プラスマイナス

 岩橋さんの度重なるXへの投稿が、とうとう所属事務所退社へとつながってしまった訳ですけれど。
 松本人志さんの脅迫的性加害疑惑と彼に女性を“アテンド”したとされる後輩芸人達の弁明、それに触発された芸能界のパワハラ疑惑の数々があって、関係者は一様に否定している訳ですが、それが“トリガー”となって岩橋さんが暴発した。
 しかし私は岩橋さんの行動をホンの一瞬は驚きましたが意外とは思いませんでね。
 彼は子供の頃から衝動を抑える事が出来ない体質、というか一種の病を抱えていたのを知っているからなんです。

 かつて『やりすぎコージー』というテレビ番組があってDVD化もされていますが、その中で“21世紀芸人”という単発企画がありました。
 “21世紀”にブレイクし、第一線で活躍するであろう芸人を紹介するという企画で……つまり放送されたのは1990年代だったと思いますが……そこで岩橋さん兼光さんのコンビ・プラスマイナスが登場したんであります。
 その時岩橋さんの子供時代のとあるエピソードが語られたんでありますがね。
 小学校高学年か中学生だった頃、彼は家族全員で夕飯を食べている時、衝動のままに突如女性器名称を何度も叫んだのです。
 少なくとも当時の彼に“衝動を抑える”とか“場の雰囲気を壊してはいけない”という観念は無く、心配した親御さんは病院へ連れて行った、といいます。

 病院での診察や治療が実を結ばなかったのは番組内でのネタ披露で分かりました。
 当時思い付くまま暴走気味にボケまくる兼光さんに、本来はツッコミとしてネタの筋書き通りに軌道修正を図らねばならない岩橋さんはキレながらツッコんで最後には「もうアカン!」と自分の役割を放棄する始末。
 そもそも登場してすぐの挨拶が、教科書通りですと、
 「はいどうもプラスマイナスです。よろしくお願いしま~す」
だと思うんですが、岩橋さんは満面の笑みをたたえながら調子ッ外れの高音で、
 「プラスマイナスですよ」
だけだったのです。
 兼光さんの破天荒すら逸脱した衝撃的なボケもあって、プラスマイナスはその日一番の大爆笑を獲得しました。
 でも私は、
 「凄い面白いけど今のままだと売れないだろうな」
と思いました。
 お笑い好きなコアなファンは付くでしょうが、ここまで暴走しっ放しで漫才の体を成していないと一般層には理解不能でウケない筈です。
 あれから年月を重ねた今では、兼光さんが自分のやりたいボケと観客の空気との折り合いを見事に付け、ネタはニッチ過ぎるきらいはあるものの見事なモノマネ芸まで身に付けています。

 今回の岩橋さんの吉本興業退社によりプラスマイナスは自動的に解散となるようですが、他人事ながら心配なのは岩橋さんが自宅を建てたばかり、という事です。
 しかも時を同じくして離婚もされている。
 まして今回の騒動で岩橋さんのタレントイメージはかなりダウンしたと謂わざるを得ませんし、縁の深い吉本芸人さん達もこれだけ派手に会社と喧嘩別れしたとあっては番組にしろイベントにしろ呼びにくくなってしまう。テレビ局側もこうした“お騒がせ”“爆弾発言常習犯”なイメージでは怖くて起用出来ないでしょうし。
 そう考えると今回の岩橋さんの行動は『自分で自分の首を絞める』振る舞いだと思うんですが……

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