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もうちょっとしたら優しくなるから待ってて

 高校の同級生……僕含めて八人で、北海道の雪中に建てられたログハウスに宿泊していた。築四十年ほどの、まあまあ長い歴史で言えば、近頃は使われていないと言える場所だった。三月とはいえ、氷点下を容易に下回る室内を、大型のストーブが三十分ほどで温めてしまった。
 別に目的があるわけでもなく、TRPGをして、格闘ゲームでもしていたら腹が減り、コンビニに行って……というだけの会だった。もしくは、泥酔などを心置きなく、やりたかっただけかもしれないが。

 二日目は体調不良で一人が帰って行った。よほど具合が悪かったらしく、即病院へ行っていた。インフルエンザB型だった、そりゃ、具合が悪いわけだ。同じ屋根の下で寝ていた僕たちの死が確定したようなものだった。解散にするかという話も出たが、今更だということで、外食を控えることで続行することにした。

 三日目にもなると、ストーブの熱で、棚などで眠っていたカメムシが顔を出し始めた。ここは俺の住居だと言わんばかりに食卓の上をブーンと力強く飛翔する。虫が苦手なやつが騒いだりするのを尻目に、得意なやつが「何を怖がっているのさ、逃がしてあげようよ」とか慈愛に満ちた声で言って、ティッシュでカメムシを優しく包んで、窓を開けた。びゅおーっと余りにも厳しい冬の夜が部屋の中に吹き込んだ。間違いなく全員が、カメムシの悲壮な運命を察しただろうが、「あいつは強いから、大丈夫」という説が自信の元に迎えられたので、カメムシは凍死した。

 四日目は大体麻雀をしていた。ルールを知らないやつもいたので、覚えながらやることになった。🀀🀁🀂🀃でのカンが一番の名シーンだった。関節痛を訴え、「俺インフルエンザかもしれない……」と言っていたW君の腰痛は湿布を貼ることで完治した。

 五日目にもなると、カメムシにも慣れてきたもので、干したタオルにカメムシが付いていても誰も何も言わなくなった。カメムシ側も人間に慣れたのか、マサラタウンのピカチュウさながら僕の肩の上に乗ってきたりした(そのカメムシは凍死した)。

 一応、海の見える場所だったのだけれど、写真の一つも撮らなかった。記事画像も海っぽいツラしてるけど、小学校の同級生が沈んだスーパー人間死に死に湖である。

 いつ死ぬかもわからんのだから、同級生を大事にするのは大切だなと思う。出来るだけ優しく接して生きたい。ただ問題があるとすれば、同級生の中に数人、将来犯罪者になるだろう奴がいるのだが、今のうちに窓の外に逃がした方が良いだろうか。やさしさ的には……?

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