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食糧問題を救う?!世界で最もデンプンを蓄積する植物『サゴヤシ』🌴🌴

こんにちは。
名古屋大学生命農学研究科の大学院生、浅野航輝です。

この記事では、自分が研究してる『サゴヤシ』という熱帯植物について書いていきます。笑 

突然ですが、、

Q.急速に増える食糧需要を満たすためには、2050年までに2012年水準の食糧生産の約何%を増加しなければならないでしょうか?




正解は約50%です。

僕が最初にこのことを知った時(大学3年生ぐらい)、衝撃が走りました。

約30年後、食糧生産が向上しなければ、僕らが生きている世界は深刻な食糧問題に陥って、マッドマックスのような食糧を奪い合う世界になってしまうのだろうか……と悲観的になると同時に、この状況をなんとか変えたい!そう思うようになりました。

そんな時、明治大学農学部の国際農業文化理解プログラムに参加し、元FAOアジア太平洋事務局長の小沼廣幸特任教授とお話する機会を頂きました。


今思い返すと、

これが僕の人生の大きな転機でした。


小沼先生はタイ南部でサゴヤシ林の研究を精力的にされており、Sago Palm (https://www.springer.com/gp/book/9789811052682
↑無料で読めるので是非)の一部を執筆しているほどサゴヤシ愛に満ち溢れた方だったのです笑

いったい国際機関に長く勤めていらっしゃった偉大な明治大学出身の大先輩が大絶賛するサゴヤシって何なんだろう?

それが僕がサゴヤシに興味を持ったきっかけです。

で、気づいたら名古屋大学の江原宏 教授(日本サゴヤシ学会長)のもとでサゴヤシ研究してました。(笑)

サゴヤシ🏝はインドネシア、マレーシア中心に熱帯アジアで広く分布し、古くからそこから採れるデンプンやその大きな葉が屋根材として用いられてきました。一般的にヤシとしてイメージされるココヤシのココナッツなどとは違って、幹に蓄えられるデンプンが食用利用されてきました。その乾燥デンプンの生産量は1本から約300kgです。

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(サゴヤシの幹。外側の髄と呼ばれる部分は木質資源として、中の部分はデンプン資源となる。筆写撮影)

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(マレーシア、サラワク州ムカ地区の市場で売られているサゴパール。筆写撮影)

実は、サゴパールと呼ばれるサゴヤシのデンプンは日本でも人気となったタピオカドリンクのように、古くから飲み物に入れて飲まれて来ましたが、現在では生産が減りタピオカパールに代用されています。

サゴヤシの何が凄いのか?

サゴヤシの強みは大きく分けて2つあります。

1つ目は、泥炭湿地でも栽培可能という点です。

泥炭湿地は、いわゆる”炭”のような性質をもった土壌です。貧栄養土壌とされ、他の作物の栽培には不向きな土壌とされています。

また、ここでは、度々火災が発生してしまいます(現在のインドネシアにおけるCO2排出量の主要要因)。サゴヤシ栽培は冠水した土地で実施するので、火災を抑制できるだけでなく、農業にとって未利用な土地である泥炭地を有効活用できます!これが意味することは、

他作物の農地と競合せずに栽培を拡大でき、環境に優しい

ということです。ただ、泥炭層の厚さが厚くなればなるほど、サゴヤシの生育が悪くなってしまうことが報告されており、今後は改善が必要です。。

2つ目は、高いデンプン生産性がある点です。

その生産力は単位面積あたりのカロリーベースでバナナやヤムイモを上回るほどです。植林から収穫まで約10年の長い歳月を要する植物ですが、生育の途中でサッカーと呼ばれる子供を作ります。これがいくつもできるため、サゴヤシは一度植えてしまえば永続的に栽培、収穫ができます。

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サゴクッキー(NISSIN)

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新唐揚げ粉(AJINOMOTO)

現在では、採れるデンプンをお菓子や唐揚げ粉などに積極的に利活用されてきました。今後は、家畜の餌、グルテンフリー食品、アレルギー対応食品、バイオ燃料、生分解性プラスチックなどへの応用が大いに期待できます。

興味のある方は是非、『サゴヤシ-21世期の資源作物』という本を手に取ってみてください!(https://www.kyoto-up.or.jp/book.php?isbn=9784876989553)

ちなみに小沼廣幸先生は現在でも、アジア自立支援機構(一般社団法人)を設立して現役で国際協力を実践しています。そしてタイ南部にてサゴヤシの植林プロジェクトを実施されています!(アジア自立支援機構→http://asiaselfreliance.org/)

最後まで読んでくれてありがとうございました!