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母性

ミッドナイトスワン、を観た。

超長い予告動画があると話題になっていたけど、あえてそれは観ずに行った。草彅くんは勿論良かったのだけど、何よりもヒロインの、あの女の子が印象的で。この映画の決定的な存在。彼女だったから、この映画になったんだなという気がする。誰も知らない、での柳楽優弥のような、その人物の世界観で出来上がっている感じ。

服部樹咲ちゃん。良い眼だったな。喋り方も、笑わないところも、あどけない感じも、まさにイチカだなーと。途中から、女優さんじゃなくてバレリーナの卵みたいな子なのかな?と思うほど、バレエが本格的で、見入ってしまった。

考えたのは、お母さんという、普通でありながら、特別な存在。人は、お母さんのお腹から出てきて、お母さんに愛されたくて、喜ばせたくて、なんかもう結局全てはそのために生きてるんじゃないかって思うくらいに、全人類はマザコンであるのだろう。もちろん例外もいるだろう。お母さんを嫌いだったり恨んでいたり、殺してしまったりした人。でもそれもきっと好きだからこそか。

母性が芽生えた瞬間の、お母さんらしく振る舞おうとする仕草や言葉が。

作ったご飯を、一緒に食べてね。
美味しい?うん。
そんな、なんでもないひとときが、優しかった。


普通じゃなくていいよ、あなたはあなたでいいよ。そんな言葉がよくあるけど、万能ではない。彼女たちに対して、言える言葉ではないし、嘘になる。

きっと、ナギサは、普通に、女として生きて、女として親に育てられて、誰かと恋愛して、子供を産んで、お母さんになって。そんなふうに生きてみたかった。そんな、普通の幸せを求めていただけ。それが生涯、何をどう努力しても、出来ない。身体が違うから。女じゃないから。なんで私だけ?

空や海の、色と光、それから音楽も、美しい映画だった。

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