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「海」のカルテ(クソカード医学会用資料61)


まえがき

 なんだよ「海」のカルテって
 人間風情が大自然を……それも母なる海を治療使用などと、おこがましいと思わんかね?
 はい、そんな「海」を診ていこうと思います。

 「海」は第一期にして初の構築済みデッキ『STARTER BOX』に収録されたフィールド魔法カードです。最初期のカードゆえに当然パワーが低く、それをクソカード呼ばわりするのもなんか違う気がするのですが、一方で他の初期フィールド魔法と違いサポートカードが非常に豊富で、競合も多い立場でもあるという特徴があります。
 なので単純にカードパワーではなく、競合先の下位互換に陥りがちという点を改善すべく、独自の強みを見出すための構築を探したいと思っての報告になります。つまり、いつもの番外編のようなものですね。

海について

 患者の性能は以下の通り。(出典:遊戯王デュエルモンスターズデータベース)

辞書によれば「地球上の陸地でない部分で、全体が一続きになって塩水をたたえている所。
地球表面積の4分の3を占め、約3億6000万平方キロメートル」とのこと

 効果はシンプルで、お互いの魚族、海竜族、雷族、水族の攻守を200アップし、機械族と炎族は逆に200ダウンします。200も!?
 200はさすがに心もとないですが、メジャーな機械族や、最近覚醒した炎族デッキと対戦することはそれなりにあるので、こちらが強化される種族でデッキを組んでいれば素のステータス差400までは覆せるようになります。そういう意味では「草原」や「山」などの他の初期フィールド魔法よりかはまだマシか。
 そして他にも「海」の優位点は多く、まえがきの通りサポートカードが非常に豊富というのが挙げられます。
 数が多いので挙げると切りが無いので割愛しますが、ここまで関連カードの多いフィールド魔法は希少です。

 そんな「海」ですが、さらなる特徴として同名で効果の違うカードが多いという非常に独特な個性も有しています。その数実に5種類。
 そしてそれが同時に元祖「海」の立場が苦しい原因でもあります。
 せっかくなのでこれら他の「海」も見ていきましょう。

どう見ても海ですね

 海その2です。見ての通り、カード名は同じ「海」でありながら、効果が違います。ここでは便宜上、アトランティスとでも呼びましょうか。
 元祖「海」と比較すると、強化対象が種族ではなく水属性となっており、レベルを下げる効果もあるのでアドバンス召喚を用いる海デッキで使いたいところですね。

間違いなく海

 海その3です。どこをどう見てもカード名は同じ「海」でありながら、やはり効果が違います。ここでは便宜上、レミューリアとでも呼びましょうか。
 アトランティスと同じく水属性のみを強化し、レベルを操作します。こちらはアトランティスと違いレベルを上げ、しかもどれだけ上げるかは調整可能。なのでシンクロやエクシーズと相性がいいですね。

海か??? ……でも海って書いてるし海だと思うたぶん

 海その4です。疑いを挟む余地もなくカード名は同じ「海」でありながら、これも効果が違います。ここでは便宜上、パシフィスとでも呼びましょうか。
 アトランティスやレミューリアとぜんぜん違う、なんか尖りまくった効果をしており、レベル操作やステータスアップは一切おこないません。潔いまでにトークンと通常モンスターのサポートに特化してる……お前ホントに海か???

これは海よりかは確実に海

 海その5です。何千何百回どの角度からどう見てもカード名は同じ「海」でありながら、やっぱりというべきか効果が違います。ここでは便宜上、マガラニカとでも呼びましょうか。
 効果は水属性のサポートとレベル操作に立ち戻りました。特にシンクロに特化してる様子ですね。打点アップはないですが、疑似サーチやハンデスと強力な効果を持っています。

 以上、5種類が「海」になります。まったく同名で別効果のカードが5種類も存在するのは1万種類もある遊戯王カードの中でもかなり珍しく、他には「ハーピィ・レディ」くらいのもの。
 そんな同じ「海」たちとバフ・デバフのみで競い、自らのアイデンティティを発揮しなくてはならないのです。元祖「海」は。

 何より苦しいのがアトランティスやレミューリアは同じ「海」でかつ、水属性の攻撃力を200アップさせられる点です。
 光属性の多い雷族はともかく、魚族、海竜族、水族は当然ながら水属性が圧倒的に多く、サポート範囲がほぼ被っています。
 となると水属性以外の魚族、海竜族、水族を強化するか、もしくは雷族を強化するかになるのですが、前者はとにかく数が少ない上にたった200の打点上昇を有効活用できそうになく、後者は「山」「シャインスパーク」などのより扱いやすく強いフィールド魔法が存在するため、どうにも需要が満たせません。

 問題点をまとめると、
①効果がしょぼい
完全に同名のより多彩な効果のカードが複数ある
③それらと強化対象がほぼ被っている
 となります。

 やはり、人間ごときが大自然を救うなどという考えが愚かだったのでしょうか。
 いえ、そんなことはありません。
 アトランティスやレミューリアと違うのは強化範囲だけではない。そう、機械族と炎族の弱体化です。ここだけは完全に劣化を免れている元祖「海」独自の強み。
 永続の弱体化と相性が良いといえば……奴です。

絶対海に生息してなさそうな特効薬来たな

 「王虎ワンフー」は召喚・特殊召喚された攻撃力1400以下のモンスターを破壊するメタビの虎です。この効果は元々の攻撃力でなく召喚・特殊召喚された際の変化後の数値を参照するため、「海」のような永続の弱体化を用いれば破壊範囲はさらに広がります。
 しかし、いかにメジャーな機械族と炎族といえど、必ず相対するとは限りません。なので、強制的に相手モンスターを機械族にしましょう。

特効薬どころか、むしろ海を環境破壊してそうなんだが

 「機械仕掛けの夜-クロック・ワーク・ナイト-」はフィールドのモンスターを全て強制的に機械族にする永続魔法カードで、これ自体も弱体化の効果を持ちます。
 このカードと元祖「海」を発動していれば、相手モンスターの攻撃力は常時700ダウン! 「王虎ワンフー」は攻撃力2100の「サイバー・ドラゴン」ラインまで瞬殺するようになり、攻撃力2700未満のモンスターを戦闘破壊するようになります。まさに王。
 あとはこれらと相性のいいテーマを見つけ、このコンボをより確実なものとする必要があります。

ダイナ海スト

 「海」と虎と相性のいいテーマを見渡すと【ダイナミスト】に白羽の矢が立ちました。

華麗な水上航行を見せつけているが、海でしっかり攻守は下がる

 ダイナミストは水属性機械族のペンデュラムテーマで、主力の「ダイナミスト・プレシオス」は永続のデバフ効果を持つため「王虎ワンフー」戦術と相性は良好。元祖「海」で自身の攻撃力が200下がっても攻撃力1500なので、ギリギリ虎に食われないのもいいですね。
 そして元祖「海」で攻撃力1500ということは「地獄の暴走召喚」で同名カードを展開できるということです。

海に機械を入れたら暴走するのは当然(?)

 「ダイナミスト・プレシオス」はフィールドのダイナミストカードの数だけ弱体化数値が増えていくのですが、3体も並べると加速度的に弱体化が進み、プレシオス3体の時点でも300ダウン×3で900ダウン。クロックワークナイトがなくても虎が攻撃力2300まで食うようになります。

 ダイナミストのペンデュラム効果は共通で、スケール3組がダイナミストカードが破壊される際の身代わり効果、スケール6組はダイナミストカードへの対象耐性付与。両方揃っている場合は鉄壁とは言わないまでもかなりカチカチになるので、ワンフーが仮に除去されてもデバフは生き続け、そのまま相手を圧殺してしまうこともあります。
 ダイナミストモンスターは「ダイナミスト・ラッシュ」「竜剣士ダイナマイトP」で特殊召喚が容易なため、暴走召喚のトリガーも満たしやすいです。

無条件の完全耐性で効果を無効にせずリクルート
ダイナミストのサポートって地味に強いの揃ってる
俺はダイナミストなんだ……誰がなんと言おうとダイナミストなんだ……

 繰り返しになりますが、ダイナミストのペンデュラムスケールは3と6のみ。つまり、レベル4と5をペンデュラム召喚できるテーマです。
 このレベル帯は「海」デッキの主力である「海竜神-リバイアサン」「電気海月-フィサリア-」を無理なく採用できることを意味しています。リバイアサンの制圧力はご存知の通りで、虎と併せてメタ盤面を強固に出来ます。虎にロボット恐竜に海竜……男の子の好きがいっぱい。

PデッキにPモンスター以外を入れすぎると事故るので
上級モンスターなのもあり採用は少なめで
こちらはランク4の素材やアネモネの蘇生先としても使える

 他の「海」との比較ですが、アトランティスはレベル低下でレベル4モンスターがペンデュラム召喚できなくなるため相性が悪く、ダイナミストはチューナーがいないためレミューリアやマガラニカが得意とするシンクロの恩恵も少ないため、差別化は出来ていますね。パシフィス? 相性がいいテーマのが少ないが???

 これがダイナミストで敵を海に追い込んで弱らせ、片っ端から虎に食わせる海の食物連鎖デッキ【ダイナ海スト】です。

相性のいいカード

 くっそどうでもいい話ですけど、「海虎」と書いて「シャチ」です。そりゃ食われるわ。

・「海晶乙女コーラルアネモネ」
・「世海龍ジーランティス」
 ご存知アネモネジーランティスコンボ。相手が守備を固めてきても一掃できる。アネモネを経由できなくても、プレシオスとかが並んでるならジーランティスで相手モンスター除外⇒攻撃表示で特殊召喚することで割りとリーサルに届く。

・「ダイナミスト・スピノス」
 攻撃力2500の直接攻撃2回は地味に強い。相手ライフ5000まで、クロックワークナイトあれば6000まで射程圏に入るので、クラゲ先輩などでライフ削っておけば一気にゲームエンドまで届く。3枚必須のプレシオスとダイナマイトPがスケール6なので、同じ6のレックスよりスケール3のこちらのほうがおすすめ。

・「ダイナミスト・チャージ」
・「ダイナミスト・ハウリング」
 チャージでプレシオスをサーチからのフィサリアで特殊召喚や、ハウリングでダイナマイトPとプレシオスをスケールセットして特殊召喚等。ダイナミストはとにかく地味なんだけど、地味に強いんだよというのを教えてくれる。

デッキ構築

 フィールドサーチできる竜剣士を増やすのも考えたんですが、リバイアサンと喧嘩するため、今回は見送り。
 サモプリもワンフーやプレシオスのリクルート用に採用していた事もあったんですが、デッキのペンデュラムモンスターと魔法カードの比率が難しくて抜きました。1枚くらいは残してよかったか?
 エクシーズも狙いやすく相性の良いカードが多いんですが、PモンスターがEXデッキに戻らないのはダイナミストの強みを捨てている気がするので少数にしてます。ラグナ・ゼロは入れるかも。
 メタビ系だと「サモンリミッター」や「御前試合」も相性いいんですが、魔法罠ゾーンがすでに狭いので見送ってます。ガチガチのメタビは好みじゃないし。

 使用感は、「ダイナミストくっそ面白え!」って感じです。海は?
 ペンデュラムテーマはヴァリアンツしか使ったことなかったんですが、扱いやすくていいですねダイナミスト。好きです。
 海ワンフーは決まれば強いですが、ワンフーのサーチ・リクルートに難があるのでなかなか上手くいかないですね。
 重症度はメタビ系なおかげもあってそこそこランクマでもやれたので3.8くらいで。

実績ワンフー。「その声は、我が友、李徴子ではないか?」「違います」パクー

実績暴走召喚。ダイナミストカード7枚なので700×3で攻撃力2100ダウン。さらに「海」とクロックワークナイトで2800ダウン。ワンフーがオベリスクを食い始める量のデバフ

あとがき

 「海」いかがでしたか。この記事を書いてる今はもう、自然環境なんてどうでもよくなりダイナミストデッキのことばかり考えてます。男の子だもん。
 メタビ系は好みではないとはいえ、ギミック自体は面白い良いデッキに成ったと思ってます。

 ちなみに海暴走召喚コンボでは他に、同じ機械族の「流星方界器デューザ」が対応してるので【方界】ならぬ【方海】デッキなんかも使えます。(炎族は特にいなかった気がする)
 同種のフィールド魔法では「闇」も天使族の攻撃力ダウン効果があるので、攻撃力1600~1700の天使族を暴走召喚することもできます。
 パッと見渡した感じあんまり「闇」は相性の良いカードがなく、あえて挙げるなら拷問系アイドルくらいでしたね。テーマ内フィールド魔法が強いので実用性は微妙ですが。

インフィニティ・ダークのがイラスト黒い
ある意味アイドルの闇なので、相性良いといえば良くはある

 次回は「ヴィクティム・カウンター」ですね。「二重の落とし穴」治療に蟲惑魔を集めてるんですが、UR多い……。

おまけ

 最近作ったデッキ。

【破械イレイザーver2.0】:破械新規が来たので調整したみたものの、思ったほどハマらなかった。新規が強いせいで遊びに割けるデッキスペースがなくなってしまう、よくある話ではある。いやどう考えてもイレイザーのせいであって破械新規のせいじゃないだろ……。

【ユーフォロイド・ガーディアン】:デュエルトライアングルで使用。ゲートガーディアンを使って「パワー・ボンド」で「ユーフォロイド・ファイター」を出す後攻ワンキルデッキ。思いついてからワクワクしっぱなしで構築し、試運転を繰り返し当日を迎え、初戦でいきなり決まり役目を終えた。フェス中に一回決まれば良いなと思ってたら一発かよ。

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