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事象

お墓の中に眠ったとして、そこに別に誰が来るとか考えたくもなくて。いくつか理想はあるけれど、とにかく海の近くがいい。なるべく風が強いところで、近づく人に親切でなければそれだけいい。出来たら曇りが似合うような丘の上で、周りに他の人のお墓が無ければいい。写真に撮ったときに真ん中に据えることができないように、とにかく端っこで。春は風向きだけで感じることができて、夏は対角線に向日葵が咲き、それは秋になっても冬になろうとしているのにまだその向日葵は咲き続けてしまう。冬になればそこは雲が覆い、銀色の空で凹凸の似合う場所がいい。ずっとそういうことを考えている。

それまでどう生きるのかなんて、特別深く望むこともなく、美味しいパンがたまに食べれたらいいかなとか、料理をしたくない夜はロースハムをそのまま齧ったり、1年に1回くらいは自分の部屋のベッドじゃないところで眠りたい。なるべく自分以外の存在に憧れ、自分からかけ離れればそれだけ嬉しい。自分が自分に近づくことにどうしても震えが止まらない。手も足も、目も唇も。

新しい朝が来ることで安心する人もいれば、終わる夜に鬱屈が止まらない人もいるだろうし、数字の1、2、3、を見るだけで、勉強して勉強して努力して全て覚えて誰にも負けたくなくて誰にも負けなかった僕らが初めて1番を取れなくて涙も出なくて、手足を切って動けなくなるような重い絶望を感じた日を忘れない。

腕時計を着けて眠れば何度も巻き戻る夜があったっていいだろうに、僕らは丁寧に腕時計を外して眠る。切り株の下に眠るのは生か死か。

夏はアイス、秋は焼き芋、冬はおでん、春はさくらもちを食べます