あっけない。
人生はあっけない。
だから、たまに生きる価値を見失いそうになる。
1人の内定者がいる。その裏で、あっさりと祈られた人たちの存在を、僕たちは知らない。
あっけない。
1組のカップルがいる。その裏で、涙を飲んだ人たちの存在を、僕たちは知らない。
あっけない。
1人の死人がいる。その裏で、伝えたかった想いを一生伝えられなくなった人たちの存在を、僕たちは知らない。
あっけない。
内定者も、祈られた人も、恋人たちも、振られた人も、死んだ人も、残された人も、みんな悪くない。
みんな悪くないから、もうどうしようもない。
人生は、喜劇にしては辛いことが多すぎるし、悲劇にしてはあっけなさすぎる。
人生には、絶対的な善人も、絶対的な悪人もない。
人生には、絶対的な善意も、絶対的な悪意もない。
運命も、伏線も、演出もない。
どんなに悲しいことがあっても普通に地球は回るし、普通に朝が来る。
神様は、僕たちの人生をドラマにしてはくれない。
神様がその気なら、自分が自分の人生をドラマにすればいい。
嬉しい時は喜劇の主人公ぶって心の底から笑えばいいし、悲しい時は悲劇のヒロインぶって心の底から泣けばいい。
その辺に落ちてる恋を、運命だと思って抱擁すればいい。
理不尽な困難に意味を見出して、伏線として後から回収すればいい。
どこにでもある道を、ランウェイだと思って歩けばいい。
人生は、観客のいないドラマだと思う。
神様も他人も、自分の人生にそこまで興味はない。
自分が満足するドラマを演じ切れればそれでいい。
演出:自分。脚本:自分。演技:自分。監督:自分。
はじめからドラマになっている人生はきっと、つまらない。
人生はあっけない。
だからこそ、生きる価値がある。
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