「初飛行」2024年5月3日の日記
・このバンドならみんながやっていないことができる。みんながやっていない編成で、みんながやっていない曲をやれる。このバンドがやっていることを他で経験するのは難しい。
・打ち上げで天野さんが賛助出演者の1人を口説いて(勧誘して)いるとき、たぶんそんなことを言っていた。
・ことりファンファーレオルケストは日本において明らかな唯一無二性を持ったバンドだ。ファンファーレオルケストという編成をもったアマチュアの常設バンドであること。国内の他のファンファーレオルケストと比べて小規模であること。バンドの規模とレベルの適した作品を探した結果、ほぼ日本初演みたいな選曲をしていること。たぶんことりが解散して私がファンファーレオルケストをやめたら、同じようなことをやってくれる人はしばらく現れないと思う。みんな大人数で演奏したいから。有名な曲をやりたいから。難しくて長くてかっこいい曲をやりたいから。
・そういうバンドである、と公式として宣言することはしてこなかったし、そういうバンドに入っている自覚を団員に求めていいものか、ずっと悩んでいた。ファンファーレオルケストという編成に熱狂している人、人と違うことをやりたいと思ってファンファーレオルケストを始めた人、入った楽団がたまたまファンファーレオルケストだった人、様々な背景や思いを持った人が混在している状態がいい。
・一方で、団の運営とか関係なしにただのファンファーレオルケストが大好きなひとりとして、団員にはもっとファンファーレオルケストのことを知ってほしい、自分から知りに行ってほしいという気持ちは抱え続けていて、日々増幅している。でもそう思っているだけでは伝わらなくて、ただ言うだけでもだめで、なにかそういう場を自分で作らないといけないのだろう。
・ハッピーペンギンブラスに入ったばかりのとき、ブラスバンドの歴史に関するオンライン講座を指揮者が開催してくれた。あんな感じで、ファンファーレオルケストってつまり何?というのを話せる場所を作りたい。私から何かレクチャーするということはできないから、各々のファンファーレオルケスト観を持ち寄ってぶつけ合いたい。私は知りたい、みんながファンファーレオルケストを何だと思っているのか、どんなところに魅力を感じているのか、何を求めているのか。
・私は団員のことを「一緒にファンファーレオルケストの在り方を追求していく仲間」として認識し、そのように接していいのではないか、それが団員に対する敬意となるのではないか。今日の天野さんの口説き文句を横で聞いていてそう思った。そうしていかないと私も辛い。いつまでも寂しい。
・今日のプログラムは何も、珍しい曲を日本初演したくて作ったわけじゃない。バンドの規模、レベル、予算にできる限り合った曲を選んだらこうなったのだ。
・演奏会では5曲とアンコール1曲をやった。リハに出席しながら、「曲数多かったかも」と思った。1曲少なくてもよかったかもしれない。難度は全てやや易しめに抑えたにもかかわらず、本番直前まで合奏は割とスリルがあった。易しい曲はあっても難しくない曲などないのだと痛感する。全体のサウンド作りにギリギリ集中できるくらいのレベルだった。これ以上難度の高い曲をやるなら、合奏の回数を増やしたり、パート練習を入れたり、個人練習を努力義務にしたり、何かしら負担を増やさなければならない。
・世の中には、ファンファーレオルケストのための易しくて聴き応えのある曲が、あるにしてもそんなに多くはない。すでに有名でみんなが「演奏したい!」と言うような曲は、大体少し〜かなり難しい曲だ。それをわかってほしい。演奏できないわけではないが、越えるべきハードルは高いし多い。その分合奏のサウンドづくりに集中できる時間は減るだろうし、「うまく吹けない」と思う時間は増える。私はそれは嫌だ。より合奏の時間を楽しめる曲を探しに行く。それで自ずと「どっから持ってきたの」と言われるような曲ばかり持って来る。
・でも特殊なことはなんにもしていない。編成と難度、必要であれば演奏時間とジャンルを絞って、片っ端から出版社のサイトで検索をかけているだけだ。条件に合ったものは音源を聴いてみて、いいなと思えばキープしておく。最初にそういう探し方をするので、私の知らない曲も自動的に候補に引っかかるようになる。ある程度集まったらジャンルの偏りや予算を気にしながら候補を絞る。最近は出版社を通さず作曲家が直接楽譜を売っていることも多い。そういう作曲家の名前は、ファンファーレの大会の課題曲とか、作曲賞の結果で知っていく。情報は十分手の届く範囲にある。ノウハウの提供はいくらでもするから(ノウハウなんてものがあればだが)、もし私が不在になったとしても、みんなが固定観念にとらわれず、自由な選曲をできるようになってほしい。それが今後しばらくの目標かも。
・そう、そもそもの選択肢が少ないので選曲段階ではそんなに曲同士の関連付けとかはやらなかったんだけど(メインとサブメインについては投票もやってるので調整しようがない)、結果として「初飛行」というコンサート名に相応しいような曲ばかりが集まった。それでも依然としてふんわりとした繋がりがあるだけだったのだが、今日の天野さんのMCが確固たる「意味」を与えてくれて、それがすごく嬉しかった。「選曲者そこまで考えてないよ」なんだけど、天野さんなりに解釈・考察してくれたこと、それを演奏会の場でみんなに話してくれたことが嬉しい。考察されるのって嬉しいんですね。
・各々に各々の悔いはあると思うんだけど、全体としてずっとすごくいい響きをしていたと思う。すごかったよ。細かいことは抜きにして、ファンファーレオルケストの響きはそれ単体で魅力的すぎる。バンドの中で楽器を吹きながら響きに包まれて、これからもファンファーレオルケストで演奏し続けたいと思った。皆もそう思ってくれていたらいいな。
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