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VOICE for FUTABA Season3 – Vol.1《双葉町結ぶ会編》後編「双葉町の魅力とは?/今後の双葉町に望むこと」

「双葉町結ぶ会」の共同代表・副代表にお集まりいただいた第1回目のトークセッション。後編では、双葉町の魅力や双葉町の今後についてお話しいただきました。

【参加メンバー】
・谷津田 陽一(双葉町結ぶ会 共同代表)
双葉町出身。双葉町内居住。

・大島 遊亀慶(双葉町結ぶ会 共同代表)
福島市出身。双葉町えきにし住宅居住。

・島 美紀(双葉町結ぶ会 副代表)
埼玉県出身。双葉町えきにし住宅居住。

・髙崎 丈(KIBITAKI代表)
双葉町出身。元「JOE’S MAN 2号・キッチンたかさき」のオーナーで、2022年に「髙崎のおかん」をオープン。日本酒のお燗を広める活動を展開中。株式会社タカサキ喜画を双葉町に設立、その中でKIBITAKI プロジェクトを立ち上げて双葉町の再出発におけるさまざまな活動を企画・プロデュースしている。

・町井 智彦 ・清水 信宏
UR都市機構 東北震災復興支援本部 福島復興支援部 地域再生課
原子力被災地での持続的なまちづくりに向けて、関係人口の拡大や誘導による地域再生に取り組む。町内外のさまざまな人が関われるコトづくりを目指し、多様な主体との協働・連携を進めている。

・小林 雅幸
株式会社Rurio代表取締役
東北大学工学部を3月に卒業、双葉町での活動により注力するべく任意団体を法人化し、代表を務める。これまでに双葉町でバイリンガルツアー「PaletteCamp」やバイリンガル雑誌「iro」を発案。双葉町から世界に発信力を持つメディアブランドを作るべく、浜通りを駆け巡る。

・島野 賢哉
株式会社サムライジンガ 代表取締役/プロデューサー
ブラジル、台湾における芸術文化を中心としたプロジェクトに携わる。クリエイティブサウンドスペース『ZIRIGUIDUM(ジリギドゥン)』創設者。髙崎とともにKIBITAKI プロジェクトに参画し、さまざまな事業推進に携わっている。

双葉町の魅力とは?

髙崎 双葉町に住んでいるみなさんが感じる町の魅力はなんでしょうか?

島 インフラや物など、ないものは確かにたくさんあります。しかし、その反面、心が温かくなる町だと感じています。人と人との温かい結びつきがあります。そもそもこの地域全体で、葛尾村の人が楢葉町の人を手伝ったり、浪江町の人が富岡町の人を手伝ったりと、車で1時間かかるような距離でも強い結びつきがあります。そうした地域の特性が狭いエリアに凝縮されているのが、現在のえきにし住宅や双葉町だと感じています。

大島 双葉町は、震災前の住民と新しく移住してきた住民の垣根をなくしてコミュニティをつくろうとしていますよね。私はそこに大きな魅力を感じています。私は首都圏に住んでいたころにマンションとか戸建てとかいろんな家に住みましたが、地域の自治会に参加すると、会長が全員に質問攻めにされていたりする…。そのような相互信頼のない関係性では地域コミュニティとは言えないですよね。だから、双葉町では、温かくつながれる地域コミュニティをみんなでつくっていきたいと思っています。

谷津田 コミュニティをみんなで新しくつくっていけることも、双葉町の魅力かもしれませんせよね。「双葉町結ぶ会」も、元町民と移住者の比率が同じくらいですし、男女の比率もほとんど半々です。偏りがないので、みんなが自分たちのコミュニティという意識を持ちやすいと思います。私が共同代表を務めていますが、みんなが「代表にすべて責任を押しつけるつもりはない」と言ってくれています。みんなが代表のような意識を持ってコミュニティを運営していることが、「双葉町結ぶ会」の良さだと思います。

島 私は「双葉時間」という言葉をよく使うのですが、双葉町に独特な時間が流れているような感じがするんですよね。

小林 そうですよね。他の町とは時間の流れ方の感覚が大きく異なりますよね。

谷津田 私たちが述べているような双葉町の魅力は、新たな町をつくっていく過程にあるからこその副産物なのかもしれません。人数が少ない新しいコミュニティだからこそ築ける関係性があると思いました。

島 私は「なんで双葉町に住んでるの?」と質問されることに、ちょっと違和感を感じています。起業するとか、町を復興させるためとか、壮大な理由がないと住んではいけないみたいなイメージを持っている人が多い気がします。でも、なんとなく居心地が良いというだけでも住んでいいはずです。“移住”ではなく、“引っ越し”の感覚で。私だって、双葉町に住んでどこかにお勤めする“普通のおばちゃん”になりたいだけですから。

島野 確かに、“引っ越し”の感覚で多くの方が移り住んでくれるようになることが理想ですよね。

谷津田 そういう人たちが増えてくれば、時間はかかるかもしれないけど必ず復興できます。二度と元に戻らないなんてことは絶対にないですよ。復興までの時間をできるだけ短くしたいから、みんなが頑張っているわけですし。

双葉町えきにし住宅。住心地が良いと住民から高く評価されています。

今後の双葉町に望むこと

髙崎 双葉町には、これからどのような町になってほしいと考えていますか?

大島 外から来てくれる人を、しっかり歓迎できる町になってほしいですね。ささいなことですが、今は双葉駅にトイレがひとつしかありませんよね。駅の外に、古い小さなトイレがあるだけです。これでは、双葉町に来てくれた人を歓迎しているとは言えないと思います。

島 駅はすごく立派なのに、トイレなどの設備がまだ不十分ですよね。

町井 さまざまな工事が進んでいますが、まだインフラ面で整っていない部分も多いですね。

大島 トイレの問題だけでなく、みんなが集まれる場所もないですよね。時間を共有する場所がない。先日も子連れの夫婦がこの集会所にやってきました。営業中のお店かなにかと思ったみたいで。営利目的の施設でもいいので、外から来た方が長い時間を過ごせる場所が駅前に必要だと思います。

島 駅から離れた場所の方が優先的に便利になっている気がしますね。開発が車移動での目線になっているというか。最近はツアーよりも個人旅行で双葉町に来る人が増えていると思うので、電車で来た方のことをもっと考えてあげないといけないですね。

島野 住環境にいろいろ不便なこともまだ多いなかで、みなさんは外から双葉町に来る方々のことを一番に考えているんですね。

谷津田 双葉町に遊びに来る人のなかには移住を考えている人かもしれないですし、大島さんが言ったように町としての歓迎する姿勢は重要ですよね。町が復興していくには、町に住む人や遊びに来てくれる人を増やす必要があるはずです。町にいる人が増えれば、自然と商売も成り立ちますし、いろいろな仕事が生まれてきます。

大島 もちろん、行政としてもさまざまなことを考えているでしょうし、具体的に計画も進んでいると思います。ただ、スピード感がもっと必要だと思うんですよね。双葉町の復興は前例のない特殊なケースですから、一般的な行政のやり方ではスピード感が遅すぎます。いろいろな施策が慎重になり過ぎているというか。その分スピード感が失われているのではないでしょうか。

島 別に完成形のものを最初からつくらなくてもいいんですよね。ゴールはずっと先にあるわけだから。

谷津田 一度失われた町を復興させるのは、誰もが経験のないこと。だから、失敗を恐れずにいろいろやってみるべきなのでしょうね。私は今72歳なので、自分の残りの寿命を考えると、今の復興のスピードでは遅すぎるんです。もっと思い切ったことをやってほしいですね。

髙崎 心の豊かさを感じられる町という魅力がある一方で、そうした復興のスピード感などにみなさんは課題を感じているわけですね。

島 そうですね。それと、私たちはまだ生活環境が十分に整っていない双葉町の状況を理解した上で移住してきたので、そのことに不満はありません。しかし、双葉町に拠点を設けた企業の従業員の若い子などは、生活面での満足感はまだ得られないようですね。そうした若い世代の単身者が楽しいと感じられる環境づくりも必要かもしれません。

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