【エッセイ】健康診断で絶対に尿を出すなと病院に言われたのに間違えて尿を出してしまいました。

会社で指示されてた年一の健康診断を受けるため、水道橋にある診療所に行ってきました。行った診療所がこちら。


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どこからどう見てもドン・キホーテです。


なんで病院を探してドン・キホーテをサジェストされなければいけないのでしょうか。僕は中国出身なので日本のことはよくわかりませんが、病院の対義語を作れと命令されたら間違いなくドン・キホーテにすると思います。


ひとまず地図を見ながらGoogleMapの指示する場所へ向かいます。病院に向かえば向かうほど激安の殿堂に近づいていくジレンマに脳が混乱します。

アプリが指し示す位置に到着すると、そこには警戒色のド派手なポップ、目的不明な巨大水槽、店内に響き渡る安っぽい音源のBGM・・・そこはまさしく不潔の殿堂ドン・キホーテ。この世で一番清潔感を求められる病院とは対照的な景色が広がっています。しかし、建物案内を見ると確かにドン・キホーテビルの3階に「富坂診療所」の文字が。ドンキへのアクセスに特化したかつてない診療所に胸が高鳴ります。


病院で受付を済ませると、どうやら順番待ちが発生しているようで、何もない病院のフロントで待たされることになったのですが、ここに来て問題発生。強烈な便意とほんの少しの尿意が身体を襲います。

トイレに行っておきたいですが、いつ呼び出されるかもわからないので、行く前に受付のお姉さんに了解を取っておくことに。


「あの、トイレに行きたいのですが・・・」

『この後に尿検査が控えているのでトイレには行かないでください。』


完全に想定外の答えが帰ってきました。まさかトイレに行くのを禁じられるとは露も思ってなかったので、軽いパニック状態に陥ります。

「いや・・でも・・結構もうお腹痛くてしんどいですけど」

『診察が始まったらすぐに尿検査なので、もう少しだけ我慢して頂けませんか?』


逆に頼まれてしまいます。女性にトイレを我慢するよう強請られたのは人生初ですが、まさかその初めてを病院で経験するとは思っていませんでした。

尿検査で十分な量の尿を採取する必要があるので、トイレには行かないで欲しい。彼女が言っていることが正論だということは頭では理解していますが、あまりにも自分の便意が尊重されないのでこっちも少しイライラしてきます。


「絶対に尿は出さないので、お願いだからトイレに行かせてくれませんか?」

我慢の限界でした。まさか公共の場所で「絶対に尿を出さない決意」を口に出す日が来るとは思っていませんでした。受付のお姉さんも困った顔をしていましたが、僕の覚悟が伝わったのか、渋々トイレに行くことを許可することに。


排便許可が下された頃には、僕の便意はピークに達していました。肛門からもう既にクソが顔を出しているんじゃないかと思うほど怒張する便意。大急ぎで個室トイレへ駆け込みます。

便座へ腰掛け、いざ排便!というタイミングで問題発生。パッシブスキルの便秘が発動。メチャクチャお腹が痛いはずなのにクソがなかなか出てきません。

例えクソがなかなか出てこずとも、この腹痛をもたらしている元凶が腹の中のクソであることは長年の経験で分かっていたので、なんとかクソを追い出すためにも下腹部にここ一番の力を込めた刹那、陰茎に違和感が走ります。


チョロチョロ・・・


股間に視線を落とすと、情けなく頭を垂れた陰茎の先から薄黄色の液体が流れ出しているではありませんか。

大急ぎで股間に力を入れて流れていく尿を止めようとするも時既に遅し。既に尿は膀胱から尿道へ移動してしまい、体内に留めておくのが不可能な状態に。覆水が盆に還らぬように、覆尿もまた、二度と膀胱へは還らないのです。


既に尿がアンコントローラブルな状態にあることを理解してからは、むしろ自分も冷静でした。ただ水面を漂う海月のように、尿意に身を委ねて膀胱内の水分を吐き出し切ります。

間違って尿を出してしまったことが病院側に知れたら・・・?ここで尿を出したせいで再検査になってしまったら・・・?そんな不安はもうありません。今はただ、尿さえ出せれば良い・・・


結局、便秘のせいでウンコは出ませんでした。

絶対に出してはいけないオシッコだけを出してトイレを後にし、受付へ戻ると、ちょうど帰ってきたタイミングで呼び出しがかかります。


『お待たせいたしました。こちらが検尿カップですのでまずは検尿からお願いします。』

そう、人生なんてそんなものです。本当に大切な物は、失ってからその大切気付くのと同じように、尿を出し切った後に尿の提出を求められる。


『先ほどトイレに行かれていたようですが、尿検査の方は問題なく出来そうですか?』

「はい、しっかり我慢したので」


至ってクールに、冷静に、受付嬢の核心をついた質問をいなし切り、そしらぬ顔で再びトイレへ向かいます。

検尿カップを持って陰茎の前にセット。もう既に素寒貧になった膀胱に力を込めます。

チョロッ・・・


先ほどの排尿で出しきれず、尿道と膀胱に残った尿の残滓を検尿カップに吐き出します。しかし、それもほんのわずかな物。

規定量の5分の1程度しか入っていない検尿カップを、素知らぬ顔で医師に提出します。

何かを言いたそうにしている医師が口を開くのを遮り、

「次の検査がありますので」

そう一言だけ言い残し、僕は採血場へ向かうのでありました。

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