見出し画像

「ヘルフレイムエンペラー」のカルテ (クソカード医学会用資料9)

まえがき

 「ヘルフレイムエンペラー」は第4期のストラクチャーデッキである『ストラクチャーデッキ-灼熱の大地-』で登場した看板モンスターです。
 初期のストラクチャーデッキはいまいち質が低く、微妙なものばかりな上、なぜか看板モンスターが出しづらく弱いという妙な特徴を持っていました。
 とは言えその看板モンスターたちの中でもヒエラルキーはあり、単純にステータスの高い「超伝導恐獣」、凶悪なリセット効果を持つ「海竜神-ネオダイダロス」はまだマシなほうで、「ヴァンパイアジェネシス」「魔王ディアボロス」などは当時から割りと重症患者扱いされていたところがあります。

 しかしその多くは属性・種族の長所とは噛み合っているので、使われないだけで無理やり使えなくもないです。一応。
 そんな中、ディアボロスと二分する悪い意味での人気をもつのがこの「ヘルフレイムエンペラー」。Googleで検索すると「ヘルフレイムエンペラー 弱い」と出てくるくらい結構ヤバさが知れ渡っています。果たして彼を救うことはできるのでしょうか……。

「ヘルフレイムエンペラー」のカルテFile2(クソカード医学会用資料20)

ヘルフレイムエンペラーについて

 患者の性能を見る前に『ストラクチャーデッキ-灼熱の大地-』について少し説明を。

 上述の通り当時のストラクチャーデッキの質は低いですが、デッキコンセプト自体は存在します。『灼熱の大地』は炎属性の特徴であるバーン系のデッキでした。「レベル制限B地区」でロックをかけ、当時としてはまだ強かったほうな「プロミネンス・ドラゴン」「逆巻く炎の精霊」「超熱血球児」でライフをじわじわ削り、最後は高打点で一気に決めるのがコンセプト…………となれば、その看板モンスターである「ヘルフレイムエンペラー」もバーン効果ないし高打点が期待されます。
 そんな患者の性能は以下の通りです。(出典:遊戯王デュエルモンスターズデータベース)

 初見の方は二度見したんじゃないでしょうか。思わず「え?」って口にしたかもしれない。
 発売当時の私も同じ気持ちでした。今も同じ気持ちです。なんだこれ。
 まず当時としては珍しいレベル9モンスター。そして見た目通りの炎属性で炎族。炎族もレベル9も比較的サポートに乏しいもののそれはそれ。しかし特殊召喚できないくせに攻撃力が2700ってどういうことだ。「超熱血球児」や「逆巻く炎の精霊」に軽々超えられそうなんだが……。
 後に登場した同じ炎属性ストラクチャーデッキの看板モンスター「炎王神獣ガルドニクス」も攻撃力2700ですが、あれは強力な効果を有しているのでまあ許されるライン。なのに対し、こいつができるのは墓地リソースを消費しての魔法罠除去
 ちなみに一応自分の魔法罠も破壊できる。なのでおそらくですが、看板モンスターでありながらデッキ内の「レベル制限B地区」に引っかかってしまうため、それを除去して殴るためデザインされた効果……なのかな? 除去しても永続効果なので守備表示にはなってしまうのでそれはそれでシナジーないですが。
 また、特殊召喚できないだけでなく効果が発動できるのはアドバンス召喚のときだけなので「死皇帝の陵墓」なども使えない。さらにアドバンス召喚といえば【帝】ですが、当時は「氷帝メビウス」全盛期ですし、のちの「凍氷帝メビウス」にはほぼ負けてます。さらにさらに現在の炎属性はバーンだけでなく、アンデット族ほどではないにしろ「真炎の爆発」などのために墓地リソースをかなり重要視する傾向にあるので、その点でも立場が苦しい。
 当時からひどかったのが、カードプールの増加と供に八方塞がりになったといえるでしょう。

 問題点をまとめると、
①サポートの乏しいレベル・種族な上、ステータスも微妙
②リリース確保と墓地リソース消費が炎属性デッキの多くと相性が悪い
③効果のメリットが少ない
 どうにか活かそうにも、「謙虚な壺」のときにも書きましたが、シンプル過ぎる効果は活かしづらい……。
 魔法罠の除去は使って使えなくもないですが、それ自体は勝ち筋に直結し辛いですし、相手次第なとこがあります。「魔封じの芳香」と組み合わせたり、自分のカードを破壊してメリットを得る方法もありますが、それらの手段ならもっと相性のいいカードがあるし……。

 となると着目すべきは「墓地の炎属性モンスターを除外」する効果でしょう。除去はあくまでおまけと割り切り、こちらを主軸に組み立てたいところ。
 候補は「ディノインフィニティ」の打点向上につながる【ジュラック】。除外されたときに効果が発動する【不知火】など。
 しかし少し試してみたところ、【ジュラック】は「ヘルフレイムエンペラー」のリリース確保に難があり、【不知火】は蘇生したアンデット族をリリースすれば召喚できますが、そもそも除外手段を多く有しているので「ヘルフレイムエンペラー」をわざわざ出す旨味がほぼない。
 もう活かすのは無理では……?

ヘルフレイム聖騎士

 「ヘルフレイムエンペラー」を主軸とするのは無理がありますが、主役ではなくデッキの隠し味、ピンポイント起用であれば活路が見えます。
 私が考えたのが「紅蓮魔獣ダ・イーザ」と併せて【焔聖騎士】での起用です。

 まず焔聖騎士は炎属性。さらに自前の展開力に加え「リビング・フォッシル」などでリリースも確保しやすいです。召喚権も残しやすいのでアドバンス召喚は容易でしょう。墓地リソースだけでなく除外リソースも利用できるカテゴリなため、②の問題点はクリア。

 ダイーザも同じく炎属性。除外されたカードの数だけ打点が上がるため、「ヘルフレイムエンペラー」自身の決定力の低さを補えます。召喚権は食い合いますが、ダイーザの方には召喚制限がないので、スカルデットや蘇生カードで場に出せば問題ないです。
 ダイーザの攻撃前の露払いと打点アップにつなげられることで③の問題点もクリア。

 そして同じ炎属性でありながら種族やレベルはバラけているので、「スモール・ワールド」さえ引ければ簡単にサーチが可能です。
 除外枚数を2枚増やせるのでダイーザの打点向上に繋がりますし、仮に相手が魔法罠を置かないタイプのデッキだった場合は「ヘルフレイムエンペラー」をコストにして必要な焔聖騎士を持ってこれる柔軟な動きも可能です。
 サポートが少なく層の薄いレベル9・炎族という個性が、マイノリティ過ぎてサーチしやすいという長所に変わります。これで①の問題もクリア。

 そして【焔聖騎士】と相性のいい、むしろエースな「ゴッドフェニックス・ギア・フリード」もコストで除外を行い、さらに「ヘルフレイムエンペラー」と同じレベル9。強力なランク9エクシーズも狙えます。
 モンスター効果の無効、破壊を伴わないモンスター除去と強力な効果を持ちますが、魔法罠には無力なのでその点も「ヘルフレイムエンペラー」がだいぶ心許ないですがケアしてくれます。

 そして最後に「炎王炎環」。対象破壊にされたときなどのサクリファイスエスケープにも使えますが、適当な炎属性を破壊して墓地の炎属性モンスターを蘇生できます。

 焔聖騎士を破壊してエクシーズ素材を揃えたり、「ヘルフレイムエンペラー」で魔法罠除去を行ったあとに墓地のゴッドフェニックスやダイーザと交代したり、バトルフェイズの追撃に使ったりと、意外と便利に働きます。

 【焔聖騎士】で普通に戦っていると見せかけて、奇襲的に「ヘルフレイムエンペラー」やダイーザで勝負を決めるデッキです。

相性のいいカード

 基本的に【焔聖騎士】デッキですが、「スモール・ワールド」を最大限活かせるよう、レベルと種族のばらけを意識して作ります。

・焔聖騎士 - アストルフォ
 普通の【焔聖騎士】デッキではハブられがち。とはいえリリース確保に自身の除外と相性がいい。効果は一度だけなのでピン差しで。

・キリビ・レディ
・焔聖騎士 - リナルド
・焔聖騎士 - オリヴィエ
・昇華騎士 - エクスパラディン
・チューン・ナイト
・超量士レッドレイヤー(2022/10/03追記)
・幻影騎士団シェード・ブリガンダイン(2022/10/03追記)
 展開からイゾルデにつなぐ。エクスパラディンはレベル3でダイーザとかぶるため、「スモール・ワールド」使用時に注意。さらに召喚権も使うのであえて搭載数少なくしてる。
 URで手に入らなかったレッドレイヤーが手に入ったので差し替え。召喚権を使わず、レベルもバラけてる(2022/10/03追記)

・アストラル・クリボー
 ダイーザと同じ悪魔族、一部の焔聖騎士と同じレベル1なので「スモール・ワールド」の中継もしくは始発点に。「ヘルフレイムエンペラー」のリリースにしたり、エクシーズ召喚サポートにも。
・百万喰らいのグラットン
 起用理由は↑と同様。こちらはピンでリリースにしたりアタッカーに出来たりできるので差し替え。(2022/10/03追記)

・溶岩魔神ラヴァ・ゴーレム
 炎属性の悪魔族なので同じく「スモール・ワールド」の中継もしくは始発に。ピンで手札にいてもあんまり困らない。

・金満で謙虚な壺
 ダイーザの打点向上とサーチの両立。制限になったのが惜しまれる……。

・No.9 天蓋星ダイソン・スフィア
・九魂猫
 汎用ランク9。除去系の効果はゴッドフェニックスや「ヘルフレイムエンペラー」、汎用リンクで事足りることが多いので、それ以外の効果のほうがこのデッキでは使いやすいかもしれない。

・No.92 偽骸神龍 Heart-eartH Dragon
 条件付きながら、ダイーザと同じく除外による打点アップ効果あり。とはいえこいつを正規エクシーズ召喚できる状況ならそのまま普通に殴って勝てる場合が多いので、「No.78 ナンバーズ・アーカイブ」で狙うか、ダイーザやゴッドフェニックスでも処理できない耐性持ち高打点が出てきた時用。

・トポロジック・ゼロヴォロス
 同じく除外による打点アップあり。リンク4なので出しづらいものの、展開力はあるデッキなので無理ではない。「ヘルフレイムエンペラー」と特別相性がいいわけではないので、あくまで奥の手として。(2022/10/03追記)

デッキ構築

 初手イゾルデは必須。あとはリソースを稼ぎまくり、「スモール・ワールド」で適宜必要なカードをサーチする。「ヘルフレイムエンペラー」は枚数増やしても事故るし、何度も使う効果でもないのでピン差し。
 「簡易融合」から「サウザンド・アイズ・サクリファイス」でレベル1&装備軸にしたり、レベル9サポートを追加してエクシーズに特化しても面白そう。

メインデッキ(40枚)
・焔聖騎士 - ローラン×3
・焔聖騎士 - リナルド×3
・焔聖騎士 - アストルフォ×1
・焔聖騎士 - オリヴィエ×2
昇華騎士 - エクスパラディン×1⇒超量士レッドレイヤー×3
チューン・ナイト×1
・キリビ・レディ×3
アストラル・クリボー×2⇒百万喰らいのグラットン×1
・紅蓮魔獣 ダ・イーザ×2
・溶岩魔神ラヴァ・ゴーレム×1
ヘルフレイムエンペラー×1
・ゴッドフェニックス・ギア・フリード×2
・ハーピィの羽根帚×1
・死者蘇生×1
おろかな埋葬×1⇒幻影騎士団シェード・ブリガンダイン×1
・増援×1
・ワン・フォー・ワン×1
・スモール・ワールド-×3
・金満で謙虚な壺×1
・D・D・R×1
・リビング・フォッシル×3
・『焔聖剣 - デュランダル』×3
・炎王炎環×2

EXデッキ(15枚)
・No.9 天蓋星ダイソン・スフィア×1
・No.92 偽骸神龍 Heart-eartH Dragon×3
・No.78 ナンバーズ・アーカイブ×1
・九魂猫×1
・聖騎士の追想イゾルデ×1
・リンクリボー×1
・トロイメア・フェニックス×1
・トロイメア・ユニコーン×1
・鎖龍蛇 - スカルデット×1
・トポロジック・ゼロヴォロス×1
・アーカイブor金謙用にランク9中心に適当なナンバーズ

 使用感はかなりいい感じ。さすがに環境デッキに勝てるとまではいかないものの、アドを稼ぎやすいので単純に強いです。患者がピン差しだから足を引っ張らないし。
 改良の余地もまだあるので、適宜詰めていきたいですね。

あとがき

 「ヘルフレイムエンペラー」を活かすことは出来たものの、メインに据えることは叶わなかったので、今後も研究を続けたいです。
 ストラクチャーデッキでそうであったように、堂々と看板を飾らせてやりたいですね。

 「暗黒恐獣」のデッキも完成したので、次回の医学会はこれで挑みたいです。こちらも我ながら自信作なので楽しみ。(記事は医学会後に公開します)

 さて次の患者の選定に移りますか。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?