれません。この【はじめに】もですが。御覧になった方など関わった方のご意見やアドバイスも反映しながら変わっていくのも、ココロミル論ならではのβ版の考え方ということでご理解いただけるとありがたいです。なお、ココロミル”論”としていますが、”論”というほど、大そうな難しいものではありません。すみません。。

・大まかな流れのとおり、書こうと思ったことが結構多岐に及んでいます。。なので、まずは全体の骨格からとは思っています。ただ、記事の投稿は順を追っていないかもしれません。つまり記事間に前後関係がないということです。でもnoteの性質もあるので、断片的にでも独立して読めるようにしてみたいと思っています。実は、それは"試みる"論のひとつの考え方でもあります。追々、様々な事例や手法も取り上げていきたいと思っています。

・ここでの基本的な考え方には、「ハーバード流キャリアチェンジ術」(Herminia Ibarra著、金井 壽宏 監修、宮田貴子 訳:Herminia Ibarra, Working Identity: Unconventional Strategies for Reinventing Your Career, Boston, MA.: Harvard Business Press, 2003)という著述にかなりインスパイアされていることを申し添えたいと思います。この著述は、もう十数年以上昔に私が”お試し”のDBサイトを構築していた頃、転職活動をしようと思ってたまたま見つけて読んだもので、簡単に言い切ってしまうと転職関連(正しくは、”キャリアチェンジ”)に関する本なのですが、これがなかなか普遍的な道理がたくさん詰まっていて、今回、マーケティングの視点での"試みる"を整理をしていても、結果的にはここでの言説に行きついてしまいます。ご興味ある方は是非ご覧いただきたい名著です。

・コロナによって”新しい日常”が言われていますが、大きな打撃を受けた業界や会社では”新しい売り方”も問われているところかと思います。マーケティング・販促も従来とは違う試みが必然と求められている中、ITやテクノロジーの活用とともに”試みる"的アプローチを提起させていただく、いい契機なのかなと思っています。ですので、その視点もどこかで反映させるつもりです。

よろしくお願いいたします。

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