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《Cremona No.340 》 資料[1-9]


Cremona No.340 資料[1-9]
ラベルに製作年は記されていない。全体的なつくりを見て、この個体は60年代のものと推察している。コインにも割とよくみられる木製のエンドピン。このタイプは50〜60年代辺りだろうか。割と古いのではないかと思う。(因みに形状は違うがINA JAPAN KYOMEISHAにも木製のエンドピンが使われているものがある。)
この個体は、ボディの傷も少なく外見はそこそこ美しく保たれているが、後年のクレモナのクオリティーからは想像できないほど粗悪と思われる合板材で作られている。重量もとても軽い。おそらく、この個体がつくられた頃というのは、合板材とはいえ楽器づくりに適した材を確保するのが難しかったのだろう。
指板の削れによりハイポジションの辺りでしっかり鳴らない箇所がある。全体的に音は軽くペラペラだ。しかし、それでもクレモナ独特の合板材でありながらマットな落ち着いた響きは感じられる。
こうした個体に出会うと、クレモナに限らず他社も含めて、材の確保が困難であっただろう50〜60年代頃に、こうした楽器をつくっていた経験と試行錯誤の時期を経て、70年代頃以降にだんだんと材の質も良くなっていき、全般的に各メーカーとも量産型として安定した楽器づくりに向かっていったのだろうと考えている。

Cremona No.340 資料[1-9]
total length : 183cm
string length : 107cm
(body)
upper Bout : 53cm
middle bout : 39.5cm
lower bout : 60.5cm
side : 20cm
height : 109.3cm

(sound sample)
strings : original flat-chrome(pirastro)

※傾向として昭和時代の国産量産型コントラバス(特に70年代くらいまでのもの)は同一型番であっても“つくり”に大きなムラがある。また古い楽器はその個体がどの様に扱われてきたかで現状のコンディションに大きな差異が生じる。交換可能な部位はオリジナルかどうか疑わしい場合もある。録音は私がたまたま資料として出会った個体の記録でしかなく、記述は個人的な見解に過ぎない。採寸は素人採寸。



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