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Diary_09212024

目覚ましを無意識に止めてしまったらしく、7時20分にフッと目が覚めてありゃっ!と思ったが、夏海さんは既に出かけていた。ともかく、寝坊しなくて良かった。

そのまま起床し、朝食。今日も雨で異様に寒い。

アン・シャーロット・ロバートソンの映画を3本観る。『Depression Focus Please』(1984) はクリスマスにカメラを回しながらのロバートソンのモノローグが入る。あとで分かったが、この監督はこのスタイルでスーパー8を80巻(!)以上セットにした日記形式の大作も撮っているらしい。そう考えると、このゾクゾクするような映画がまだまだこの世に山のように残されているわけで、サイレントを見始めた頃に似た興奮をおぼえる。

『Talking to Myself』(1985) はロバートソンが二重露光と多重録音の声によって「対話」を試みるが全く噛み合わないという個人映画の究極の形で、途中から黒味と音声だけになっているのが強迫的で印象深い。同年の『Kafka Kamera』にはロバートソンが劇映画的なものを撮ろうとした痕跡が見て取れる。一種のパニックホラーであり、「視る」「撮る」ことの呪いが跳ね返ってきたかのような、ある種喜劇的でもある映像の悪魔祓い。

早めに外出。雨は冷たいしムチャクチャ寒い。買い出しして出勤。仕込みと開店準備。作業量多。菅原さんから電話あり、月曜の話。

予想が外れてランチタイムは恐るべき静けさに包まれる。まあ、この天気だし仕方ないか。

姫本さん、おおばさんらご来店。こういう日ほど常連さんの有り難みが身に沁みる。

チナツさんご来店、曲線での『VISIT PALESTINE パレスチナ・ポスター展 in 仙台』のポスターを拝受。宣伝だけでなく、ずっと貼っておきたくなる美しいポスター。

閉店後、スーパーで買い物し帰宅。夜は更に寒い。買ってきたもので適当な夕食。

メールをいくつか書く。つびーと明日の打ち合わせなど。

洗濯。

アン・シャーロット・ロバートソンの映画を3本観る。地下鉄の車窓から照明や地上の光をモノクロで捉えた『Subways』(1976) はとても美しい作品で、リュミエールの『鉄道トンネル通過』(1898) やジョージ・アルバート・スミスの『The Kiss in the Tunnel』(1899) を想起させられるものの、観ているうちにもっと抜き差しならない冥界へ迷い込むような感覚にほれぼれする。音楽やナレーションなどを一切加えずに状況音だけなのもいい。同年の『Going to Work』は逆に冬の戸外のモンタージュで、より具体的・現実的な事物と自身との関係性を静かに歩きながら考察するような趣きがある。

もう1本の『My Cat, My Garden, and 9/11』はタイトル通り2001年の作品で、ロバートソンの遺作のようだ。愛猫の死、自宅の庭、そしてテロリストとアメリカの戦争。この映画でのロバートソンはとても偏屈で付き合いにくいし、言っていることはむしろ「アーティスト」的な思索からは程遠く、愚かとさえ思える内容だが、これが事件直後のリアルなアメリカ人の反応だったと言えなくもないし、一方で9.11のニュース映像から庭のショットに繋ぐ瞬間の鮮やかな、しかし侘しくもある明快な「意思」はやはりこの監督らしいアプローチだと思う。

明後日に迫った井口さんとのトークに向けて準備。井口さんの諸作品について思うところを次々に書き出し、そのままではどうしようもなくだらしない内容になってしまうのでいくつかピックアップして掘り下げる。いわゆる評論家でも研究家でもないので限界はあるが、井口さんの映画をただただ面白がって観てきた者としては、何がそんなに面白いのかを無邪気に語ることは出来ると思う。夢中になって作業して、気づいたら1時になっていたので寝ることにする。


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