"試みる"とは、チャレンジだ
なんか前向きなタイトルだ。前回がネガティブだった気がするから、余計ポジティブな気がする。
前に、”試す”と"試みる"の違いの話をした。"試みる"の方が希望を感じさせるイメージがあると。"試みる"もチャレンジも何かに立ち向かうような、前に向って進む印象だ。
チャレンジ
チャレンジとは、「困難な問題や未経験のことなどに取り組むこと」だ。一方、"試みる"は「やってみないとわからない」で「まずはやってみる」であるから、その先のことは未来の世界で未知だ。ただ、未経験とは限らない。多少の経験あることも試みることはある。それに、困難な問題も前提としていない。試食や試着のたびに問題を乗り越えていたら大変だ。
もちろん、危険を回避することには努める。しかし、未知の世界に入り込めば未経験なことは多いし、たまには困難な問題という壁に突き当たることもある。"試みる"をしていると、その壁を迂回したり諦めたりすることもあるけれど、乗り越えていることだってよくある。"試みる"ことは決して楽をすることではない。
"試みる"をしてみると、壁とは言わないまでも敷居を感じることも多いはずだ。はじめて入るお店は前に立ってみると、高級店でなくても敷居が高いこともある。それを乗り越えるのもチャレンジである。
日々の買い物だってチャレンジのこともある。使ったことのない食材で新しいメニューを作るとか、自分には合わないと思っていた流行りの服を着てみようとするのもそうかもしれない。
話が大きくなるとなおさらで、人生の進路を決める時などまさにそうだ。普通に就活して就職しても次から次へと壁は現れる。結婚もそうだ。付き合っている二人が結婚に向けて前に踏み出すと、お金や習慣のことなど今まで見えなかった問題が見えてくることもある。就職や結婚、進学のことをチャレンジという人もいる。
"試みる"をすることは、大なり小なりのチャレンジをしている。ただ、それは本来のチャレンジならではの主体的や意図的なものではなく、結果的にとか不可避的なチャレンジだ。
お試しの役割
とはいえ、試みていて、気がついたらチャレンジを迫られるのはそれなりに負担だ。そこで、”お試し”の出番になる。”お試し”は、その問題克服やチャレンジを応援する仕組みや場になっていることが多い。ものによっては、様々なノウハウやソリューション(解決策)が集約されている。売り手などの提供者がある”お試し”の場合には、試みようとする人のためにある程度の敷居やリスクが取り除かれた安全な環境が用意されていて、安心して未経験のものを試したり、時には困難な事柄を解決したりできることもある。
敷居の高いお店でも、”お試し”が用意されていることはよくある。試食(会)、試着、一日体験、見学などだ。お店の人が初めての人のためにレクチャーやアドバイスをしてくれる。こちらとしては安心して敷居を跨げる。
新しい食材で新しいメニューを作るのであれば、スーパーの試食コーナーで味を試して、店頭の人にレシピを教えてもらえることもあるし、必要な食材が用意されたお試しセットもあるかもしれない。服なら、フィットするしないもそうだけれど、着合わせやコーディネートをどうするかが悩みどころで、お店の人がコーディネート提案を店頭でしてくれるのはよくある話だけれど、ネットで返品できる通販を利用して、既に家にある服と自宅で組合せを確かめたり、コーディネート・サービスやを利用したり、ARで仮想試着したりもできる。今ならサブスクリプションやレンタル・サービスを利用する方法もある。
就職であればインターンシップという制度がある。採用選考や適性の合う合わないの確認の場として捉えられがちだけれど、一種のお試し就業体験だ。最近はプログラムも充実していて、意図的に解決するための問題や困難が仕込まれていることもある。ひとつの仕組みとして、解決の仕方をサポートしてくれる人やメンターがその場にいることもあって、学びの場として機能している。本来はそういう趣旨でもある。
結婚のまえに同棲する人も多い。純粋に一緒に住みたいからというのもあるけれど、結婚の”お試し”として機能している場合もある。一緒に住めばお金ことや習慣のことなど色々な問題が見えてくるかもしれない。ただ、同棲生活は誰かが提供してくれる”お試し”ではないから、メンターが用意されているわけでもない。なので、自分たちで解決するしかない。しかし、誰かに相談することはできるわけで、同棲の先達者に知恵をもらって、2人の問題に適用する。正式な結婚生活の前のデモンストレーションでもあり予行練習でもある。この様式はマニュアルがなくても自然と成立していることが多い。
どちらのケースでも、もちろん合わなければ前に進まないという選択肢もある。”お試し”は本来は確認の場でもあり、合わなければ無理をせず諦めることも多いからだ。出会いは成就することに越したことはないが、"試みる"や”お試し”の視点でいえばちょっと冷たいかもしれないけれど、そうではない。このことは通常の買い物でもあてはまる。
その場合、無駄足踏んだとか、つらい辛い思い出だけが残ったと言われるかもしれない。しかし、人はさまざまな経験を通じて成長をする、というように、"試みる"ことで、何かを学んでいるということも多いはずだ。