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《Suzuki No.80(1959)》資料[4A-1]

Suzuki No.80(1959)資料[4A-1]
表板のみ単板のNo.80(1959年製)。日本規準の3/4(世界規準の1/2程)サイズのヴァイオリンシェイプ。古い型番だが中古市場でたまに見かける機種なので、50年代終わり頃から60年代はじめ頃によく出回っていたのだろう。
塗装は木曽ニチゲンやINA JAPAN
KYOMEISHAにも見られるサンバーストのようなもので、時代の流行を感じさせる。ボディシェイプは下部が小さすぎる気もする。個性的な形だ。
この頃のスズキのテールワイヤーは針金のような鉄線ではなく赤い紐が使われている。指板は薄く、分厚くプラスチックのような塗装がされた粗悪なものがつけられている。
この個体は表板のE線側がやや下がってしまっている。もう少し良好な健康状態の資料が望まれたが、50年代の量産楽器の中古で健康な個体に出会うのは難しいだろう。
小さなボディだが音量があり良く鳴る。しかしボディ鳴りはその後につくられた同じバイオリンシェイプの表板単板タイプNo.90[資料4A-5](後述)のようなバランスの良さは感じられない。表板の材は一体スプルースなのだろうか、とも思ったりする。傾向としてはオール合板製の様な箱鳴りで、明るめの風変わりな個性的な音色、コントラバスとは思えない音だ。低域高域のバランスがあまり良くないが、手元の近鳴りは心地よい。
多くの例を見た訳ではないが、50年代〜60年代頃のスズキ製品の鳴りは、後年にはない独特のクセがある。低音が過度に固まって出て、やや扱い辛い印象がある。質の悪い材とその材の劣化に由来するものなのかもしれない。
テンションは弱く、弾いていてあまり充実感は得られないものの、録音された音を聞くと、表板合板材では得られない柔らかさがある事に気付く。

Suzuki No.80(1959)資料[4A-1]
total length :  177cm
string length : 102cm
(body)
upper Bout :  48cm
middle bout : 35cm
lower bout : 61cm
side : (up)18.6cm
        (mid)19.6〜19.8cm
        (low)20cm
height : 106cm

(sound sample)
strings :  belcanto(thomastik-infeld)

※傾向として昭和時代の国産量産型コントラバス(特に70年代くらいまでのもの)は同一型番であっても“つくり”に大きなムラがある。また古い楽器はその個体がどの様に扱われてきたかで現状のコンディションに大きな差異が生じる。交換可能な部位はオリジナルかどうか疑わしい場合もある。録音は私がたまたま資料として出会った個体の記録でしかなく、記述は個人的な見解に過ぎない。採寸は素人採寸。

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