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オオカミと戯れる午後 (Krentz Modulatorレビュー)

コントラバスにウルフトーンはつきものですね。世の中には「よく鳴る楽器はウルフも強い」という通説もありますが、どうなんでしょう。とにかく、新しくウルフ対策器具「Krentz Modulator」を導入してみたので、紹介記事を書いてみることにします。

Krentzとはドイツっぽい名前ですが、アメリカの会社。僕が住むヨーロッパにはチェロ用モジュレーターは代理店があるみたいですが、ベース用は直接彼らに注文して送ってもらう必要がありました。さてそこで6月2日に注文したんですが、3週間経ってもロサンゼルスで荷物が止まっている・・・。Krentzに問い合わせたところ、イタリア行きの荷物には遅れが発生することが多いと・・・。7月半ばまで動きがなければ、紛失したとみなしてもう一個送ってくれるとの対応。残念ながら出てこず、新しく送ってもらい、今度はすぐに届きました。決して彼らの責任ではないのに、誠実な対応に感謝です。

厳重すぎるように思われた梱包
オシャレだが無駄が多いように見えたが、実は・・・

現物は、親指ほどの大きさのチューブ。それに対し、梱包が大げさすぎる気がしたんですが、箱から出して納得。そう、強力な磁石が使われているのです。これをサイズそのままの梱包にしたのでは、周りに引っ付きまくってしまう。注意書きにも「心臓ペースメーカーを使用してる方はご注意ください」とまで。

いよいよ装着。付属の説明書には

①楽器を横板を下に置き、fホールから中にモジュレーターを落として、横板から表板まで磁石で引っ張ってくる方法
②裏板を下に置き、付属の装着ツールを使う方法

の二種類が提案されています。僕は楽器の中に物を放り込む勇気が無かったので、②を選択。①はベースの中を転がすので、ホコリなどが付くと思われ、お勧めしません。

「装着ツール」という立派な名前の、ただのフェルト付き針金
近くに外側の磁石を用意し、fホールに垂らす
最後までfホールに入った状態で外側の磁石を表版に滑らせつつ近づけると、勝手に引っ付く

これで装着は完了。

まずは、彼らが言う「オフ・ポジション」へ。ここだと影響は最小限らしい。

角に近づけすぎると内部に木のブロックがあるので磁石が効かなくなり、中のモジュレーターが落下する危険性があるので注意!

説明書によると、まずは上下に動かして音が良くなるポイントを見つけ、

表板の繊維方向に動かし、鳴りが良くなるポイントを見つける

その後左右に動かして、ウルフが消える位置を見つけましょう、とのこと。写真の楽器『赤』はA線のA♭にそこそこのウルフがあるのですが、この辺(下の写真)がベストっぽい。ウルフは無くなり、音も良い。

本当はホールで試したいけど・・・。とりあえずこの位置がベストっぽい

左右に動かすとき、基本的には楽器の内側(テールピースがある方)に行くほどウルフキラーの効果が強いとのこと。

ここで僕が犯したミスをご紹介。表板の裏で駒の足の下を上下に通過している「ベースバー」の存在を失念して内側に動かし過ぎてしまい、外部磁石がベースバーの上に差し掛かった時点で中のモジュレーターが落下しました・・・。幸い低い位置で試していたのでダメージは無く、装着方法①の要領で回収できましたが、冷や汗をかきました。まぁこの失敗により、「横板を転がすとホコリが付くので良くない」という知見が得られたわけですが。

外側の磁石を動かしてると楽しくなってしまうのですが、楽器の内部構造(ベースバー、ブロック、割れ修理のパッチなど)に常に注意しましょう

もう一本の楽器『黒』は、こいつのためにこのアイテムを買ったほど強力なウルフがA線とD線のA♭にあります。こちらも試しましたが、どれだけ内側(ベースバーギリギリ)に設置しても、A線のウルフを完全に消すことはできませんでした。しかしウルフが少し移動し(GとA♭の間)、かなり弱くはなったので、実用に耐えるレベルに改善されました。響きの減衰も無いようなので、まずは満足できる結果です。

こちらのアイテム、たしか発売当初は「ウルフ・エリミネーター」という名前で売り出していたように思うのですが、今の商品名である単なる「モジュレーター」としたのは、ウルフ対策よりも楽器の響きを調整する機能を主眼に置いているのだと理解できました。僕の試した限りでは、しっかりウルフを消したいだけなら、従来のウルフキラーの方が有効なようです。

『黒』に装着しているウルフキラー。ウルフは消えるが響きも減る

結論として、楽器それぞれで効果の程は様々なようですが、少なくとも改善こそすれ症状が悪化することは無いようです。モジュレーターの位置で楽器の響きが大きく変わるのはエキサイティングな体験ですし、これは買って良かったと自信を持って言えます。なにより手軽に自分で「調整」できるというのが、僕のようなこじらせ人間には魅力です。笑。安いものでは無いですが、ウルフにお悩みの方は是非お試しください!


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