みんなの幸せや喜びを響かせて。
ここのねには、いつもニコニコ微笑んでいる女の子が居る。小学6年生のUちゃんだ。Uちゃんは、先日初めてのここのねの生徒になってくれたSくんのお姉ちゃん。
彼女と出会ったのは、去年の9月だった。母親のじゅんさんと一緒にここのねの青空教室に来てくれた。
その日は、弟のSくんとじゅんさんが途中で家に帰り、スタッフと一緒に卓球をしたり、フラフープをしたりして遊び、笑顔で過ごした。
長い冬と春が明けて今年の6月になった。Sくんがここのねに通い出しても、なかなか参加しようとしなかったUちゃん。じゅんさんも彼女のタイミングに任せようと、焦らず見守っていた。
家でここのねの話をするSくんの様子を見ていたのか、ある日突然「ここのねに行ってみる」と決めて自ら来てくれた。
初めてここのねに来てくれたUちゃんは、少し緊張したような表情だった。スタッフのももちゃんがけん玉をマイクにして場所説明をしたり、朝のミーティングに参加しないSくんとUちゃんに別室で寄り添いながら、「今日どんなことしたい?」と二人の意思をゆっくりと聞いていった。
活動に参加し始めて、何回かの朝のミーティングはパスしたけれど、徐々に後ろの方で参加したり、最近ではみんなの輪の中に入って話し合いに参加していることが多くなってきた。
そんな彼女の一番近くで寄り添っているのは、19歳のMちゃんだった。自分の一眼レフをUちゃんに貸して一緒に写真を撮ってみたり、ぬいぐるみを持ってきてぬいぐるみを使ってUちゃんと会話をしてみたり。
その時に初めて、私たちはUちゃんの話す声を聞いた。
いつもニコニコ優しい笑顔でみんなを見て、何か聞かれたら、首を傾げたり、うなずいたりして自分の意思を示すUちゃん。Mちゃんとの信頼関係を深め、心を許し、自然とUちゃんの言葉が出るようになっていた。Mちゃんの気持ちが伝わったんだなぁと感じた。
後から聞いた話によると、Mちゃんはじゅんさんに
「Uちゃんと仲良くなりたいと思って話しかけるんですけど、モジモジして困っているようにも見えて…話しかけても大丈夫ですか?」
と個別に聞いていたそう。じゅんさんは、そのMちゃんの気持ちが嬉しくて涙が出そうになったと話していた。
Mちゃんのおかげで少しずつ心を開いてくれるようになったUちゃん。ある日、「ウボンゴ」というボードゲームをスタッフのこうちゃんももちゃんと楽しくしていたとき。彼女はこのゲームがすごく得意であっという間に一人勝ち♫「はやーい!!」「すごい!Uちゃん強すぎー!!」みんなに褒められ、大きな声で笑い、嬉しそうなUちゃんだった。
その日のじゅんさんのinstagramには、「娘が大声を出して笑っていたんです!!」と嬉しい報告が書かれていた。家以外で大声で笑ったのは、久しぶりだったそう。それを聞いて私たちもとても嬉しくなった。
ここのねに通い出して一か月。と言っても月曜日と火曜日だけなので、そんなに数は多くない。最近では、話しかけると少しずつ自分の言葉で返してくれるようになったUちゃん。たった一ヶ月だけど、彼女にとっても、彼女の周りにいる私たちにとっても、この一ヶ月は忘れられない一か月になった。
先日、体験期間が終わり、じゅんさんとUちゃんと三者面談をした。
「ここのねにこれからも通いたいですか?」私の質問に「うん」と笑顔で大きく頷いてくれたUちゃん。胸がいっぱいになった瞬間だった。
「Uちゃんは、優しくて人を見過ぎて読みすぎてしんどいだろうから、みんなの喜びや幸せをたくさん心に響かせてたら、ほどけて動きはじめそうだね。」
小さい頃からUちゃんを知っている方がじゅんさんにくれたメッセージを教えてもらったとき、ここのねに来てくれて良かったとじんわり思った。
私が今度発表するために作った資料のデータが消えたかもしれないと、パソコンの前でパニックになってたとき。Uちゃんは何を言うわけでもなかったけれど、私の横にずっといてくれた。「消えてたらめっちゃショックや…」と落ち込む私の横にいてくれた。それだけですごく救われた。データが見つかった後、すぐにUちゃんにありがとうを伝えた。
優しさは言葉だけじゃないんだなぁと感じた。そして、その優しさは必ず人に伝わる。
これからここで、みんなの幸せや喜びをUちゃんの心にたくさんたくさん響かせていきたい。そして、これからもっともっと色んなUちゃんを一緒に見つけていけたらいいな。
「これから末永くよろしくね」
三人は笑顔で面談を終えた。
こうやって
子どもたちの変化を間近で見させてもらい、一つひとつに感動する日々は本当に尊い。
どんなに大変でも頑張ろうと思える。
場所づくりは正直大変だけど、その先にある「みんなの幸せや喜び」を信じて頑張ろう。
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