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A(Art)でもS(Science)でもない、M(Money)の話をしようー法務部とお金

2024年1本目の投稿を失礼いたします。本年もどうぞよろしくお願い申し上げます。

私事で恐縮ですが、2023年末をもちまして12年間続けて参りました企業内弁護士のキャリアに終止符を打ち、2024年1月1日、港区赤坂に赤坂檜町法律事務所を独立開業いたしました。今後は法務部やインハウスロイヤーの機能、役割について、より広い視点で考察を行って参る所存でございますので、引き続きどうぞよろしくお願い申し上げます。さて、何を隠そう、新春一発目は、法務部とお金の話でございます。

お金といえば当アカウントは、以前より法務部の重要アイテムの一つとして大注目しております。実に2021年9月に記事「外部法律事務所のコスト管理について」をこのnoteに投稿してから2年が経過いたしました。その後、2022年1月に日本版Legal Operations CORE 8 EVENT Report(以下「CORE 8 Report」)において予算の問題がLegal Operationsのフレームワークの一つとして取り上げられた他は、日本における法務部の予算に関する議論は大きく進捗していないとの認識でおります。CORE 8 Reportは、法務部の予算は従前あまり論じられてこなかったという現状認識を前提に、法務部門独自でどの程度裁量が効く予算を有しているか、次は法務部門の活動・機能とどの程度結びついて予算策定・管理がなされているか、本社法務部門が他国法務部門の予算に対してどの程度関与しているか、など、予算の問題をいくつかの論点として切り分けて整理した上で、予算自体というより法務部門の機能・役割に見合った適切な予算が策定・運営されていることが重要であるとして、現状の評価を含めて今後の議論に期待したいとしています。

法務部が予算について論じることにはどのような意味があるのでしょうか?この点について、Reutersの記事”Drafting a law department budget"は、この問題に対して一つの考え方を示しています。記事はまず、法務部のセグメント毎、費目毎のコストを把握することで、法務部の強み、弱みがわかるとしています。例えば、平均値との比較により効率性が高いセグメントが判明したり、外部法律事務所のフィーが予測を上回っていれば、コスト管理が弱点であると判断できるとします。さらに、予算策定の過程で検討される数値、例えば、離職率の把握により、職場のカルチャーの問題を把握できると指摘しています。その上で、記事はコストセンターと見られている法務部が予算を策定することで、効率や生産性の向上により組織全体に対する付加価値を示したり、戦略的な貢献度合いが高まるとして、法務部が積極的に予算の策定に取り組むことの意義は大きいと強調しています。例えば、人員コストの解像度を高めることで採用方針を再検討したり、外部法律事務所の起用の際のコスト削減への関与を強めることでプロジェクトマネジメントへの貢献を拡大したり、他部門との効率的な業務分担や連携フローを策定することにつながると指摘しています。

法務部の人員は言うまでもなく皆優秀です。それが故に、A(Art)やS(Science)の話をしがちで、どうしてもM(Money)の話は忘れられがちではないでしょうか。しかし、M(Money)の話こそ積極的にすることで、AとかSに終始するよりも、結果的に法務部の組織への貢献度を高め、より大きな付加価値を生み出すことができるかもしれません。

以上2024年独立開業一本目の記事でございました。Mの話、今後とも追求していきたいと考えております。

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