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天井に猫がいる

 写真は学祭の打ち上げ。
 じゃなくって、高校の友人と打ち上げた。
 単に周期が悪かったのだった。{任意の性別}の日だった。
 偶然、下に振れた時に学祭があった。僕は三日間、泥のようだった。
 起き抜けに……やつらが忘れていった腕時計を返すため。毒を飲んで、毒をのんで、水ものんで……僕はお腹がいっぱいになってしまった。
 お腹がいっぱいで、毒が足りない。おれは死ねない。創作には理性を欠くのが必要だそうだ、人間は理性が減ると閃いたり気が付いたりする。散歩をしたり、酒を飲んだりといった行為が芸術に必要なのは、それだ。
 僕を殺すのには到底足りない毒でも、理性が減ることはある。

 僕は、躁鬱を持っている。ありがたいことだった、豊かに産んでもらったのに、僕は努力が出来なかったから。多少の振れ幅が無いと、本物には近づけない。
 僕の躁鬱には上下のブレと、横のブレ、奥行きのブレ……その他少々の要素がある。主には、元気の有無、善意の有無、能力の有無。
 元気が無い日は外に出ない。
 善意が無い日は発信をしない。
 能力が無い日は呼吸をしない。
 無い無い無い無い。
 ただ、ここが無いことで、少しでも他が上がっていることを考えながら……壁の方を向いて寝る。だって天井を見ても

天井に猫がいる

 夢は裏側、人生の一部だ。
 他人の書いた小説を貶すとき、ときおり「夢のような話」と表現する。面白い夢を見たことがあるかい……夢とはリアリティと共にやってくる、どんなに馬鹿げた状況でも、喜びが、緊張が、恐怖が、鮮明に首を包む。
 ばばっと布団から飛び起きて、「なんて面白い夢を見てしまったんだ」と……その内容を、忘れないように、忘れながら書き留める。
 そのつまらなさに、失望のため息をつくのだ。

 それで……それでも、人生の一部じゃないか。夢想だろうと経験ではないか。たかが夢だなんて笑うなら、それこそ夢を差別している。
 いつだったか、五年にも亘る長い長い夢を見て、その殆どは忘れてしまったけれど、胸に抱いた恋心を覚えている。彼女……名前も見た目も知らないけれど、何にもおぼえていないけれど、騙されていたのかもしれないけれど、心で本気で愛したことがあって……僕はそれを、忘却によって殺した。
 ぼくは五年、歳をくった

 哲学の話をしてほしくない。他人の悩みも聞きたくない。
 いつもそうだ、その道を歩くやつなら誰でも一歩目でぶち当たるような壁を……いっちょ前に「悩み」だとか、ゴミ野郎が、その臭い口で貶してるんじゃない、血を吐いたことも無いのに、くたばれ、苦しめ。お前の想像以上にお前はつまらない! 周りをみろ! お前に似ているやつばかりだ、わかるか? お前もゴミってことだよ! プロが丸めた紙くずに劣るゴミ! 若い奴らは小学校の頃からやっていたらしい、それを、毒を飲んで、死ぬことも許されたお前が出来ていないんだ。ないんだよお前には努力も才能も。無い、無い、ない!
 ……なくたっていい。努力も才能も、関係ないから。きっと全ては運命で、それでも……あんまりもってないけれど、少しずつ、努力するんだから。血反吐を吐くなんて意味があるかもわからない、なきわめいたり、ころげまわったりするのに意味があるのかも、ぼくたちには愚行権がある。

 哲学というのは一本道だ。みんなはそれを知らないから、僕はこんなものだとか、どういう人だって、アイデンティティを哲学に見出そうとする。
 お前が歩いているのは一本道だ、信じているやつも疑ったことがあるし、信じていないやつも信じていたことがある。片方だけなら歩いていない。「そんなものはどうだっていい」と言い切れるようになるまでは、どこで腰を落ち着けるかの違いに過ぎない。だいたい、自慰のときにも哲学のことを考えているのか? まぁ、考えたら、ちょっとは成長できるかも。

 芸術において哲学とは出汁のような役割を果たす。塩と湯だけでは美味しくならない。人生を使って煮詰めて詰めて詰めて詰めて……それが垣間見えたりして、初めて涙を流す人がいる。ただそれは、いろんな能力のひとが、哲学を完遂した時に、違った色の花を開くという話で……要するに、根をのばすまで、土壌にどんな栄養があるかは分からないし、栄養を吸わないと、どんな色の花が咲くかもわからない。つぼみすらつけていないなら特に。

 かわいく例えると、ナイフを入れた時にぎっしりと果物がつまっている。
 臓物のように。
 死体は朽ちるが、心臓のある芸術は、どくどくと、思いを伝え続ける。
 そんなものだったかもしれない。
 まぁ、別に、死んでもいいじゃない。
 例えば石油というのは生物の死骸が積もって出来ている。
 生物の死骸がプラスチックになって……お前でもペットボトルになれるかもしれない。
 それで、きっと、王子様とキスをするの。

(珍しく笑っている)

 猫が話しかけてくる。
 僕は壁を見て寝る。たぶん明日も話しかけてくれる。

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