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1月見た映画『窓際のトットちゃん』を観て

12月の予告でたくさん見てきた『窓際のトットちゃん』。
原作を読んだ事が無く、スルーする予定だったのですが、大変良かったという感想をいくつか目撃したのでちゃんと観ることにしました。

ネタバレ有りです。




本当に良い映画でした。

映像が、作画が、音が素晴らしく、映画館で見るべき作品でした。

独特な顔のキャラデザは予告で見た時は癖あるなーと思っていましたが、見てるとその違和感は思ったより感じませんでした。
トットちゃんの見ている世界はそう見えていたのかな、と思ったり。

前半の食パートが良かったですね。
朝食シーンの音と色が特に良く、コーヒーとトーストの味と匂いを感じる演出は素晴らしかったです。
冷蔵庫にでっかい氷を入れていたり、謎のトースト機械でトーストを焼いてたり、当時の裕福な家庭の生活は見ててなるほど…と思いました。

トットちゃんこと、黒柳徹子さんの事をあまり知らなかったのですが、飼っている犬が雑種じゃなくてシェパードだし、家は洋風だし、お父さんはヴァイオリニストで、大変お金持ちな出身だったんですね。

泰明ちゃんの住んでいる家も豪邸のようだったので、(扇風機がある描写すごかった)トモエ学園に通う子ども達は裕福な家庭の子が多かったのかしら。

私の戦前・戦時知識って、みんなが食べ物に苦しんで生きているのに必死だったイメージがあったのですが、私が子どもの頃見せられていた反戦アニメ・漫画・ドラマがそういう描写強かったのかな、て思いました。もしくは私が目を向けていなかったか。


戦時中の生活に興味を持ち始めたきっかけは『この世界の片隅に』を読んでからで、その後宮崎駿監督の『君たちはどう生きるか』で、戦時中にも裕福な家庭ってあったんだ…と無知だった分衝撃を受けました。”知る”ってホント面白いですね。

『トットちゃん』でも、当時の生活描写が丁寧に描かれていたので、このシーンがすごく良いんだよ!と誰かに伝えたくなりました。


戦前から今の特別学級のような学校が存在していた事に大変驚きました。
今でも発達障害や病気で悩む子ども達への世間理解度は100%じゃないと思っていますが、戦前という現代以上に差別意識もあった世の中で全ての子どもはいい子なんだ、という認識を持てる大人がいた事に、心が動かされました。 

私は子どもと関わる仕事をしているのですが、小林先生の子ども達への関わり方、教育、熱意は大変勉強になりました。

トットちゃんがボットン便所に財布を落としてしまい、”あの中”からなんとか財布を見つけ出そうとしているのを「やめなさい」と言わず、片付けはちゃんとしてねだけ言って気の済むまでやらせてあげたのを、私は同じ事を言えるだろうか(笑)


それから、大石先生の授業中でのやり取りで、高橋くんに尻尾は生えてるかな?と言ってしまったシーン。ここメチャクチャ心抉られました。
高橋くんは重く受け止めてなかったようだけど、何気無い一言がその人にとって深い傷になる事があるもんね。病気に対する理解が無い時代で、普段から差別的な事を言われやすい高橋くんに大変な事を言ってしまった大石先生の気持ちを思うとこっちも落ち込んでしまいました。悪気が無かった分…ね。

トモエ学園で1番良かったシーンは、他所のクソガキがトモエ学園を馬鹿にしてきたところ。
石まで投げて喧嘩になるのかな、と思いきや小林先生の喧嘩をしてはいけない言いつけをみんなが守ったところで号泣しました。
その後表情は映さなかったけど、外から聞こえてくる「トモエ学園良い学校!」コールを聞いて肩を震わせて涙を流している姿を見て更に泣く。私は子ども達とこんな信頼関係を築けるだろうか。

そんな楽しい学校生活も戦争が始まり、世の中が軍事色になっていくのを、視覚で私たちに伝えてくるのがこの映画の凄い所だと思います。  

泰明ちゃんが亡くなった、でも頑張って生きていく!というありふれた泣けるラストでは無く、トットちゃんが希望溢れる楽しいトモエ学園に向かうのを逆らうように、人々が出兵し、子どもが戦争ごっこをし、片足を失った兵士や戦争で言葉に出来ない体験をした兵士がいて、子どもを戦争で失くした親がいて…、このラストシーンに心が打ちのめされました。体験した事が無いラストです。戦争はしちゃダメだよ、の重みが違う。

トモエ学園が戦火に燃やされるシーンで、小林先生の目が子ども達への想い、戦争への怒りで最後まで燃えていたシーンも素晴らしかった。

映画では語られなかったけど、飼っていた犬も殺処分されたであろう描写や、自分の家が疎開で建て壊され、知らない土地で父無しで生活しないと行けなくなったトットちゃん(子ども達)の事を思うと、戦争は子どもになんて思いをさせたんだと怒りが込み上げてきました。

決して希望溢れる終わり方では無かったけれど、黒柳徹子さんがご存命で今もテレビで活躍されているのを見るとパワーを感じます。
戦争を体験された方のパワーはどこか違うと思っています。

黒柳徹子さんがテレビとは別に、ユニセフ親善大使等、世界の子ども達の為に活動されている理由が『トットちゃん』を見て気づく事ができました。

本当に素晴らしい映画でしたので、ぜひ見てみてください。

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