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生まれて初めてゲッター線を浴びて

30も半ばにしてはじめてゲッター線を浴びる

つい数日前にyoutubeでゲッターロボシリーズのOVAが期間限定で公開された。ゲッターロボはスパロボシリーズによく登場しているし根強い人気があるなくらいの認識だった。しかしTwitterのタイムラインのオタクたちがにわかに騒ぎだしたのでこれは見ておこうと思った。
年々新しいコンテンツに触れること自体にエネルギーを要するようになった体に喝を入れ、ウィキペディアでざっくりとシリーズの全体像をつかみ、youtubeの再生ボタンをクリックした。

搭乗者が全員狂犬

真ゲッターロボVSネオゲッターロボも見たが、そのあとに見た新ゲッターロボのインパクトがとんでもなかったのでここでは新について語りたい(真ゲッター地球最後の日は視聴が間に合わなかった)。

流竜馬:ヤクザに借金があるがチャカやドスを持った取り立てのヤクザを素手で返り討ちにするポテンシャルの持ち主。出稼ぎのフィリピーナたちからは「カワイイ」との評。

神隼人:テロリスト(70年代のマンガ版では学生運動のリーダーだったそうで。テロとは厳密には違うかもしれないけれど革命のために暴力を肯定する面がありましたからね、しかたないですね)。ゲッター線の機密を探るために政府の施設を襲撃、尻込みした仲間をその場で粛清。

武蔵坊弁慶:どこかの村で人妻や娘をたぶらかしていた。男の村人は丸太で排除しようとする様はほとんど獣。旅の和尚に拾われて仏道に入門。また異性(ミチル)へのアピール時に局部露出。

まともなやつが誰一人いねぇ!誰一人としていねぇ!!
ところで竜馬と戦っていたヤクザたち、どうして人は、とくに悪役は刃物を舐めてしまうのか。しばらく考えていたが2話で隼人が仲間の顔面を素手で切り裂いて抉ったときにびっくりしてどうでもよくなってしまった。そしてなぜかこみ上げる興奮と…快感。ふと鏡をみると自分も邪悪な笑みを浮かべていた。これがゲッター線のえいきょうなのか…?

鬼、平安、京都…

モチーフにふとガサラキを思い出して心拍数が少し上がったがこれはゲッターロボだ。早乙女研究所に向かって台風のような渦から次々と出てくる敵の鬼たち。鬼がどこからくるのか知りたかったらあの渦に飛び込めよ!オラ!

早乙女博士からこんなムチャクチャな発破をかけられた竜馬がゲッターロボごと飛び込んだらそこは琵琶湖、そして底に都…。
ゲッターロボと3人がたどり着いたのは妙にテクノロジーが発達した平安の京都、そこで鬼をあやつる安倍晴明とゲッターロボが激突する。もうこの一文でもはちゃめちゃ感が十分に伝わると思う。さらに超ガタイのいい爆乳女武者、源頼光も出てくる。圧倒的世界観。

理由とか仕組みとか整合性を求めてはいけない、そういうものなのだ。ゲッタートマホークが右肩から出てくるのは質量保存の法則を無視しているのでは?とか考えていたらキリがない。かっこいいから右肩から出てくるんだ。どうしても気になる人はドキュメンタリーやノンフィクションを見るといいと思う。

これだけ異色の世界でもストーリーとしては核心に近づいていき、ゲッターロボがいるところに敵である鬼が出てくること、つまりゲッターロボの存在自体が敵を引き寄せていること(ゲッターファクトとよぶ)が明るみになった。さすが隼人さん、テロの首謀者だけあって頭が切れるしダイナマイトも自作できる。武蔵は嫁まで作ってておまえ、なんだかんだモテるな。

進化とは

爆乳女武者源頼光の犠牲もあって悪しき陰陽師安倍晴明を討ち破ったゲッターロボ。元の世界に帰ってめでたしとはいかなかった。早乙女博士はゲッターファクトに気づいているのにゲッター線の濃い地下で取り憑かれたようにもっとすごいコアを開発していた。

もっとすごいコアの試験が半ば強行で行われ、竜馬だけを乗せたゲッターロボは消失してしまう。その先で竜馬がみたのはゲッターを利用した人間の行きつく先、ゲッターロボと同化した人間が互いを喰らいあう「進化」の先のえげつない様子だった。

ここで私はゲッター線はそれ自体が進化しようとしているのかもしれないと感じた。亡き息子を幻視しながら開発する博士の異様な様子を見るとゲッター線の作用で操られているようにも思える。もしかすると人間がゲッター線を利用しているのではなく、ゲッター線が進化のために人間を利用しているのかもしれない。

神…?

「進化」の一例を見たショックから研究所を去る竜馬。しんみりした空気を秒でブチ壊したのは異形となった安倍晴明。どうやったらあんなデザインが思いつくのか?ダリの絵画に平安をカップ2杯とサディズムを少々ブチこんで煮詰めたような、形容しがたいヤバい姿の鬼となって東京都心で暴れる安倍晴明。
(自分で書いててちょっとおかしくないかわからなくなってきました)

ゲッターロボを降りた竜馬も目の前で無辜の人々が死んでいくのは見てられないので参戦。死闘の果てに現れたのは…鬼神。神だ。鬼は世界の均衡か何かを守るためにゲッターロボを人類の手から奪うために送られてきていた存在だった。

思えば急に琵琶湖周辺で鬼の骨が発掘されたのはゲッターロボが過去の世界に行ったために時空が改変されてしまったためかもしれない。神は神なりにゲッターロボのこうした作用をなくすために彼らなりにがんばって鬼をおくっていたのかもしれない。

だからといって素直に殺される3人ではない。極限を超えて戦い、勝利の末に目の前に現れる巨大なゲッターロボ。そうか、いまや神は倒されてしまったのでゲッターが神になったのか。そしてそれは竜馬がすごいコアの試験の時に見た、どこか竜馬に似たゲッターロボだった。

この戦いの向こうに答はあるのか

竜馬はゲッターに選ばれてしまった。「あばよ、ダチ公」のセリフを残してたった一人で運命に立ち向かっていってしまった。彼はきっと最善の未来を模索するために時空を超えてずっと戦い続けることになるのだろう。

コンテンツとしてのゲッターロボ

平安編までは笑って見ていたけれど最終的にとんでもないものを見てしまったという気持ちでいっぱいになった。荒唐無稽な設定からこんなにしんみりするとは思わなかった。

コンテンツとしては「荒唐無稽さ」が大切なのだと思う。ゲッターロボはとくにダイナミックなアクションが売りだろうから、現実に基づいた細かい設定やいわゆる正史みたいなものを作ってしまうとそれ以降作品が広がりにくい。きっとリメイクとかアナザーストーリー的なものに落ち着いてしまう。
それが同じ登場人物を出してかつ設定も大いに変えて何作も作られているのはそれだけ懐が大きい証拠だろう。

私自身、ぶっとんだ設定の作品を非現実だとか子供っぽすぎると思い触れなかった時期がある。ようやくこの歳になってダイナミックな設定の良さやコンテンツとして長く愛される理由にきづいた。

それにしても、真ゲッターVSネオゲッターを先に視聴したので大佐としてチームを率いていた隼人が仲間の顔面を長い爪で引き裂いた瞬間の衝撃は忘れられない。そして彼がゲッターロボに乗るようになってからは手袋をキチンとはめているので爪を切るようになったことに気づいたとき、思わず顔がほころんだことも忘れないでおきたい。

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