相棒はV ~受肉したVアバターで殴り合う~③

神官が壁際でシロクマ男に追い詰められている。

シロクマ男が鋭い爪を振り下ろす。

神官「きゃっ……!」

神官は前方にダイブしてぎりぎり回避し、這いつくばるように逃げようとする。
シロクマ男はそれを目で追う。

そして、再び、猛スピードで距離を詰め、爪で攻撃を加えようとする。

神官「見えざる神の加護インビジブル・シールド!」

透明な障壁バリアが発生し、シロクマ男の進行を阻害する。
その間に再び、神官は必死にシロクマ男との距離を取る。

神官「ありがとうございます……!」

神官は自分自身にお礼を言う。

バリーン!!

神官「っ……!」

シロクマ男が障壁を粉々に破壊し、再び、接近してくる。

神官「ごめん……もうダメかも……」

神官、焦りの表情。

神官「そんな……こちらこそ……」

神官、切なそうな表情。

その間にも、シロクマ男が更に接近し、急加速。
右腕を振りあげながら、突進してくる。

神官は思わず目を瞑る。

が……

ガキーンという音がする。

神官「え……」

神官は恐る恐る目を開けると……
突如現れたシキがシロクマ男の爪を大剣で止めている。
※神官視点でシキの背中が見える感じ。(体格的にはシロクマ男の方が大きい。)

シロクマ男は攻撃が止められたことに驚いている。

シキが大剣を横に振り、シロクマ男はとっさにバックステップで回避する。

シキはそれを黙ったまま追跡し、そのままシキとシロクマ男の戦闘が始まる。

シキが大剣を縦に振り下ろす。

シロクマ男は一瞬、腕で止めようとする。
しかし、自分が縦に真っ二つになるイメージに襲われ、咄嗟に横に回避する。

シロクマ男「がぁああああ!!」

シロクマ男は咆哮しながら、シキに向かっていく。

今度はシロクマ男が突進からの右腕の爪での攻撃を試みる。

しかし、それに合わせるように、シキが大剣を横振りし、
シロクマ男は再び、自分が横に真っ二つになるイメージに襲われ、攻撃を停止し、後方に回避する。

焦り気味のシロクマ男と余裕な表情なシキの対比描画。

神官「……すごい」

神官がそんな風にこぼす。

しかし、シロクマ男は戦意喪失せずに再び向かってくる。

シロクマ男の爪に冷気のエフェクトが発生する。

空(シキの姿)「っ……」

シロクマ男「くらえっ……! 氷獣爪ひょうじゅうそう!!」

シロクマ男は鋭利な氷が発生した凶刃な爪でもって、シキに襲い掛かる。

空(シキの姿)「ど、どうする?」

シキ『こちらも技を使えばいいだけだ』

空(シキの姿)「え……?(できるの?)」

シキ『……炎闇斬えんあんざん

シキは落ち着いた雰囲気でつぶやくように言う。

すると、シキの大剣が激しい黒い炎のエフェクトを帯びる。

空(シキの姿)「……!」
空(シキの姿)(なるほど……! 一体化しているとき、動作の主体は中の人だけど、技の発動はV側の意志に依存するのか……)

空(シキの姿)「くらいやがれ!」

シキも大剣を振り回し、二者の攻撃がぶつかり合う。

……

ダメージを負い、焦りの表情を浮かべ、肩で息をするシロクマ男。
※斬られた傷ではなく、炎による火傷のようなイメージ

余裕な感じで不敵に微笑むシキの対比描画。

シキ『やるな……直前で、氷を守りに回したか……面白いじゃないか……』

と、シロクマ男は悔しそうに唇を噛みしめた後、背を向けて、逃走を図る。

シキ『ん? 逃げるのか……どうする?』

頭の中でシキが空に尋ねる。

空(シキの姿)「今はこっちの方を優先したい」

シキ『そうか……残念だが仕方がない』

そう言うと、シキは大剣を降ろす。

シロクマ男はそのまま逃亡する。

……

シキと空が分離し、空が神官の元へ駆け寄る。

シキ『……危ねえ、実は燃料、ギリギリだったな……』

シキは後ろでやれやれ顔。

空「大丈夫……!?」

神官「あ、うん……おかげで……助かったでござるよ……空……」

神官が驚くような表情を見せる。
と同時に、スライドするように神官が分離する。

中からは恰幅の良い糸目の優しそうな中学生が出てくる。

くりゅうである。

くりゅう「ありがとうでござる、木村氏……助かったでござる」

それを見て、
嬉しそうな空。
その後ろで、シキは口をあんぐりと開けて驚く。
シキ「(女から丸男まるおが出てきた……)」
※以降、シキはくりゅうのことを丸男と呼ぶ

空(そう……この神官はくりゅうのVである)

空(この戦いの首謀者であるジョンはかつて日本人について言及したことがあった)

空の頭の中で、ジョンのセリフ
ジョン「日本人は女は女に、男も女になりたがる。奇妙な民族だ」

空(神官、銀髪ロング、褐色エルフ、巨乳……と彼の欲望が如実に反映された姿だ)

神官「……?」

ちょっと訝しげに神官を見る空。
きょとんとする神官。

空(二人も分離しているってことはくりゅうも最低一人は倒したのかな? 流石だ)


「何はともあれ、くりゅう、無事でよかった。昨夜は大丈夫だった?」

くりゅう「いやはや、無茶苦茶、大変だったでござるよ」

くりゅうは涙する。

大変だった描画(コミカルに)
・その辺のきのこを食べる(心配そうな神官ちゃん)
・公衆トイレで用を足すくりゅう(後方で恥ずかしそうにする神官ちゃん)
・橋の下で眠る(添い寝してくれる神官ちゃん)
・シロクマ男に追われる(頑張ってくれる神官ちゃん)
※だが、どこか嬉しそうなくりゅう(神官ちゃんと一緒だったから)

くりゅう「いやはや、いやはや」

空「(お前、本当に大変だったのか?)」
ジト目の空。

くりゅう
「それにしてもあのシロクマ男は結構強かったでござるな」
「木村氏のシキニキ相手にあれだけ善戦するなんて」

シキ「(シキニキ……?)」

空「そうかもね(一応、俺、廃人寄りのランカーなので……)」

空(あのレベルが結構、いるのだろうか……そうなると大変だなぁ)

◇シーン変わる

ひとけのない駐車場に逃れているシロクマ男。

息を荒げている → 呼吸を整える。

そして、シロクマ男が消滅する描画。

霊体のまま優しそうな表情を見せるシロクマ男……そして。

シロクマ男「大丈夫か? 純」

お疲れ気味の純の描画。

純「うん、ありがと……フェン。フェンも大丈夫?」

シロクマ男「あぁ……問題ない」

純「よかった……」

純、ほっとする。


(……あんな強い奴がいるなんて)
(プラチナランクの私が全く歯が立たないなんて……)

・シルバー
・ゴールド
・プラチナ ←
・カラーダイヤモンド
・ダイヤモンド

純(あー、それにしてもまさかこんなことになるなんてなぁ)

純はため息をつく。

◇回想

学校。クラス。

自席でだらしなく机に突っ伏している空。
それを純がチラッと見る。

純(今日は珍しくテストでもないのに来てる……)
純(ひょっとして私のこと……)

純のフラッシュバック回想でお葬式(純のお父さんらしき遺影。どこかシロクマ男に似ている)。

純「……ねぇ、空って家で何やってるの?」

と、純が空に話しかける。

空「メタバース」

純「なにそれ?」

空「え? 知らないのか? バーチャルアバターになって自由に生活できるんだぞ」

純「へぇー、面白いの?」

空「そうだな……割とな……」

空はそっけない態度であった。だが、

純「……!」

はっとしたような純。

空「純もやるか? って、今はそんな気分にはなれないか……」

純「え? えーと……」

純友達「ぴゅあー……お昼ご飯いこうー」

純「え? あ、うん」

純「ごめん、行くね」

空「あいよー」

空は軽く手を振り、再び机に突っ伏す。

純(買ってしまったーーー!)

自室で一人、メタバースのパッケージを手に、赤面気味の純。

純(まぁ、買ったからにはやらないのは勿体ないよね……)

ベッドでヘッドマウントディスプレイを装着する純。


(アバター……? そりゃ、滅茶苦茶、強そうな奴のがいいよね。バーチャルなんだし)
(大きいは強い……!)

そんなことを考えながら、シロクマ男を組み立てていく描画。

純(え……? なにこれ……? めっちゃ面白い……)

ワクワクするような純の描画。

【こうして、純は見事にメタバースにはまってしまった】
【しかし、恥ずかしくて空には言えずにいたのであった】

※一話で言おうとしたところを戸苅に止められたので、そこの描画を入れる。

回想終了。現在、駐車場に戻る。

純(メタバースは空もやってたからきっと参加してるはず……)
純(私がプラチナだって知ったら驚くだろうなぁ)

純は空のことを思い浮かべて、苦笑い。

純(それはそれとして、これはいい機会だ……!)

純(序盤で一気に駆け上がるためにメタバースに課金してしまった30万……絶対取り返す……!)

【純はハマりすぎて、結構、課金していた】

階段の踊り場。

戦士風「こ、この辺に参加者がいるのか!?」

戦士風のV姿の男が警戒するように、自身のVに聞いている。

すると、コツン、コツン、コツンと階段を登ってくる音。
戦士風の男は、緊張気味だ。

そして、ついに姿を現す。

戦士風「あ、あなたは……!」

戦士風の目の前に、天使が現れた。
いや、天使のように可愛らしい女性だ。
白いドレスのような衣装に、背中には白い小さな翼。
ピンクの長い髪に頭には輪っかが付いている。

戦士風「て、天上あまがみミカルさん! チャンネル登録者数100万人超えの超人気、天使系ドルVのあなたがなぜここに!?」
※ドルV=アイドルVの略

天上ミカル「あはっ、君に応援してほしくて!」

天上ミカルは可愛らしく、くねっとしたポージングをする。

戦士風の目はハートマークになる。

戦士風「はい、喜んでぇ……!」

"No.044がNo.022を倒しました"

100万人超えのドルVという現実の人気VTuberを彷彿とさせるキャラクターを登場させ、今後、こういったアイドル級のキャラクターと主人公の絡みを匂わせつつ、3話(了)


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