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Diary_06242023

9時起床。朝食。台所の片付け、洗濯。

夏海さん出勤。

ハリー・A・ポラード『無鉄砲時代』を観る。しばらく観ていなかったレジナルド・デニーの喜劇だが、これはまたソフィスティケイトされたラブコメで素晴らしい。ミッチェル・ライゼンとかレオ・マッケリーあたりが撮っていそうなスクリューボール感もありつつ、基本はデニーの物腰の美しさが全体をガッチリと支えている安定感がある。残っている映像の状態が良いのも嬉しい。

メールをいくつか書く。昼食。

ワイラーの初期長編『戦友の為』を観る。邦題のせいで敬遠していた映画だけど、戦場でPTSDを患った戦友をサポートする男が主人公の西部劇で、想像していたものとはかなり違っていて普通に面白かった。このことから、映画を想像してはならない、ということが分かる。

午前中はよく晴れていたのに、午後に少し降る。メールをいくつか書く。

アラン・ドワン『ドーグラスの現代銃士』を観る。かなり面白い。ダグラス・フェアバンクスをいかに無敵のスーパーマンのように描くかに集中しているように見えて、実際はもちろん、そんな単純な営為ではないことがよく現れている。ドワンはグリフィスと競うようにして映像表現を拡張し続けたアメリカ映画の最前衛の人だけど、あの驚異の傑作『私刑される女』に至るその後の仕事量と内容の豊かさを考えれば、高水準の映画をこれほどの長きにわたって撮り続けていた、その息の長さにこそ価値があると思う。

夏海さん帰宅。夕食を作る。

食後に、今頃、皆木君たちが七針で演ってるねと話す。

『ドーグラスの現代銃士』のヒロイン、マージョリー・ドウの経歴を何となく見ていたら、ロイス・ウェバーの『偽善者』にチョイ役で出ているようなので観てみる。実を言うと、ウェバーの映画はこれまでに短篇を3本観ただけで、『サスペンス』以外はどちらかというと好きになれないものだったので、あまり積極的に観て来なかった。しかしながら、この『偽善者』がオープニングから醸し出す禍々しい妖気にも似た独特な映像の呼吸のリズムとでも言おうか、形容し難いタッチの魅力から目が離せなくなってしまった。あまりにも沢山のサイレント映画が今日失われてしまったことが残念でならないが、そういう中で『偽善者』のような異常な映画が2023年まで生き残っているということも、何かこの映画に込められた念力めいたものを感じずにおれない。『偽善者』はいわゆる「完璧」な映画ではなく、監督自身の思想の偏狭さ故に、この異常性を徹底できなかった面は否定できないけれども──そもそもウェバーには「異常な映画」を撮るつもりはなかっただろうし──、そんな事が全く問題にならないほど度肝を抜かれる細部に満ち満ちている。

今日はサイレントしか観なかったが、どれも面白かった。

真夜中になって、夏海さんが「店の扇風機を消し忘れた気がする」と言って、確認しに出かけていく。他にも店に行く用事があると言うけど、僕なら「ま、いいか」と寝てしまうだろうなあ。夏海さんは小一時間で戻る。扇風機は、ちゃんと消してあったらしい。

日記を書きながら、『偽善者』について思いを巡らしていたら2時になってしまった。

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