zorozoroベスト作品集 その1
僕の運営している小説投稿サイト「zorozoro - 文芸寄港」に投稿された本数が100作品を超えました。あざす! 全ての投稿者と読者、そして配布されていたスクリプトに感謝だ。
このサイトは100作品毎に「作品集」という括り方をされるので、結構おめでたいかもしれない。
どうしてこのサイトを作ったかとか長話も出来るっちゃ出来るんですが、まあそんなことよりは祭ってやろうという気概で今回の記事です。
今回は、サイトに投稿された中で、特に優秀だった作品を紹介していきます。
毎週金曜日Discordにて、その週に投稿された小説を全部読む「読書会」を開催しています。簡易的な合評と、読者の増加が目的です。
その際に、読んだ中で一番良かった「週ベスト」の作品を決めています。ベストを目指すことがモチベになればな~って感じです。
折角のキリ番ということで、これまで選定されてきたベスト作品をピックアップして紹介してみます。
現状、ライトな読者層の獲得に困っている部分があります。僕的には、特別おもしろい作品だけにポイントを入れるような人たちがいた方が良いと思っている。
だから、もし読んでみて、良いなと思ったらでいいから、ポイントや感想を付けてみて欲しいです。名前を入力しなくても匿名でコメントできるよ!
1.ブラックジョーク
読書会によって一週間目のベスト作品として選ばれた作品。
このレベルの作品が一週目に出てくるとは思っていませんでした。サイト稼働二日目にして最高クラスの一作。何者なんですかね田中愛子さん。
若々しくも死にかけのようなエネルギー。捻くれていながら感情自体はありふれたもので共感性がある。学生向けの投稿サイトであるzorozoroを代表するような作品と言えるかもしれない。正直ちょっとした未熟さはありますが、テーマを一貫して書いているところに玄人っぽさも感じる。滅茶苦茶にかき回しているけど冷めた目で見ると至極真っ当な展開。東京には何も無いんだー!!!
ここまで自己表現に溢れた作品で面白く出来るってのは、なんというか、嫉妬モノです。
2.最期を超える春
二週目のベストに選定された作品です。
二週目は所謂「ゼミ選抜課題」が大量に投稿され、読書会では28作品も読みました。そんな地獄を勝ち抜いたこちらの作品。確か課題が
・「君に好かれてしまった」という一文を使用する
・「君」が指すものは人間以外とする。
んで1200字以内って感じだったかなと思います。非常に難しい課題でした。その点、この作品は課題に対しての向き合い方がとても上手でした。その咀嚼への感心と完成度に対する拍手! 面白かったです。タイトルはちょっとうざいっす。
3.カバディ、カバディ、カバディ!!!
三週目のベストに選ばれた作品です。
カバディ。
カバディ!
カバディ?
4.溶けるなアイスクリーム
四週目のベスト。テーマの徹底、読者の意識が良く行われていた。「読書に耐える」というのは小説家を目指す上で非常に大切だと思います。言わば易しい一作。
正直技術的な細かいことは言えたりするんですけど、それ以上に主人公の心情描写と優しいテンポが読者に寄り添っていたので、読んでいて苦は無く面白い作品でした。あとタイトルが良いですね。
5.推しの推しを推しで推す推しを推して推しの推しが
五週目の総合ベスト。凄まじい完成度と後ろ暗い共感性。作品集でも最高クラスの作品。
恋に恋とまで言わずとも、好意的に近寄ったのに殴られてしまった。といった哀れでさもしい青春の一幕。
場面転換のテンポからは漫画や映画のような切り替わり方を感じます。未熟だと読者を置いてきぼりにしてしまうのですが、そこを上手くやれているのが凄い。技量によって感情をこれでもかと詰め込んでいる、故にとても面白い。
最早独自解釈ですが、この話は本物の感情は一体どれなんだと迷う主人公が、全ての感情が少しずつ本物であることに気が付けない様を書いていると思いました。割り切れない主人公は歪で醜い。それ故に美しいものを好きになってしまったが、美しいが故に自らと相容れない。ジレンマが心苦しい!
話は変わりますが、普通に好きになっちゃっただけで女オタオタ呼ばわりされる男って哀れで可愛い。交通事故にあった鹿みたいに迷惑で可愛い。
6.10 千 田 MC
六、七週目の総合ベスト。(六週目は何故か作品数がめちゃ少なかった)ライトミステリーとでも言うべきだろうか?
よくわからないタイトルを丁寧に回収していく話。少しずつ行われる答え合わせが楽しい。
この部分実話なんだろうなといったあるあるネタや、一人称でつらつらと語られる形が中々心地いい。読んでいて面白く、その形を維持しきったのも良かった。
7.二人、私だけ
七週目のベスト。ああ、僕のやつっす……
自分の作品を紹介するってのもアレなんで、後書き的な書き散らしでもしようかしら。
幸いと言うか、なかなか好評を頂いた小説でして。僕もそれなりに面白いものを書けたなとは思ったんですが、同時に課題点を多く見出すことになった作品でもありました。成長成長!
課題点の例を出すとしたら、一貫したアイテムの登場をサボったところですかね。最初から最後までコーヒーを軸に書いていれば、もっと優れたタイトルに出来たりしたのにな、みたいな。舞台が喫茶店であることをもっと活かせたはず。
まあ、良かったら読んでいただけると……
8.キタゾウ・ローリング
八週目のベスト。滅茶苦茶でありながら起承転結に沿った気持ちの良い構成。こちらも最高クラス。(まあ週ベストですし)
とても面白かったです。動物が当然のように会話する世界観は寛容なようで、どこか自然界らしい無常さを感じさせます。
この作品は人間すらも動物の種、ホモサピエンスと捉えているような感覚があります。殊更に肉を食わせたり、交尾をさせたり……そういった描写やラジオ体操をする動物たちとのギャップが、本来社交的な捉え方をされる人間の本能的シルエットの特徴を映し出している。
主人公のアザラシというチョイスも良くて、アザラシ特有の、なんとも被害者ヅラした感じが絶妙な読み味を作っている。アザラシに我儘を言われたら通すしかない、といった可笑しさがこの作品の魅力でもある。
9.スモール・ジャイアンツ
十週目のベスト。万人受けからは程遠い置物のような小説。
行われているのは意味不明とも取れる事態で、それが勝手に進んでいく。
読後感は独特で、面白いと感じるか、或いは、ただ置物のように感じるかもしれない。
昔の人が月の光に魔力が含まれていると感じたように、何かを感じる作品だった。
Ex.ベストを逃したが素晴らしい作品!(独断と偏見による主観)
・ロマンティックシロエビまで
https://bungei-zorozoro.com/1/1712588820
終始して優しくちょっぴり切なさを感じる話。
一週目のベストかと思われた(なんなら本人も格の違いを見せてやろうくらいの気概だったと思われる)非常に素敵な作品でしたが、突然現れたブラックジョークに轢き殺されたなんだかなあの作品。
・ELB
https://bungei-zorozoro.com/1/1713358731
第二週のゼミ選抜戦争における優秀作品。
とても癖が出ていて素晴らしい作品でした。実際、ベストを決める時の投票ではかなりの票が入っていた。
この作品の作者は完成度に定評があるのですが、力を入れた作品を投稿したときは何故か「ウケる」作品に轢き殺される傾向にある無冠の帝王。
・天翔けるヌードル
https://bungei-zorozoro.com/1/1713404634
こちらもゼミ選抜戦争、飯の話を書くと覚醒すると噂の作者。
一文一文が少しずつ面白く、それこそ麵を啜るように読める。おすすめ。
・終末世界とダーウィンの花
https://bungei-zorozoro.com/1/1713547250
今作品集で最長の作品。ポストアポカリプスな百合モノ。
少し長いですが読みやすいのでおすすめです。
・部分分解症候群
https://bungei-zorozoro.com/1/1714717520
ELBと同じ作者。完成度が高く良い小説なのですが突如現れたアイスクリームに轢き殺された。
やはりと言うか、癖を感じられる。おすすめ。
・SEXするか力士を倒さないと出られない部屋
https://bungei-zorozoro.com/1/1715368151
まあ触れないのも違うかなって。
マジで腫れ物すぎる、これを書いた人は名乗り出るように。
・紅玉
https://bungei-zorozoro.com/1/1716009228
ELBと同じ作者、なんなら作品集でも最高クラスの出来なのに茹で卵が飛んできて死んだ。是非とも読んでほしい。
・鍋蓋の水滴と、おちょこの一口も
https://bungei-zorozoro.com/1/1717162110
文学的に美しい作品。モチーフの使い方など参考にしたい。
おすすめ。
・東京メトロノーム
https://bungei-zorozoro.com/1/1717651209
いっそ恥ずかしいくらいに恋へと向き合った作品で、だからこそ心が動かされる。芸術とはセンセーショナルでなければ! 長め。
・シーソー
https://bungei-zorozoro.com/1/1717768016
特に前半の文章の面白さは目を見張る。十週目のベストはかなり迷った。
あとがき
改めて、勝手に建てたサイトにこれだけ作品が集まったことを嬉しく思います。いぇい。
皆の読むモチベ、書くモチベになってくれたら嬉しいです!
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