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異世界ジャンプ 修行中 lesson1

そう、だれがどう見たって道場。しかも板張りだね。ということは剣道ですか。さっき、なんかいってたよね、能力なんとかプログラムでしたか。つまりあれだ、ここで剣技を磨けと。そういうことか。

なんとなく分かたっつもりでいると、眼の前の空間が不自然に揺らぎ始めた。しかも徐々に黒っぽくなっていく。変な言い方だけど、小さなブラックホールがあるとしたら多分こんな風に見えるんじゃないかな。

ってことはだこのブラックホールから何かが現れる。そういうことかって、待てよいきなり魔物とか、魔物とか。それはまずいだろ。突然、ブラックホールの闇の中から。耳をつんざくような甲高い吠え声が湧き上がった。逃げようにも、足がすくんで動かない。ダメッだ、死ぬんだ、2回目だけど。
ブラックホールのゆらぎが止まり、色合いも周囲に溶け込むように薄れた中から何者かが現れた。

魔物じゃなくて、魔族?いや人間?なんとなく見覚えがある、黒のカンフーウェア。人懐っこそうな東洋系の顔立ち。を身に着けた男が現れた。
あれだよ、あの人だよ。なにこの意外性!左の手のひらで右の拳をホールドする例の挨拶。おお〜っ本家だよ。ブルース・リーが現れた。全世界数億人の永遠の少年たちのアイドルじゃないですか。と感動を覚える間もなく腹部に衝撃が走った。

ウプッ。急激に呼吸が苦しくなった吸い込もうと思っても空気が入ってこない。苦しさに目をつむった。ウッ今度は脚だ、左の太ももをしたたかに蹴られた。あまりの痛さにひざまずきそうになると、今度は背中に衝撃。また呼吸が苦しくなる。リーの口が動いた。Don’t think. feel!おなじみのあのセリフだ。

あとはもう次々とでたらめなまでの衝撃の連続。でもなんか変だ。パンチやキックの衝撃や瞬間的な痛みはあるのだが。不思議と後を引かない。頭部への打撃もなぜか脳震盪ということにはならない。それどころか予測もつかなかった技や目が追いつかなかった攻撃も、徐々に慣れてきた。リーの動きが突然スローモーションになった。今度はオレの動きにリーがついてこれない。おなじみのあのステップでリーを挑発してみる。あっ目が怒ってる。本気だよこの人。ドラゴン怒りの鉄拳じゃ敵役だったしな日本人。おっきた〜。でも動きはゆっくり。つぎつぎと繰り出す(だけどゆっくり)攻撃を余裕で躱して。こうなったらあれだな。手のひらを上にして指先をクイクイ。そう「ドラゴンへの道」で有名になったあのポーズだ。怒りにゆがむリーの顔。でるか怪鳥音。吠えろ!ドラゴン 起て!ジャガー。おぉいい感じぃ〜。とそこで声がかかった。

「はい〜。お疲れ様です。トレーニング1ステップ終了です」もうおなじみになった例の声。今度はが妙に明るい調子だったのは気のせいだろうか。
「だいぶ覚醒してきたみたいですねぇ。次はあれですね、レベルアップしちゃいますよ」

さっきがブルース・リーだから、レベルアップってことは、マイク・タイソンとか、まさかアンドレ・ザ・ジャイアントってことはないよな。
「はい、次のお相手はまっお楽しみってことで。ってか、なんか変だなって思いません?」いわれるまでもなく思っている。

「あのさ、途中でリーさん急に調子が悪くなったみたいだけど、あれなに?」
「あ〜ぁ、アレね。あれ向こうが調子悪くなったんじゃなくて、あんたがレベルアップしたの」
「いや、途中からっておかしいでしょ」そうだよ、こんなのゲームの中でもないだろ。

「あ〜ぁやっぱりまだそうなんだ。あなたね、もうやめたほうがいいですよ。その前例が無いことは認めませんみたいな公務員的発想」いきなり指摘されてしまった。

そう、自分でも気づいてはいたんだ。どうやらそのあたりが生前?からの自分の問題点だと。営業成績が今ひとつ伸びないこととも、関係があるのだろう。だけどだ、仕方がないじゃないかそれは。

「仕方ないなんて言ってたら、進歩ていうか、何事も前に進めないでしょ」いうね、どうにもきついこと。
「ほら、それ、その態度」なんだコイツは、オレの上司か、いや指導教官か、担任教師か、それとも親だってのか。
「せっかくっていうか、リアルに生まれ変わったんだから、ここはほらっ生まれ変わった気持ちってやつで。ひとつその」妙に日本人的というか外見に似合わず世慣れた感じだなぁ。まぁいいや。

「わかったよ。じゃこっちもその気でと。次はだれ?」
「そうね、ではご要望に応えて」
また世界が変わった。今度はなんだ?

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