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均衡解的戦略とパレート効率を意識をした戦略の使い分け(メモ)



はじめに


ポーカーをしていると、均衡解的戦略とパレート効率を意識した戦略をとることがある。世の中に出回っているソルバーや計算機の多くは均衡解的戦略を示してくれる。

実戦では集団を定義し、その集団が利益的になるようなパレート効率という考え方を取り入れることで、均衡解的戦略だけを選択するよりも良い結果になることもあるのではないかと考えた。

2つの戦略は必ずしも相反するものではないが、自分がプレーをするときにどちらを
強めにした戦略で立ち回るのかを意識するべきと思う。
どういったときにどちらの要素を強くするべきかを考えたので備忘メモとしてnoteに残す。

均衡解的戦略の定義


ここでは、相手プレイヤーが戦略を変更することでより高い利益を得られないことを目指す戦略と定義する。

パレート効率を意識した戦略の定義


ここでは自分を含む集団があり、その集団全体の利益を増やす(減らさない)ことを意識した戦略と定義する。
※必ず自分だけでなく、自分を含む集団が定義され、その集団のトータルが利益的になることを目指す。

トーナメントにおいてBF(バブルファクター)が大きいとき


・均衡解的戦略


 →チップEVのレンジよりも広めにオールインをしかける。

・パレート効率を意識した戦略


 →ポット額を抑えパッシブに立ち回り、自分とポットを争う相手のトータルプライズEVを大きく失わないよう注意する。
※集団の定義はポットを争うプレイヤー
 
トーナメントにおいてBFが大きいとき、プライズEVの均衡解的戦略として、チップEVを求めた戦略よりも幅広くオールインを仕掛けることが知られている。
但し、卓にいる相手のBFへの理解度が低く、プライズEVベースでのミスコールをする人がいるとき、自分は均衡解的に正しいオールインをしたにもかかわらず、間違えたコールに引きずられてプライズEVが大きく下がるという特徴がある。
これは自分とミスコールした相手のプライズEVが下がり、その期待値はポットを争っていないプレイヤーにわけられることとなる。そのため、ポットを争うプレイヤー全体のパレート効率が下がってしまった状態と言える。

プリフロップでオールインする場合、対戦相手は複数いる。そのため、アクションが残っているプレイヤーに1人でもミスコールをする人がいるならば、均衡解的戦略は自分にとって利益的ではないという状態になる。

言い換えれば、均衡解的戦略によってもたらされる利益は、アクションが残っている相手の数だけ直列で結ばれた非常に不安定なシステムの上に成り立っているととらえることもできる。
実戦では周りのプレイヤーの理解度を推察して、均衡解的戦略とパレート効率を意識した戦略の度合いを調整する必要がある。
数学的に正しくても、プッシュレンジは決して均衡解的戦略一択というわけではない。

 

パレート効率を意識した戦略


 トーナメントにおいて複数テーブルの状態で、インマネやプライズアップが決まる場合に、インマネやプライズジャンプが近いときにフォールドを増やす。
 ※集団の定義は同卓しているプレイヤー
 
これはパレート効率を意識した戦略としたが、均衡解的戦略と重なる部分もある。インマネやプライズアップが近いときにフォールドのレンジを広くすることは、半端なハンドで入り、レイズを被せられ、EQを放棄させられることがないようにする等の均衡解的戦略としての意味合いと卓全体のプライズEVを上げる、卓のプレイヤー全体のパレート効率を意識した戦略としての意味合いの両方の性質をもつ。

プレーするハンド数を減らす、いわゆる牛歩と言われる戦術や、卓全体でインマネまで全員フォールドで回すといった方法も(マナー的問題おいておけば)卓全体のプライズEVを上げる戦略と言える。

共謀するのはルール違反ではあるが、卓の全員がそのことを理解した上でそのような状態になることはあり得るとは思っている。
全員がそのような戦略をとろうとすると、それを出し抜いてアグレッシブにプレーする人が一方的に得をすることになる点には留意する。


トーナメントにおいて、Day2序盤や置きバケ、泥酔によるプレイ困難者など、離席しているプレイヤーがいるとき


均衡解的戦略


→スチールの成功率が高くなるため、広くアグレッシブに攻める

パレート効率を意識した戦略


→ハンドが早く回るように、アクションスピードを早める。
アクティブプレイヤーのトータルチップが増えることを目指す。
※集団の定義は同卓しているアクティブなプレイヤー

均衡解的戦略としては、離席者がいるのであればスチールが成功しやすく、デッドマネーが増える。そのため、離席者がいない場合に比べて、より広いレンジでオープンすることが均衡解的戦略になる。
パレート効率を意識した戦略としては、離席者が戻ってくるまでの間、離席者のブラインドをより多く回収することで、卓にいるアクティブプレイヤー全体の利益の最大化を狙うこととなる。

また、このとき卓の何人かを飛ばすとテーブル移動が発生するかも考慮にいれることが大切になる。
アクティブなプレイヤーを飛ばすことでテーブル移動が発生しそうなシチュエーションであれば、よりパレート効率を意識した戦略に寄せることになる。

一つ例としてとしてポーカーチェイスのランク戦で4人のプレイヤーが回線落ちして、ヘッズアップになった場合を考えてみる。
ここで均衡解的戦略を採用した場合、エニハンに近いくらいのレンジでオールインを仕掛けていき、受ける側は6位に落ちる可能性があるため、幅広くフォールドすることとなる。
しかし、アクティブな2人のユーザーが共通認識をもてるならば、回線落ちしたプレイヤーが飛ぶのをまってから、本格的なチップの取り合いをする。
パレート効率を意識したプレーをした方が、2人にとっては合理的になるし、肌感覚としてもいい成績が残せそうではないかと思う。

レーキがかかるリングゲーム

・パレート効率を意識した戦略


レーキが端数切り捨てになるようなベット額を選定する。
※集団の定義はポットを争うプレイヤー

レーキがかかるリングゲームにおいて、それが最小になるように選定したベットを行うことは、自分が利益的になることはもちろん、ポットを争う相手の利益にもなるため、パレート効率を意識したプレーと言える。

これに関しては均衡解的戦略とパレート効率を意識したベットは同時達成可能であると思う。ソルバーではベット額を固定するため、レーキを抑えるという発想はしない。しかしレーキ額を抑えたパレート効率の意識をした均衡解的なベットサイズが存在しているはずと思う。


最後に


今回は均衡解的戦略にパレード効率という概念を取り入れて考えてみた。

ポーカーの座学では、基本的に他プレイヤーが戦略を変更することでより高い利益を得られないこと目指す、均衡解的戦略を学ぶことが多い。

しかし、レクリエーショナルなプレイヤーが多く、相手が合理的な選択をしない場合には自分がひきずられてマイナスになることを避けることも重要になる。また、共通認識がもてるのであれば、自分を含む集団の利益が最大になるように立ち回る方が、均衡解的戦略よりも良い結果を残しやすいシチュエーションも存在する。

相手のスキルを正確にとらえたり、相手との共通認識が持てるかは明確にならならいのでなかなか数字では表しにくいが、均衡解的戦略とパレート効率を意識した戦略があることを認識して、立ち回ることは実戦では重要になる。

1点自分への注意として、パレート効率を意識した戦略をしようとしたら相手が均衡解的戦略をとってきて一方的にやられたり、自分の成績が振るわなかったことを、相手が合理的選択をしなかったせいにするかっこ悪い言動はしないように気を付けていきたい。

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