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精神衛生

 先に書くけど、今回は本当にオチとか無いし、面白くもない、要領も得ていない、配慮もない。逃げかもだけど。そういった余裕のあるときの文章じゃないし、こんなものに時間を使ってもらうのは申し訳ないし、本当は僕は、読んで欲しくないと思っているのかもしれない。それか、それでも、頼まれたいってことか。
 現在の僕の精神衛生といえば、値にして史上最低を更新している。原因は幾つかある。金が無いこと、夜寝られなくて眠いのに授業に出なければいけないこと、真剣に小説を書くため対戦ゲームを控えていること、小説の試行錯誤と、大好きな祖父が脳梗塞で倒れ入院したこと、家族へ恩を返せていない焦り、僕のせいで家族が苦しんでいないか、金銭的負担は計り知れないし、それに祖父や祖母が亡くなるまでに僕は結果をみせることができるのかってことも、僕の大好きなものに対して、一生後悔を残すんじゃないかってこと。そして、僕の”悪い癖”が、また顔を出しつつあること。
 もし精神に限界というものがあるのなら、それ以上は肉体への突入を意味する。今の僕はそういった状況で、わざわざ書き散らすのは弱音だ。Twitterなんかには出来るだけネガティブなことや不要なことは書かないようにしている。それが文芸学科生としての僕なりの矜持だった。だいたいそんなの見ても皆うれしくないだろうし、僕だって格好つけたいから。
 こんなところを見に来る人に配慮なんてできないけど、やっぱり怖さはある。大衆の中でワッと叫んだとき、一番怖いのは、一度あつまった目線が離れる瞬間だろう。そういった感覚。
 僕には無力で、魅力がない。
 蛙化現象という言葉がある。好きだった相手に好意を持たれた途端、嫌悪感を持ってしまう現象のことだ。僕はこれに近しいものをばらまいている。そも蛙化現象の原因なんかは論文になっていないのだけれど、僕なりに考えると、トロフィー的恋愛をしていた人間が手にした瞬間に飽きるような感じじゃないかと想像する。僕の持っているものはそういったものではない。
 話を挟むけど、僕は変人だ。きちがいとすら言われても仕方がない。ただ生まれて二十年、取り繕うのが本当に本当に上手くなった。なので、僕の事をどう思うかといった話に対して、別に普通じゃないかと言われると、大層面白く感じてしまう。みんな騙されている。お前が話しているのは俺じゃない。私の頭の中にいるまぼろし。
 僕の中には巣がある。まぼろしの巣。姿勢を律するまぼろし、逆張りするまぼろし、行動を判断して裁くまぼろし、眠気に檄を飛ばすまぼろし、面白く生きろと叫ぶ監督のまぼろし、全ての行動を適当に選択するまぼろし、相手を喜ばせるまぼろし、慰めるまぼろし、傷つけるまぼろし、博愛、嫉妬、厭世、欲求、嗜虐、祝福、暴力。パンを焼くまぼろし、賭博をするまぼろし、芸術家のまぼろし、挑発するまぼろし、場を整えるまぼろし……などなどが仮面になり、私の代わりに喋り、友達を作り、異性を口説き、大人に叱られ、謝罪の言葉を述べた。小説を書くとき、キャラクターはここから引きずり出されて演じる。良く小説に出るのは気取るやつと過大評価するやつ。過大評価するやつのことが好きだから良く使う。名前の付いてる奴と付いていないやつがいる。監督は監督。裁くのはジャッジ、ここらへんはそのまま、パン屋もそのままだ、あとは良く見かける順にラスター、マルクト、ドロップ、アシュリー、ケイヴ……一番デートをしたのはラスターで最近はマルクトが多い。疲れているときはマルクトが一番優しい。ドロップはいつも優しいけど、いつもすぎる。
 最近の僕は結構、腹をくくって小説を書いている。偉いと褒めてくれてもいい。ただ、小説を沢山書こうとすると、上記イマジナリーたちが出払ってしまうのが、最近になって認識した問題だった。MP不足とも言える。自分を守る分のイマジナリーを召喚できない。これが大層困る。生活におけるコミュニケーションが疎かになるし、三大欲求の満たし方がジャンクになっていく。大体、親から貰った才能を空っぽにしてしまった低能の僕だから、身を削らないと小説を書けない。しかし、これほど頑張った場合の、まぼろし不足で生活をすると、ダメだ。怖い。寂しい。壁一枚隔てる僕の、唯一内側にいる皆との、おわかれだ。
 僕を装甲する隙間から、一番真ん中が漏れ出る。光が差し込む。僕が避けていたものたちを、直に見てしまう、聞いてしまう。不機嫌そうな友人の顔とか、芽生えかけた恋を踏み潰すときの、断末魔とか。怖い。見られるのも知られるのも怖い。隠したい。繕いたい。
 話を戻すけど、まぼろしが減り過ぎると、ペナルティを食らう。大規模な蛙化現象が起こる。僕の本当が本当にならないための最後の手段。それが、好きと嫌いのシャッフルだ。あれが好きとかこれが嫌いとかの基準を全部バラバラにして、自分自身を隠してしまう。沢山の自分がこれに巻き込まれて死ぬ。今まで好きだったものも嫌いに、嫌いだったものも好きに。そうじゃない、そうだったり、素敵で悪い、熱くて寒い。無意味なオクシモロンで脳が満たされる。かんけいないけど、箱買いしたチョコミントアイスが美味しい。
 そんなこんなでいっぱいいっぱい、朝泣き叫びながら起きたりした。感じたのは疲労と、悲しさ、寂しさ、そして、ここまで追い詰められたことへの喜び。僕はまだまだおかしくなれる。もっと深く認識したい。痛覚の茨を掻き分けて心の奥を覗きたい。
 嫌だ、やめてくれ。黙ってくれ、諦めてくれ、僕だって普通に生きたっていいじゃないか。普通に暮らして、普通に仕事をして、普通に遊んで。無料の漫画やゲームで時間を潰して、普通に恋をして、普通にフラれて、普通に恋をして、普通に実って、普通に子供を育てて、普通に老いて、普通に煙たがられて、普通に死んで、普通に泣かれる。何が不満なんだ、気に入らないんだ、そんなにするまで良い事なのか、その、書いたりとか、道化だったりとか、苦しんだりとか、そんなに良い事なのか。苦しい、辛い、やめたい、寒い、寂しい。全部、全部じゃないじゃないか、これだけやっても、どこも埋まらないじゃないか、満足なんて、できない。なら、休んでくれ。眠ってくれ。本当はなんでもないんですごめんなさいつまらないんですからっぽなんです飾り付けた私の中には何も入っていないんです好きって言って欲しい抱きしめて欲しい慰めて欲しいありのままを許してほしい、理由もなくあなたを好きになってもいいですか、わがまま言ってもいいですか、嫌いにならないでくれますか、笑顔でいてくれますか、私の為に、私たちの為に、矜持を捨ててくれますか、受け取ってもらってもいいですか、無償の物を、ありったけのものを、少ないけれど、全部あげます。だから、助けて、救って、楽にして、愛して、私を見て、手を、手を、手を、差し伸べないで。
 ごめんなさい。
 以上、
 雑多記述係のまぼろしより。


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