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バリ脱出-2

スラバヤに向けて、まずはギリマヌまで出発した車。ようやくみな落ち着いて、改めて自己紹介をした。

車の運転手の名前は、ウアム。ちょっとファレル・ウィリアムズに似ている兄ちゃんだ。

その助手席には、手配をしてくれたもえさんが乗った。もえさんのお友達がメタルカンパニーで、仕事か旅行かでバリに来たときに、そのお友達が一番最初にお世話になったドライバーがウアムだったそうだ。そのときの対応が素晴らしくて、この危機に際してウアムを紹介してくれたらしい。

あみさんは銀行員。シンガポール駐在で、1人でバリまで旅行に来ていたらしい。華奢な女性だったので、先入観もはたらいてしまってその行動力にちょっと驚いた。

もえさん、あみさんに、僕らが研究室の仲間であることをようやく伝えた。特に「何の研究してたんですか?」とは聞き返されなかったが、今までの経緯的にこの4人の役割がわかってきたようで、「キャラの被らない、個性的な4人ですね。」という何とも言えない評をいただいた。そのとーり。

そんな僕らがいますべきこと。

それは、フェリーでギリマヌからバニュアンギまで渡った後の足を確保することだ。水没した道路を避けるため電車にしよう、でもチケット予約はネットではインドネシアのクレジットがないとできないからコンビニのアルファマートで予約しよう、というところまでで話は止まっていた。

なので今この車は、ギリマヌを目指しながら、アルファマートがあったら止まって確認しようというモードになっていた。

並行して、隣の鈴木さんがネットでバニュアンギ・スラバヤ間の夜間の急行電車の情報を調べてくれていた。なかなかたどり着かなかったが、アメリカ人?の鉄ちゃんが世界の車窓から的なサイトをまとめてくれていて、そこに少しの写真とともに情報が載っていた。

そのサイトによると、席は1等席から3等席まであって、1等席はゆったりと座れる席、2等、3等となるにしたがって席が狭くなったり、トイレ等の設備のクオリティが悪くなるらしい。乗ったならば6時間強の旅だ。ウアムが「ああ~、3等はやめておけ」と強く言ってくるので、逆にどんな感じなんだろうと興味がわいた。まぁ、席がとれれば普通に1等席にしたい。脱出の旅を少しでも楽にしたい。もちろんいざとなったら3等。飛行機の時間が迫っているため背に腹はかえられない。そんな決意のようなものがバッファ時間のないもえさんあみさんの反応から感じられた。

そうこうしているうちに、アルファマートを発見!ウアムが駐車してレジに並んで聞いてくれる。僕らは水しか用意できてないので、小腹の解消になるようなものを買い足しながらその動向を見守った。しばらくすると、ああそうかとやや意気消沈。

なんとアルファマートから予約できるのは(少なくともその店の端末からは)前日の列車の予約までらしい。列車は今日の10時発。今は昼の2時すぎ。あああ、と声にならない声を心の中で発した。

まだあきらめない。

ギリマヌまで向かいながら、今度はインドマートというアルファマートとローカル双璧をなすコンビニに寄る。チケットとれてくれ~と祈る。でも、そこでも結果は同じだった。

予約はできないけど、きっとバニュアンギの駅舎まで行けばまだ席はあるはずだ。ウアムがジェスチャーする。その望みをかけてギリマヌまで急ぐ。

道中ほんとに驚いたのは、その車の運転だ。通った道は2車線。そこを前の車を追い越しながら進んでいく。追い越すときは、1回対抗車線に出る。向こうからももちろん車が来る。前の車の速度、対抗車線の様子を伺いながら、本当に絶妙なタイミングでグウーンと急加速してズワッと抜いていく。わぁ危ない!と思った瞬間が幾度あったことか。でも、これが日常らしい。まじか~とひやひやしながら、バリ島の西側の海岸沿いをひた走る。

途中、その道路から、むこーーうの方にアグン山を見ることができた。アグン山はバリ島の北東に位置している。だから西海岸からは遠いが、何せ3000メートル級の山からさらに4000メートルの煙が出ているのだ。その姿はジャングルの隙間たちからしっかりととらえることができた。

全部、山のせいだ。

なんておもいながらも、脱出劇にドキドキしている自分もたしかにいた。

(つづく)

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