#89　蓮の池の近くで

　私と妻は、長男の家族と一緒に、８月のお盆が近づいた日の夕方、酷暑を避けて蓮の花を見に行った。草が刈られた広大な広場の一画に、蓮の咲いた池があった。涼しい風が吹いてきた。私たちのほかにも、池を囲むように蓮の花を見ている人がいた。蓮の写真を撮る人もいた。池の近くでは、ペットを連れて散歩をする人もいた。

　私たちが、蓮の花を見ていた時、そうたとりょうたは草むらを走りだした。草むらを走ると、バッタが跳んだ。その、バッタをつかまえようと二人は走っていた。草むらの近くに田んぼがあった。こんどは、二人でカエルを追いかけていた。
　
　さらに、田んぼの水路をたどっていくと、水路の中にザリガニを見つけた。人の気配を察すると、泥の中にさっと潜り込むザリガニに、子供たちは苦戦していた。りょうたは、水路の溝に滑り落ちて、おしりまで濡れていた。たもや、するめをつけた棹もなく、ザリガニをつかまえるのは難しかった。わたしはようやく、小さなザリガニを素手で捕まえ、そうたやりょうたに見せてあげた。

　しばらく草の上でザリガニを見ていたが、ほどなくそうたは、ザリガニを溝の中に返してあげた。「そうたは、自分でザリガニをとりたいねん」と言った。駐車場が閉まる時間が近づいた。帰りを渋るそうたに、「次は、たもやさおを持ってきて、水槽に入れて持って帰ろう。」となだめすかしながら、私たちは駐車場へと道を急いだ。　＠家族　１