#52  50問テスト

「今の学級に慣れてきた?」4年になって一か月が経過した5月の中頃に、私はりこに学校での様子を聞いた。「2年生の時に仲の良かったさきちゃんとも同じクラスやで。女子は仲がええで~。先生も、あんまり厳しくないで~。時々、さきちゃんと2年の時の担任の先生の顔を見に行くこともあるわ。」とりこが言った。「1年と2年のときの先生?」というと、「そうやで。」とりこが言った。「先生の追っかけみたいやな」というと、「そやな」とりこは言った。2年時の担任の先生の話になると、私はよくりこの50問テストのことをを思い出すのだ。

りこが2年生の、7月の下旬の暑い日のことだった。「ただいま」と帰ってきたりこに、いつもの元気はなかった。ランドセルの中から100点と書かれた、昨日した漢字50問テストをりこは取り出した。私は「がんばったな。よかったな」と言った。

「りこな~~。りこな~~。」と繰り返すりこに、「どうしたん?」と私が言った。「りこな~~・・・。この漢字が分からへんかってん。その漢字だけ、机の中にある漢字ドリルを見て書いてん。時間になって、テストを先生に出してから、おなかがなんかへんな感じになってきてん。『テスト中に、りこが机の中のドリルを見ていた』と先生に言われるかもしれへんとも思ったわ。そう思った時は、ドキドキしてきたわ。今日の2限目の国語の時間にテストが返ってきたので、今日の昼休みに先生に正直に言おうとしたけど、怒られると思ってよう言わんかった。テストのこと、ママにも怒られるわ・・・」とりこは泣きながら言った。

「よう言うたな~。自分の悪かったことを、自分から言うたのはえらいで~。しかし、りこがしたことはママに言うとくで・・。自分から言うたんやから、あんまり怒らんといたってとママに言うとくけど・・・・・。せやけど、隠していたこと自分で言うたんでスッとしたやろ。」と私が言った。「うん」とりこは言った。

夕方、帰ってきたママにも叱られた。次の日の給食後に、ママが書いた連絡帳とテスト問題をもって、りこは先生のところに謝りに行った。「テスト中に、机の中のドリルの答えを見て漢字を書くのはあかんわ。テストは2点減点やで。これからやめときや。せやけど、自分で悪いことしたと言いに来たのはえらいで~。」と先生は言った。

「お昼休みにテストを持ってきて話をしてくれました。テストの時、私が(カンニングをしないように)しっかり子供たちを見ていなかったので、リーちゃんに悲しい思いをさせました。すみませんでした。」と連絡帳に書いてくれてあった。

りこが入学をして、初めての担任の先生で、先生にとって、新採用で初めての教え子のりこらとは、いまでも特別なつながりがあるのだろう。

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