「お茶出し」いらなくない?

今の会社に転職して2ヶ月が過ぎた。その日は社外のお偉いさんが当社に集まる日で、ふと同僚のスケジュールを見ると、そのお偉いさんたちへのお茶出しと入っていた。

その単語を久しぶりに目にして、胸がざわついた。

私が働いていた銀行では、お茶出しは「1番下っ端の女性」の仕事だった。
1年目の私はなんの疑問も持たず、上司が応接にお客様を通すのを見かけたら即座に給湯室に直行し、笑顔でお茶を出すのが下っ端でもできる立派な仕事だと思っていた。
時が経ち法人営業になってから、主な顧客である中小企業に訪問すると年齢も様々な女性がお茶出しをしてくれた。若い女性の時もあれば、年配の女性もいる。ただ、絶対男性であることはなかった。その時になんとなく、なんでお茶出しって女性がすることになってるんだろうなぁと思うようになった。

まぁ中小企業の場合は人員も少ないしそもそも事務をしているのがほぼ女性なので必然なのかもしれない、と思っていた。

しかし、3年目になって事務に戻り再び私は「1番下っ端の女性」となった。そして同時に、男の子の後輩ができた。

出戻りの事務とはいえ1年目の後輩くんよりはそれなりに忙しく、電話に出ていたり接客中だったりでお茶出しをできない時があった。そういう時は他の女性(だいぶ年上の先輩)がやってくれていたが、その時はたまたま誰も手が空いていなかった。

後で上司に怒られかねないので、内心焦りながら仕事を終え給湯室に向かうと、後輩くんが教えてもいないのにお茶を準備してくれていた。

「ごめんね、やらせちゃって」
「全然いいですよ。これ、どうやってやるんですか?」

彼に簡単なやり方を教えてから私が持っていこうと思っていたけど、彼はさも当然のようにお盆を持って応接室に入って行ったのだった。

その時は、「男の子にお茶出しをやらせたなんて女性の先輩や上司に知られたら、後で私が怒られるかもしれない」なんて自分のことしか考えられなかったのだが、戻ってきて「緊張した〜」なんて笑っている彼を見ているうちに「私も、女性にお茶出しを期待する彼らと同類の人間なのだ」と気づいた。

新社会人の頃に「お茶は女性が出すもの」という固定概念を植え付けられて、それが当然だという風潮に逆らう勇気がなかった。だから当たり前のように後輩くんにはお茶出しを教えなかった。けど後輩くんはどうやらその仕事は女性がすることになっているようだと理解したうえで、自ら考えて行動してくれた。それに比べて私は、彼にお茶出しを教えないことで「これは女性の仕事だよ」と態度で教え、自分で嫌だと思っているにも関わらずその忌まわしき風習を受け継いで行こうとしていたのだ。

考えてみたら、手が空いてる人が代わりに仕事をしてくれる。それってすごく自然なことじゃないか。彼がそこまで考えていたとは思わないけど、そう教えてくれたような気がした。

元々女性がお茶出しをするようになったのは、社内で雑用をする人がほぼ女性だった名残だと思う。そしてお茶出しをする相手もまた男性だったため、お茶を出す人は女性の方が印象が良かった、という経緯は理解できる。

でも今は違う。女性も男性と同じように働いてる。お茶を出す相手も女性になったから、「女の子が出すお茶は美味しい」なんて昔のおじさんの常套文句も通用しなくなる。

第一お茶なんてペットボトル出しときゃ良くない?なんでいちいちお湯注いで溢れないかハラハラしながらお盆に載せて運ばせるん?コスパとか言う前にその手間考えろよ??めちゃめんどくせーからな?????

なので私はお茶出しに対しては、その場所に居合わせるべき人(応接なら応対する人)がペットボトルを渡したら、それでいいじゃん!と提唱したい。なぜそのためだけに通常業務を放棄して同僚がお茶を出すためだけにその場所に居合わせなきゃいけないのかがわからない。

このペットボトル案は銀行時代に所以があり、コロナのお陰で勤めていた銀行もお茶出しが禁止になったのだが(パートのお姉様方と手を取り合って喜びの舞を踊った!!!)、本社のお偉いさんが支店にやってきて接客をする時に「お茶を出せ」と言ってきたことがあった。その時に支店長がそこらへんの自販機で買ってきたお茶を自ら出しに行っていて、この人の部下でよかったと思ったのだ。そうじゃん、これこれ。それが良いよって。

そういえば、転職活動中に1社だけ若い女の子がお茶出しをしてくれた会社があって、それが理由で選考辞退したこともある。自分がやるのが嫌なだけではなくて、そういう会社の雰囲気がやっぱり好きじゃない。

流石に今の会社はお茶出しをする場面は極端に少ないので(年に1回くらいだと思う)、こんな会社辞めてやる!とはならないけど‥やっぱり女性の総合職が少ない会社だから、そういう雰囲気が残っている。それを承知で入社したものの、これからどうやってその雰囲気を変えていけるか。私の働きぶりも多少影響があると思うので、頑張らないとなぁと思った。そして隙あらば上司にお茶出し廃止案を出したい。それを密かな目標に掲げて頑張ろうと思う。

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