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にわかに、新興国でドル離れ・・・そんな雰囲気が出てきています。
ASEANでも、ここに来て、自国通貨を使いましょう!そんな動きが出てきています。

https://www.bangkokpost.com/business/2567011/asean-pact-pushes-local-currencies

そろそろ、利上げは打ち止め感が出てきたドルですが、利下げに転じるのは、2024年では?との見方が現時点では濃厚。前倒しも、後ろ倒しもあり得ますが、いずれにしても新興国はこの利上げの動き(さらにはその後の利上下げ)についていけず、先進国も日本も昨年はかなりの円安に。

新興国からすると、ドル調達は正直とてもしんどく、少なくとも近隣国では自国通貨決済にしようという空気は出てきているようです。

率直に申し上げて、ASEAN諸国が今見渡せる時間軸でドル離れができるとは思えません。世界の基軸通貨はドル、ドルがなければ、エネルギー、食料は買えません。円でさえ、エネルギー、食料は大量には買えません。

他方で、近年のハイペースのドル高で、ASEAN諸国がドルに振り回されているのは事実。自国通貨が下がって、ドル調達に苦労し、ドル建ての輸入決済には影響が出ていることになります。

ドル高は、米国発のインフレが直接的な要因で、ウクライナ情勢がそれに拍車をかけていますが、ドルを使うことで、少なからずビジネスと人権などに抵触すると、米国の金融制裁対象になることもあります。そのリスクはASEAN諸国ではそこまで高くはないも、国によっては、当該(ビジネスと人権抵触)指摘がゼロではなくなってきている面はあるのでしょう。

上記理由から、ドル離れは現時点で見渡す限りにおいては現実的ではないものの、少しは進めたいので、まずはやりやすい隣国からということになっているように思えます。そこはASEANらしい動きです。

どこかの通貨が強く、例えばバーツ圏や、シンガポールドル圏ができるという話なら進みやすいのですが、あくまでバーツとリンギ、バーツとルピア、バーツとフィリピンペソのような話になります。そうなると、強いバーツやリンギと弱いルピアやペソの間で、自国通貨決済が進むかというと、障壁は高いでしょう。シンガポールとマレーシアやインドネシアの一部、タイとラオスやミャンマー間なら、デ・ファクトでその流れはあるので、さらに進みやすい面はあるでしょう。そういう所では、2国間通貨決済が一層進むかもしれません。ベトナムの場合は、中国同様に厳格な管理フロートで、資本規制も強い(後述)ので、2国間決済の障壁はやや高いかもしれません。

つまり、全体の利便性は、あくまでドルの利便性が高いと考えます。ドルは基軸通貨で、かつオフショア(米国以外)にも十分な量が供給されています。かつてアジア共通通貨構想もありましたが、今はほぼその議論は消えて、実質ドルがその役割を担っています。その弊害が、近年やや強く出てきており、少なからず対処する姿勢を見せていることになろうかと思います。

なお、これは少し話の質が番う気がしますが、この2国間で自国通貨を使う流れに、さらに、フィンテックを使った比較的自由な送金も使いますので、それがどのように影響するのか、そちらは現時点では見えませんが、ラオスやミャンマーでバーツが流通、シンガポール周辺(マレーシア、インドネシアの一部)では、シンガポールドルが流通することを加速させるかもしれません。

ドル離れを進めようとしている比較的大きな新興国の先行事例としては、ブラジルとアルゼンチンがあります。両国ともに通貨は弱く、とりわけアルゼンチンペソは国民の信任も失われて非常に弱いことが知られておりますので、両国共にドルに振り回されているのを脱する動きですが、実質的には、ブラジルレアルでの取引加速・・・のようにも思われますが、本当に脱ドルにつながるかは未知数です。


それをASEANに当てはめると、ASEANの経済大国は、ボリュームではインドネシアですが、ルピアは弱く、なかなか、ぴたっとはまる事例が見当たらない感じはします。

さらに、自国通貨建てで輸出、輸入ができれば為替リスクは低減されるわけではありません。域内貿易が均衡しないと、強い国の通貨が結局強くなり、弱い国は弱くなるので、為替リスクは残存することにはなります。

ただ、ドル不足での貿易スタックは回避できる可能性は高まります。

世界は、金・ポンド本位制から、事実上ドル本位制に移行して現在に至りますが、基軸通貨に振り回される局面で、ドル離れを模索するのは、自然な感じはありますし、地域新興経済大国と周辺国では、地域新興経済大国の通貨は浸透しやすく、フィンテックもそれを後押ししそうです。

なお、ドルがダメなら、人民元・・・そういう論調も少なくありませんが、為替のトリレンマという法則に基づくと、厳しい管理フロート制の中国は、厳格に変動幅が当局にコントロールされており、そのうえで、独自の金融政策は維持していますので、資本規制は強固なままです。その状態で、ドルのようにオフショアでどんどん使われることを、中国当局が積極的に看過するとは思えません。他方で、人民元でエネルギー、食料を調達できるようにすることは、中国にとっては国策の面もあるでしょうから、資源国・食料大国の新興国から、人民元が浸透するのは、既にそういう兆候はあり、この条件にはまりそうなので、例えば、ブラジルにアルゼンチン・・・そんな気はします。

覇権国が英国→米国に踏襲されたためで、この流れで、金・ポンド→ドルもまた踏襲されました。それでも、ドルはあくまでの米国の通貨であり、同国内の事情で、高くも低くもなります。それにこれまの間一番振り回されて国の代表格は日本やドイツでしょう。ドイツは、宿敵フランスと組んで、強いマルクを放棄した・・・そういう見方もできます。じゃあ、日本は?安保も絡んで、・・・円安になっても、円高になってもひたすら耐え忍ぶのか

そしてアジアは、ASEANは、ひとまず、周辺国との貿易は、自国通貨に切り替えていく旗印は上げるも、結局は、ドルのままいくのか
その間隙を中国は、突けるのか否か

まだ答えは見せませんが、米国が基軸通貨の管理国という当事者意識が希薄になり続けるなら、思いの他、新興国は離れていく・・・ことも想定はしておく必要はあるのか、それとも、やっぱりドル頼みなのか、

国際ビジネスにおいて、為替管理は最大のテーマの一つであり、かなりの要注意事項となりそうですが、釈迦に説法ながら、改めて南米やASEANの動きを注視していく必要はありそうです。


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