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VOICE for FUTABA−Vol.2 《大学生編》後編「双葉町に望むこと/双葉町にこれから必要なこと」

双葉町で活動する大学生に集まってもらった2022年度の第2回目のトークセッション。後編では、若い世代が双葉町に望むことや、これから多くの若者に双葉町に関わってもらうための環境づくりについて話した模様をお伝えします。

【参加メンバー】
・小林 雅之
東北大学工学部機械知能・航空工学科に在学中。双葉町を「人類最後のフロンティア」と考え、バイリンガル体験型ツアーPaletteCampを発案。

・Trishit Banerjee(トリシット・バナジー)
東北大学大学院理学研究科博士課程に在学中。PaletteCampの共同発案者として双葉町に関わる。

・Swastika Harsh Jajoo(スワスティカ・ハルシュ・ジャジュ)
東北大学大学院国際文化研究科博士過程に在学中。PaletteCampの共同発案者として双葉町に関わる。

・宮内 愛音
慶應義塾大学総合政策学部に在学中。「双葉まるごと文化際」プロジェクトの代表を務める。

・川上 友聖
立命館大学産業社会学部に在学中。「双葉まるごと文化際」プロジェクトの共同代表を務める。

・髙崎 丈(ファシリテーター/KIBITAKI代表)
双葉町出身。元「JOE’S MAN 2号・キッチンたかさき」のオーナーで、2022年に「髙崎のおかん」をオープン。日本酒のお燗を広める活動を展開中。株式会社タカサキ喜画を双葉町に設立、その中でKIBITAKI プロジェクトを立ち上げて双葉町の再出発におけるさまざまな活動を企画・プロデュースしている。

・官林 春奈(ファシリテーター)
双葉町出身。ポストプロダクション・地方テレビ局勤務の後、株式会社omegane(映像制作会社)代表取締役を経て現在はフリーランスの映像ディレククターとして活動中。千葉県在住。

・五木田 隼人
UR都市機構 東北震災復興支援本部 福島復興支援部 地域再生課
原子力被災地での持続的なまちづくりに向けて、関係人口の拡大や誘導による地域再生に取り組む。町内外のさまざまな人が関われるコトづくりを目指し、多様な主体との協働・連携を進めている。

・島野 賢哉(オンライン参加)
株式会社サムライジンガ 代表取締役/プロデューサー
ブラジル、台湾における芸術文化を中心としたプロジェクトに携わる。クリエイティブサウンドスペース『ZIRIGUIDUM(ジリギドゥン)』創設者。髙崎とともにKIBITAKI プロジェクトに参画し、さまざまな事業推進に携わっている。

双葉町に望むこととは

髙崎 みなさんが双葉町で活動している中で、「こんな制度や仕組みがあったらいいのに」と思うことはありますか?

小林 若い世代向けの支援施策があると嬉しいですね。お金や人の支援だったり、事業のアイデアの募集だったり、学生でも手を挙げやすい施策があると助かります。それと、定期的に議論を交わせる場があると良いと思います。熱意を持った人が、今後の双葉町について自由に意見をぶつけ合う場所。民主主義で発展するのは、意見を激しくぶつけ合っている国や地域です。双葉町が活発な議論を実践する場所になれば良いと思います。

官林 私は町の議員が若返って、若い視点で意見をぶつけ合ってくれたらと思いますね。そうしたことが実現できれば日本の自治体では珍しいケースなので、大きな注目も集まるはずです。

小林 若い世代が議論を交わす場所をつくれば、自然とそこから議員になる人も生まれてくるのではないかと思います。「月に一回、熱い議論を戦わせている町」になるとおもしろいと思います。

島野 月に一回、忖度なしの熱い議論をしている町になったら、確かに大きな注目を集めますよね。

トリシット 双葉町に関する情報が、どこかにきちんとまとめられていると良いと思います。双葉町の伝統的な料理や歴史について私たちが調べようと思っても、今はなかなか求めている情報を得ることができません。双葉町に関する情報を発信していくためにも、町に関する情報を整理しておくことは大切だと思います。

スワスティカ 町の関係人口を増やしていくことは重要ですが、人の交流は簡単に増やせるものではないと思います。一方で、ダルマ市を訪れた際に、ふるさとを長く離れている住民の方々がはるばる来ていて私は驚きました。そうした方々や双葉町を応援してくれる方々との交流をサポートするネットワークがもっと充実してくると良いと思います。

川上 そうですよね。双葉町と関われる仕組みがわかりやすくなっているといいですよね。ゆるやかにでも関われる仕組みが確立されると良いのかなと思います。僕たちが東京で情報発信をしていて感じるのは、双葉町と関わりたくても「どう関わって良いかわからない」と感じている人が多いということ。僕らは「双葉町を“かわいそうな町”から“楽しそうな町”へ」というコンセプトを持って活動していますが、「双葉町って楽しそう」と思った若者が気軽に関われる環境や仕組みがあるといいですよね。

宮内 私が同世代の人たちと話していて感じるのは、双葉町を「原発事故があった場所」としてネガティブにとらえている人はほとんどいないということです。私たちが「前向きに活動できる町」と認識してもらえるような情報をもっと発信していき、町としても若い世代が関わりやすい環境を整えてくれたら、良い循環が生まれてくるのではないかと思います。

官林 私の中学・高校時代の同級生のグループラインでも、積極的に情報を発信しているのは3〜4人です。でも、ダルマ市などに行くと、まったくグループラインで発信していない同級生と会ったりします。普段は言葉にしていなくても、双葉町への想いを持っている人が多いことを感じています。そうした人たちが、ゆるやかにでももっと双葉町と関われる環境を整えられるといいですよね。

2022年9月に開催された「双葉まるごと文化祭」。

若者にもっと双葉町に関わってもらうために必要なこととは

髙橋 どうすれば、もっと多くの若い世代が双葉町と関わっていきたいと思うようになると思いますか?

小林 継続的に関係性を構築できる仕組みづくりが大切だと思います。一回双葉町に来て終わりではなく、継続して関わってもらえる仕組みです。僕たちはその仕組みを3段階で考えていて、第1段階はまず双葉町を訪れてもらう。第2段階が、双葉町の復興や活性化に関わる簡単な仕事をお願いする。そして3段階目が、双葉町でなにかをやりたい意志が生まれたら、それを実現できるように後押ししてあげることです。現状では、私たちのPaletteCampに参加してくれた人の3割が、第2段階まで関わってくれています。

スワスティカ 新型コロナウイルスの影響で、今は海外の学生に双葉町に来てもらうことは難しいですが、海外の学生とつながる仕組みづくりも今後は重要だと思います。今はオンラインでもつながれる時代なので、海外とのつながりづくりにも取り組んでいくべきだと思います。

小林 海外から優秀な留学生がたくさん来ているのに、卒業後はみんな日本を離れてしまうことは、日本の課題のひとつです。でも、トリシットくんは双葉町のまちづくりに関わるために、大学院卒業後も日本に残ろうかと考えてくれています。

トリシット 双葉町のまちづくりが、アジア各国の自治体で参考にされるようなモデルケースになれば良いなと思っています。双葉町から、まちづくりの輸出みたいことができるとおもしろいですよね。

小林 それと、双葉町で現在進行しているプロジェクトや求めている人材についてリスト化されていると良いのかなと思います。一覧になっていれば、学生とかでも自分が手伝えそうなプロジェクトを簡単に見つけられますから。

宮内 確かにそうですね。双葉町に来るといつも、大学生や高校生の団体をいくつか見かけます。そうした大学生などが一覧にまとまったリストを見て、自分が関わっていけそうなプロジェクトを見つけられるというのは、とても良い仕組みですよね。

髙崎 僕はまちづくりに関しては素人なので素朴な疑問なのですが、双葉町が参考にできそうな海外のまちづくりの参考事例はありますか?

川上 僕らが参考にしているのは、アメリカのノースカロライナ州の事例ですね。地域住民の地元愛が薄れている中で観光客をどのように誘致するかを考えた事例なのですが、すごく簡単に言うとその町では、住民の憩いの場を残しつつ観光客を誘致しました。双葉町でも町民の憩いの場などを大切にしつつ、観光客などの外から来た人とうまく調和できる環境をつくっていくと良いのかなと思います。

小林 最近読んだ都市構造論の本に書かれていておもしろかったのが、「アメリカの街では人々はどこで立ち話をしているのか?」という研究についてです。研究の結果わかったのは、みんなが立ち話をしているのはお店がある道の街角だそうです。まちづくりと言うと日本では大きなショッピングモールをつくったりするのが主流ですが、街角をつくるというような視点も大切なのではないかと思っています。

髙崎 なるほど。双葉町はゼロスタートな分、どのような街にでも発展する可能性があります。そこに価値があると思っていますし、その環境をうまく活かしていかなくてはなりませよね。

五木田 みなさんの話を聞いて、普段考えている自分のアイデアがいかにつまらないかを実感しました(笑)。URは民間と行政の中間にいる組織なので、みなさんのアイデアが上手く活かされるように、行政に上手く働きかけていくような役割を私たちが担えたらと思いました。

官林 双葉町出身なわけでもない若いみなさんが、こうして情熱を持って双葉町で活動しているのを見るだけで私としては胸が熱くなります。今は双葉町のことを知らない若者たちに情報を届けることが第一歩だと思いますし、そして双葉町と関わりを持つようになった人の中から、双葉町で家族を持つような人が出てくる流れをつくっていければいいなと思います。

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