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《Suzuki No.90(1970)》資料[4A-5]

Suzuki No.90(1970)資料[4A-5]
No.90の3/4サイズは1955年から1972年まで製造されていた。同時期に製造されていた同じ3/4のバイオリンシェイプNo.80よりも良質な材でつくられている。グレードがワンランク上で、表裏の板もNo.80よりも厚く全体の重量もある。価格は2万円程高く設定されている。
この個体の指板は黒檀が使用されているが、オリジナルがどうかは疑わしい。ボディは薄く、運搬に重宝しそうだが、少し薄すぎる感があり、これは音にも影響している。前述のNo.80よりはコントラバスらしい音はするが、響きは軽く物足りなさを感じる。高低域の響きのバランスもあまり成功していないような気がする。表板は単板だが、他の部位は合板材なので音のボヤけも割と気になる。
全体的な鳴りを考えると、合奏の底辺を支えるには頼りない音だが、こうした楽器も、身体の小さな日本の学生などにニーズがあったのだろう。
スズキの国産3/4サイズの単板と合板のハイブリッド機種は1974年以降は製造されなくなったようだ。同社のこのサイズのバイオリンシェイプはオール合板製のNo.85に引き継がれていく。


Suzuki No.90(1970)資料[4A-5]
total length :  174cm
string length : 99cm
(body)
upper Bout :  49.5cm
middle bout : 36.3cm
lower bout : 61.5cm
side : 19.5cm
height : 104.5cm

(sound sample)
strings : perpetual(pirastro)

※傾向として昭和時代の国産量産型コントラバス(特に70年代くらいまでのもの)は同一型番であっても“つくり”に大きなムラがある。また古い楽器はその個体がどの様に扱われてきたかで現状のコンディションに大きな差異が生じる。交換可能な部位はオリジナルかどうか疑わしい場合もある。録音は私がたまたま資料として出会った個体の記録でしかなく、記述は個人的な見解に過ぎない。採寸は素人採寸。

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