監査請求しました:湖南市政倫審で、市の顧問弁護士は審査してよいか?

(※3月24日一部修正しました。規則の条番号を正しました。)

湖南市職員の行為につき監査請求しました。

何の件かと言いますと、政倫審の件です。以前、以下のエントリで書いた件。

選挙ビラでの「代筆」の問題点? 湖南市政治倫理審査会にかかる案件について 

市議選の候補者が選挙ビラで、市長のメッセージを「代筆」していた、という件です。これについて市の政倫審で審査されております。

 この議論に加わっている弁護士さんが、市の顧問弁護士のようなのです。さあそれでよいのか。

 顧問弁護士ということは、湖南市の事務について助言をしたり、訴訟になったら代理人になったりして、市の弁護をする立場ですよね。だから、湖南市の事務に過失があったと思われるような事態は、顧問の業務からして、困るわけです。湖南市の事務は正しかった、と言いたくなりますよね。

 政倫審での審査の対象は候補者の選挙ビラで「代筆」する行為なのですが、立候補予定者に対しては湖南市選管(事務局は総務課)が説明会などで説明をしております。その中で、例えば選挙ビラに虚偽事項は書けないなどと説明されておりました(私も出席していたので知っております)。しかし「代筆」の可否について明確に説明はされておりませんでした。

 ですので、もし政倫審で、この件の「代筆」は悪いことであった、という結論になりますと、湖南市選管が「代筆」について明確に適切に指導・説明しなかったのではないかと、その責任が問われる可能性が高まります。湖南市選管としてはそれは困ります。市のサポートをしている顧問弁護士としても、それは「不利」なわけです。

 というわけで、市の顧問弁護士は、この件で最初から「この選挙に問題はなかった」という結論を出すインセンティブを有することになります。政倫審で中立的な立場に立つべきだという務めと、顧問弁護士という業務との間には、利益相反が生じますよね。

 政倫審では中立性が重要なんです。実際、湖南市政治倫理条例施行規則第6条第7条で、利害関係のある委員が審査に加われない旨が明記されています。これは他の機関、例えば情報公開審議会には見られない規定です。

 なぜ政倫審では中立性が大事なんでしょうか。それは、政倫審の本質的な機能が、

「なるべくみんなが納得できるやり方で、議論を尽くしてくれる」

ということだからだと考えます。

 政治倫理審査会というぐらいですから、政治倫理について判断してほしいわけですが、でも政治倫理って、「法律」のように明確に一意に定まるようなものじゃないですよね。明確ではないから、議論する人・状況によって、結論の振れ幅は大きいかもしれません。そうであると余計に、議論のプロセス・手続きがみんなの納得のいくもので、公平・中立・透明だとみんなが信じられるものである必要性が高いと思います。

だから、政倫審では、議論の過程で「中立じゃないのでは?」と思われる側面が少しでもあると、本旨を損なうことになってしまうでしょう。

 今回の件で審査の対象になっている森淳議員にしても、政倫審で「今回の選挙ビラの『代筆』に問題なし」と結論づけられても、そこに市の顧問弁護士が入っていたなら、「顧問弁護士が入っていたので、市選管の責任が問われないように『問題なし』と言われただけで、本当は問題があると結論づけられるべきだったんじゃないの?」とのちのちまで言われ続ける可能性があるわけです。それは森議員にとっても全く不本意でしょう。

 そんなわけで。

この件での、顧問弁護士の政倫審での報酬は、支払うべきでない、と監査請求しました。

書面の一部を以下に引用します。

(※下記書面を3月18日に補正して提出しております。補正した点を以下でも示しています。)

  2022年1月以降に開催されている湖南市政治倫理審査会において、2021年10月の湖南市議会議員選挙における候補者の選挙ビラに関する行為について審査がなされているところです。この審査に、同審査会委員として、湖南市の顧問弁護士である古川麻里恵氏が加わっています。
 湖南市の選挙管理事務を含む事項に対して、顧問弁護士は助言する立場であり、また、湖南市に対し、選挙管理事務に関する賠償請求等の訴えがなされた場合には、顧問弁護士は代理人を務めることが予定されます。政治倫理審査会において、湖南市議会議員選挙における選挙ビラに関して瑕疵があると判断されると、候補者への説明・指導を含む選挙管理事務をつかさどった湖南市の責任が問われる可能性が高まります。すなわち、湖南市の顧問弁護士が、政治倫理審査会において、湖南市の選挙管理事務の適法性・適切性が関係する審査をするならば、利益相反が生じることとなります。
 以上のような利益相反への対処のために、湖南市政治倫理条例施行規則第6条第7条は委員の除斥を定めています。古川氏が上記の審査に加わることはこの規定に反し、違法または不当です。
 湖南市職員(おそらく総務課職員)は、この違法または不当な委員の審査を許容し、その報酬に相当する湖南市の債務をすでに生じせしめたか、今後生じせしめることが相当の確実さをもって予測されます。この報酬の支払いは違法または不当なものですから、湖南市の公会計上の損害となるものであり、また、この報酬によって古川氏が当該審査に参加することは、上記の政治倫理審査会の審査結果への市民の信頼を失墜させ、もって湖南市の政治行政機構の機能を低下させるという損失を生じさせます。さらに、これを容認してしまうと、職員における条例規則の違法または不当な運用が助長されかねないという意味でも湖南市の損害となります。
 以上の理由から、本件の報酬の支払いについて、事前に差し止めるか、または、取り消して返還させる等の措置を求めます。

 さあどうなるか。。。

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