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経済安保の影響を、基礎ミクロ経済学の視座で考える

後期から、本業のアジア経済論はそのままに、基礎マクロ経済学、基礎ミクロ経済学も担当していますが、これらのベーシックな部分が、経済安保の時代でどう変わるのか、頭を悩ます日々が続いています。

まず、基礎ミクロ経済学では、生産可能性曲線という概念が出てきます。これは、無人島に2人(Aさん、Bさん)が漂流、魚か椰子しか食料がない状態で、食料の最大化を図ろうとすれば、Aさんが魚取るのが比較的得意で、Bさんが椰子を取るのが比較的得意なら、Aさん、Bさんが、自前で魚と椰子をそれぞれ取るよりは、お互い得意な方に集中し、Aさんは魚だけ、Bさんは椰子だけに特化するのが、最も効率的で、それを交換するのがベターという考え方です。つまり、Aさん、Bさんが、各々、魚と椰子をとってもいいのですが、それは非効率なケースが出てるという考え方です。

実際、特化して分業して、それを私有財産権の確立と貨幣を通じて交換することで、我々の豊かな生活は成り立っています。

ところが、その無人島を、青い国と赤い国が、各々自分の島だと主張して、島を分断、AさんとBさんは、往来ができなくなったら、どうでしょうか。交換ができなくなるので、Aさん、Bさんは特化できなくなってしまいます。この情況が、一部で起きているのが、経済安保の時代の実情です。生産可能曲線が引き直されている、そういう塩梅です。

需要と供給で考えると、右下がりの需要曲線(D)が一定と考えると、右上がりの供給曲線(S)は、分断によるコスト上昇で、左にシフトします。
そうなると、価格は上昇、量も減少してしまいます。
これが、現状起きている分断の負の影響です。

そうすると、価格を下げて、量を増やすには、結局、供給曲線を右にシフトさせる必要があります。政府の補助金を使ってでも、生産コストを下げさせることは、右シフトであり、昨今の、産業政策の復活は、このようなロジックでも、説明はできるように思えます。

現状は、非常に複雑な要素が絡み合っていますが、無人島が2つに分断されたら、特化の前提が崩れてしまう。島半分で、新たに、生産可能曲線を引き直すしかない。

生産コストは上昇し、価格は上昇、量は減ってしますので、一時的に多少の無理をしても、投資を拡大して、いずれは価格を下げさせるほうが望ましい。そんな流れにはなるのですが、短期的には、そんなに上手くはいかないのが現実でもあります。

それでも、新規投資先はどこか、グローバルサウスか、はたまた、産業政策復活の先進国か・・・中長期的に気が付いたら、投資実施がなされ、コストは下がり、量は減る

分断が続けば、そこで落ち着きますし、分断が緩和されると、こんどはモノが溢れる・・・そんなこともあり得ますが、どうやら、分断は長期化・・・それがコンセンサスにはなりつつあります。

このように、悩ましい秋から冬が続くことになりますが、基礎ミクロ経済学は案外役に立つ・・・そういう実感も持っており、ハードルは高いも、経済安保を考えながら、経済学の基礎も学べる一石二鳥を狙えそうな気もしております。


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