![見出し画像](https://assets.st-note.com/production/uploads/images/95819605/rectangle_large_type_2_4315fc88246726ade1f3cb4c123bf001.jpeg?width=800)
【酒造】そやし水もとへの挑戦2 R3BY 山陰吟醸との融合
![](https://assets.st-note.com/img/1673906648555-cnFyIJ1eWr.jpg?width=800)
まずはこちらを【酒造】そやし水もとへの挑戦 R2BY。R2BYに引きつづき、R3BYもそやし水もとへの挑戦をしました。
R2BYではそやし水による速醸タイプ(酵母添加)、生もとタイプ(酵母無添加)の酒母作りに成功し酒もできて製品化することができました。反響も大きく、即完売でリピート希望の声も多数寄せられました。
![](https://assets.st-note.com/img/1673906731201-WzSObqwht9.png)
対外的な結果は良かったものの、製造的にはまだまだ改善点があり、課題を残す内容でした。水もと酒母に関しては問題なく出来たものの、醪に移行してからの管理に苦戦し、30日未満の普通酒経過になってしまいました。やはり酒母が変わるとバランスを取ることに苦戦します。
わたしの酒造りのベースは山陰吟醸なので、長期低温の吟醸経過で35日以上の醪にすることが理想でした。水もと×山陰吟醸が達成されなければ、ただ水もとに挑戦しただけになってしまうので、ほんとうの意味で水もとを自分のものには出来ていなことと同じになってしまいます。
ということで、R3BYは水もと×山陰吟醸の融合に挑戦した年でした。水もとは自然醸造、山陰吟醸は人間醸造、この2つをぶつけることで生まれるものはきっと感動的だろうと、頭の中では確信していました。この発想は後の縁起に繋がります。
![](https://assets.st-note.com/img/1673906754289-5hcMv3KHCb.png?width=800)
結果は無事に成功。そやし水と山陰吟醸の融合を果たし、想像以上の酒が出来上がりました。相反する味わいがひとつに、クリアにだけど曖昧に存在し、伸びやかで始まりも終わりもない世界観が広がるようでした。
その酒は無窮天穏 水母と名前をつけてリリース。反響はR2BYよりも大きく、水もとの可能性を大きく広げる内容となりました。
当時の水母案内文より
◎無窮天穏 水母(くらげ) そやし水もと純米吟醸
新製品です。苦しんだ3BY。その最後の最後に自分がやってきたこと、やろうとしていたことを言葉にすることが出来て、これからの新たな指針が生まれました。以下、その醸造法についてです。
私の手によって意図的に衝突させる。するとそこには人間であり、自然であり、どちらでもなく、どちらでもあるという人と自然を内包した新たな存在が誕生します。
異なる2つの概念を衝突させて意図的に矛盾をつくり、そこに縁(エン)を起こして新たな存在を産み出すいう手法は、意図的に奇跡(神)を起こすための儀礼、すなわち縁起(えんぎ)として、古代の人々に利用され、文化風習として現代に残されてきました(詳しくは秋にリリース予定の無窮天穏 縁起の際に)。
杜氏初年度の27BYで、山陰吟醸造りと生もと造りをかけ合わせ、御神酒を造ろうとした頃から7年が経ち、山陰吟醸はより高度に、生もとはよりアナロジーを増したそやし水もととなり、人間醸造、自然醸造それぞれの概念は深まっていきました。1つの概念を追求すると反対の概念が生まれ矛盾が生じる。その矛盾を埋める縁が2つの概念の共生方法を産み出してくれる。
男×女+縁=子供、人×自然+縁=神、空×大地+縁(雷)=生命、この世×あの世=妖怪、縄文人×渡来人+縁=日本人などなど二元論から三元論へ移行する儀礼は数多くあってどれも感動的です。
そこで山陰吟醸とそやし水もと。この深く大きくなった相反する概念をムスんで縁を起こすとどうなるか。そこには大きな感動があるのではないか。思想を現実にすることが醸造家の本質かもしれない。
無窮天穏 水母(くらげ)は「御神酒」「営み」に続く、新たなキーワード「縁起」によって造られた新たな酒です。いまここに誕生した縁起的醸造法の新酒です。出雲の蔵、御神酒を造る出雲杜氏が縁起的醸造法でムスビ(産霊)と縁起による本当の意味での縁結びを行うことは、なかなか理にかなっていて良い気がします。
縁起的醸造法のゴールは、どちらでもあり、どちらでもない。なにもないのに、どれでもある。それは人類が求めてやまない悠久の詩になる可能性を秘めた酒だと思います。水母はそんなすべての物事に境界線のない世界をイメージして命名とラベル意匠をしました。
R3BY、そやし水と山陰吟醸は融合を果たしました。その酒が水母となって製品となった時の喜びは最高のものでした。反響ももらったので報われました。
しかし、一方で大問題も発生していました。
おそらくその後につくったそやし水の影響で火落ち性乳酸菌が発生。生もと(天雲)になる予定の醪が2本、水もとが1本、合計約3000kのモロミが火落ち菌にやられてしまいました…。アルコールは問題なく付いたものの、酒の酸度は8.0まで上昇。
杜氏として火落ち菌は最大の敵。水母の成功のあと、地獄を見ました。その酒は酸度はあるものの意外と美味しく、天穏の日本酒としてはリリースできないのでレモンリキュールに使用しました。同業者の皆さん、水もとをやるときはご注意下さい。注意しててもやられるレベルで強力です。
R4BYでは新たなそやし水の製法に挑戦中。お楽しみに。
この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?