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「氷岩魔獣」「灼岩魔獣」のカルテ(クソカード医学会用資料35)

まえがき

 「氷岩魔獣」「灼岩魔獣」は第3期第二弾のパック『ユニオンの降臨』で登場というかなり初期のモンスターで、当時唯一、後に登場した【ABC】を含めても非常に珍しい相互を装備先に指定できる変わったユニオンモンスターです。
 使い道の分からないクソカードというよりは使い道ははっきりしているけれど、OCGの環境変化のあおりもあり扱いづらくなったタイプのカードたちで、その独自性から独特で面白い動き自体は可能なため、治療というよりはリハビリの類になります。

 その個性的な特徴や、モンスターらしくかっこいい見た目に惚れ、一部に熱心な研究者もいるらしいこの2体。先行研究に敬意を払いつつ、私なりのデッキを構築してみました。

氷岩魔獣と灼岩魔獣について

 患者の性能は以下の通り。(出典:遊戯王デュエルモンスターズデータベース)

装備状態ならセットされた魔法・罠カードを破壊できるほう
装備状態なら表になってる魔法・罠を破壊できるほう
強制効果なのでこのカードしか表側魔法罠カードがないと自爆する

 相互を指定したユニオン共通の装備効果と魔法罠ゾーンからの特殊召喚効果、戦闘破壊の身代わり効果。そしてそれぞれ装備状態だと装備モンスターが戦闘ダメージを与えた際に、裏または表の魔法罠カードを破壊できるというもの。
 ユニオン共通の効果自体は良しとしましょう。
 魔法罠除去は役に立たないわけではないのですが、モンスター効果主流の現代ではいささか使いづらいと言わざるを得ず、しかも戦闘を介するので非常に遅いです。
 一方で、攻撃反応型の罠は採用が減っていますし、ダメージステップに破壊するため効果自体は妨害を受けづらいです。また、戦闘を行ったモンスターではなく、あくまで装備カード(状態のモンスター)の効果なのでモンスター効果無効も効きません
 主流からは外れてしまっているものの、効果自体はまだ使いようはあるというところ。

 じゃあ何が問題かというと、まずはやはり打点不足でしょう。
 「クリッター」やリクルーター対応なのはいいのですが、攻撃力1500で戦闘ダメージを与えるのは流石に厳しい。また、装備状態になっても装備対象の攻撃力を上げたりはしないですし、モンスター破壊効果やデバフ、直接攻撃効果なども持っていません。
 繰り返しになりますが戦闘を介する効果自体が現代では遅いため、その上で打点不足なのはなかなか致命的といえます。
 さらに、打点強化と言えば装備魔法ですが、「氷岩魔獣」「灼岩魔獣」は相手のフィールドの状況によってお互いで装備状態をスイッチできるというのが強みなため、その際に装備対象不在で破壊されてしまう装備魔法は頼りづらいです。

 次に、属性・種族などの共通点を持たない点がやはり問題となります。
 そもそもその"正反対の属性を持ってる相互ユニオン"というコンセプト自体が氷灼の魅力ではあるのですが、サポートするにはかなり面倒です。
 汎用の属性サーチ・リクルートを入れる場合はシナジーのない炎属性、水属性のカードをそれぞれ投入する羽目になりますし、「スモール・ワールド」では消費が大きい。先の打点問題においても、属性対応フィールド魔法や「一族の結束」は使用できず、候補に上がるのは強化にはやや弱い「オレイカルコスの結界」等わずか。

 最後に展開力も問題になります。
 ユニオンの特性上、場に2体が揃わないと真価を発揮しないのですが、手札やデッキからの自己特殊召喚効果などは当然持っていないので、別途展開手段を用意しなければなりません。
 ユニオン共通サポートの「前線基地」を用いれば2体を並べるだけなら可能……しかし、「前線基地」を引けている確率や、2体を並べた後のことを考えると、もういくつか展開手段がないと手数が足りずそのまま押し切られてしまいます。

 問題点をまとめると、
①打点が低い
②お互いの属性種族が違うためサーチ・リクルートが難しい
③展開サポートがないと安定しない
 元々は"使うにはクセがある"程度だったのが、時代の流れによって使いづらい部分のみが目立っていった格好。
 どうにかしてあげたいですね。

 さてさて、一つずつ丁寧に問題点を解決していきましょう。
 まず、問題点①の打点ですが、装備魔法には頼りづらいですし「オネスト」などには対応していない。となると、永続魔法・罠、フィールド魔法で強化することになるのですが、属性種族問わず強化できる「オレイカルコスの結界」はEXデッキが使えなくなるのがしんどい。
 ではどうするか。逆に、属性が違う点を活かせないかと考えました。
 「ダーク・ドリアード」は自分フィールドの地水炎風属性モンスターを、属性の数×200強化できます。
 氷灼を並べると400アップ。片方を装備すると下がりますが、ペンデュラムモンスターなのを活かし、他の属性のモンスターも展開できる構築にすれば打点は大きく上がります。

ペンデュラムモンスターなのでエレクトラムなどでサーチ可能

 同じく、「霊神の聖殿」も相性がいいです。こちらは墓地のモンスターの属性の数を参照して強化可能。「ダーク・ドリアード」とともに並べれば3000打点越えの「氷岩魔獣」「灼岩魔獣」も夢ではありません。

エレメントセイバーのサポート効果は無視

 次に問題点②である属性種族の違いによるサーチ・リクルートの難ですが、"ユニオンモンスターである"という共通点を活かします。
 無理に汎用に頼らず、個性を活かせばいいのです。
 「ユニオン格納庫」で「Bーバスター・ドレイク」をサーチ、そのまま召喚して「ユニオン・ドライバー」を装備。「ユニオン・ドライバー」の効果で2枚めの「Bーバスター・ドレイク」を装備し、効果で特殊召喚。2体の「Bーバスター・ドレイク」を素材にリンク召喚することで、手札に一気に「氷岩魔獣」と「灼岩魔獣」をサーチできます。

 最後に問題点③の展開手段をどうにかすれば氷灼のリハビリは完了。
 ここまでの過程を加味して最適な展開ルートを模索した結果、そのデッキは完成しました。

氷灼軸多属性ユニオン

 先の「ユニオン格納庫」初動でのサーチにおいてリンク召喚を行いますが、ここで手札にレベル4モンスターが1枚あれば「武神姫ーアハシマ」をリンク召喚でき、アハシマの効果⇒バスター・ドレイク1枚目の効果⇒バスター・ドレイク2枚目の効果でチェーンを組めます。

 手札のレベル4モンスターが機械族ならそのモンスターと墓地のドレイクで、氷灼のどちらかならドレイクの効果で3枚目のドレイクをサーチして「ギアギガントX」をエクシーズ召喚できます。

 「ギアギガントX」でサーチするのは「音響戦士ギータス」。ギータスのペンデュラム効果で「音響戦士ドラムス」をリクルート。
 アハシマとドラムスで「ギガンティック・スプライト」。(ここで手札に「ヴァリアンツVーヴァイカント」がいれば特殊召喚)

属性変更効果もこのデッキなら活きる

 「ギガンティック・スプライト」で「ヴァリアンツの巫女ー東雲」をリクルート、東雲ちゃんの効果で「VVー真羅万象」をサーチ。

 ヴァイカントがいるなら東雲ちゃんとリンク召喚で「ヘビーメタルフォーゼ・エレクトラム」を出し、「ダーク・ドリアード」をEXデッキへ。「ユニオン格納庫」を破壊して手札に加え、「ギアギガントX」と「ギガンティック・スプライト」で「I:Pマスカレーナ」を出し、相手ターンに備えます。
 ヴァイカントがいない場合は「ギアギガントX」と東雲ちゃんで「軌跡の魔術師」をリンク召喚し「ダーク・ドリアード」をサーチするか、「I:Pマスカレーナ」で相手ターンに備えるかのどちらかになります。

 この展開で手札に「氷岩魔獣」「灼岩魔獣」「VVー真羅万象」、サーチできていれば「ダーク・ドリアード」が揃い、墓地には少なくとも光地闇風属性のモンスターが落ちていることになります。

 次のターンを無事に迎えられればギータスから「音響戦士マイクス」をリクルートし召喚権を増やしつつ、「VVー真羅万象」でギータスを特殊召喚。「ダーク・ドリアード」で打点の上がった氷灼が場に並びます。
 「VVー真羅万象」で相手の場に置ける「VVー百識公国」は相手のメインモンスターゾーンのモンスターを、魔法罠ゾーンに押し込めるので、破壊耐性持ちであっても「灼岩魔獣」の効果で割ることが可能です。

相手も使用できる。
もし氷灼が狙われた場合は「フォーメーション・ユニオン」でかわせる……かも。

 あとは「コンビネーション・アタック」でとどめを刺せれば理想的ですね。

これでフィニッシュするのが全氷灼使いの夢

 属性もテーマも種族もバラバラなABC、音響戦士、スプライト、ヴァリアンツ等から少しずつ助っ人を呼び「氷岩魔獣」と「灼岩魔獣」のコンビネーションに全振りする、多様性と絆を尊重したある意味でのグッドスタッフデッキ。
 これが【氷灼軸多属性ユニオン】です。

相性のいいカード

 水属性のみ墓地に落ちにくいので、その点は何かしら改良するかも。

・「フォーメーション・ユニオン」
 相手ターンに装備状態にして対象効果をかわしたり、バトルフェイズに装備状態にして「コンビネーション・アタック」につなげたり、逆に装備状態を解除して追撃したり。無理に入れる必要ないかも。

・「惑星探査車」
 召喚権を使うものの、「前線基地」があれば「ユニオン格納庫」初動に繋げられる。地属性で機械族のレベル4なのも嬉しい。

・「テラ・フォーミング」
・「おろかな服装」
・「救いの架け橋」
 フィールド魔法サーチ。初動のために「ユニオン格納庫」を持ってくるだけでなく、格納庫がすでにある場合は「霊神の聖殿」を持ってこれるので無駄がない。架け橋は手札に来てもギータスで処理可能。

・「ゲットライド!」
 正直、このデッキだとあまり使い所がないんだけど、4大ユニオンサポートカードでこいつだけハブるのも……というわけで採用。一応、除去られた氷灼を吊り上げたり、捨てた「ユニオン・ドライバー」を装備してサーチにつなげたりはできる。抜いてもう1枚「ダーク・ドリアード」入れたほうが良い気はする。

・「ダーク・リベリオン・エクシーズ・ドラゴン」
・「No.41 泥酔魔獣バグースカ」
 「氷岩魔獣」「灼岩魔獣」を使うデッキではあるものの、どうしようもならないときに使う。バグースカはなんと、氷灼と同じく"魔獣"モンスターである。どうでもいい。

・「召命の神弓ーアポロウーサ」
 単純に汎用として採用……ではなく、風属性なので「ダーク・ドリアード」対応。打点が上がると無効回数も増え、モンスターに無力な氷灼をカバー可能ととことん相性がいい。ただ氷灼を残しつつ素材4用意するのはやや大変。

・「アンダークロックテイカー」
 相手の打点を下げられるので、氷灼で戦闘破壊が楽になります。それだけ。汎用リンク2なので、なんか墓地に送りたいときにとりあえず使う的な。ただし「霊神の聖殿」があると効果も活きる。

デッキ構築

 運用方法は上記の通り。こういう展開を考えるのはあんまり経験ないので楽しかったですね。
 普通のデッキなら特別な理由がない限りとりあえずで「ハーピィの羽根帚」は採用しているんですが、このデッキは氷灼の効果を尊重して(?)採用していません。代わりに「サンダー・ボルト」が入ってますね。

 使用感は、必要なカードを集めるまでは特に問題ないのですが、そこから相手にターンを渡してからが課題ですね。
 どうしようもならなくなって結局氷灼をバグースカやサロスにしちゃうことも……。これに関しては古いカードが軸な以上どうしようもないか……。
 デッキの重症度は3です。

 実績。相手事故ってたけど。

あとがき

 「氷岩魔獣」「灼岩魔獣」そのものも、そのデッキも、使ってみると非常に面白いなというのが感想ですね。他属性の岩魔獣も出してカテゴリ化しないだろうか。

 第10回クソカード医学会のミラールームで、調整のため数戦使用しました。やはりサーチまではどうにかなるものの、相手ターンをしのげずというのが辛いですね。絶望的な盤面で氷灼を素材にサロスを出すか悩んだりもしましたが、医学会なんだしそれはダメだろと。
 でも楽しかったので、歴代治療デッキでもお気に入りの一つになりそうです。

 次回は「天よりの宝札」改良版の予定。
 今回ユニオンだったので、デュアルやトゥーンの患者も診てみたいですね。スピリットは……前に「雷帝神」とかいう問題児をやったので……。あれももっとどうにかしたいところですけど、まったく思いつかない……。

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