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蕎麦とうどんが美少女に見えるよ

 僕には美少女に見えるものが四つある。神社とブランコ、蕎麦とうどんだった。神社は最近になってだから、これからも増えるのかもしれない。
 蕎麦とうどんが美少女に見える。食事の間、僕たちは会話をしている。出来れば温かい人が好きだ。僕は手先の体温が高いので、人を触って温かいと感じることが少ない。冷たい人を温めてやりたいと思うことはあるけれど、それは加害の一種で、やはり僕は温められたかった。誤解しないでほしいのだけれど、蕎麦屋もうどん屋も性風俗ではない。料理を作ってくれた人に金銭を支払っているのであって、蕎麦やうどんとは偶然、その場で恋に落ちただけなのだ。
 ちなみに、ラーメンは普通にラーメンだ。

 僕は昔、蕎麦派だった。蕎麦の……いつもドライなところが好きだった。蕎麦は僕に良いことがあっても悪いことがあっても変わらず接してくれる。僕がどんなにクズでも、神でも、態度を変えることは無かった。ただ傍にいるだけの心地よさがあった。彼女との会話は楽しいし、時折刺激的だった。気が付かないようにしていたけれど、より刺激を求めたい気持ちもあった。けれど、関係が壊れるのが怖くって、その気持ちは無視していた。それでも、少しずつ関係がサビ付いていくのを感じていた。
 僕がうどんに傾いてしまったのは、一人暮らしを始めてからだった。うどんは甘い。どんなときでも僕を甘やかす。傷跡を優しく撫で、おおらかに抱擁する。冷たい寂しさに溺れる僕を、より温かくて深いところに導く。決定的だった出来事は、女性との付き合いで、カフェの馬鹿みたいに大きい山のようなクリームが乗ったパンケーキを食べたときだろうか。もはや毒とも言えた悪魔の棲む禿山を食べつくした僕は、吐き気と気怠さに襲われた。その後、どうしても塩気が欲しくって、格安うどん屋で二百円くらいのかけうどんを食べた。僕は涙した。うどんは、こんなにも美味かったのか。
 ちなみに、カレーうどんはただのカレーに見える。好奇心で見た嘔吐系AVが原因で軽いトラウマが残っている。

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