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タイの政治情勢はまだ混乱が続いています。
5月の選挙で第一党になった前進党のピター氏は、首相からは外されてしまい、第二党の貢献党からの首相選出となりそうな流れです。

他方で、現首相で元陸軍大将のプラユット氏は政界から引退となり、革新派のピター氏と保守派のプラユット氏の両者を周到に避けた結果、貢献党が漁夫の利を得るようにも見えます。

それでも、民意が政治に反映されないとなると、市民の反発は、強まることは懸念されます。

他方で、前進党の政策は、最低賃金の4割アップに、大胆なEVシフトなど、日系企業にとっては、ちょっとついていけない・・・そういう感じがあることも事実で、政権経験がある貢献党の方がまだ安心・・・・そういう見方も経済界にはあるかもしれませんが、やはり、市民の意向は、政治がどうなっても方向感としてはぶれないのではないか・・・そんな気はします。

メディアインタビューを受ける機会がありましたので、小職のQA部分のみ、掲載いたします。

Q 5月の選挙以降の政治空白は、投資家や在タイ企業心理にどのような影響を与えるでしょうか?

民主派は反発を強める見通しですが、デモに発展すれば、治安や観光にどのような影響も出るでしょうか? 


民意が反映されないことに対して、タイ市民は不満を募らせやすいでしょうし、長引けば長引くほど、海外投資家や在タイ企業の投資心理を冷やすことは避けられないと考えられます。

市民、とりわけ、民主派を支える若者層が、大規模デモを引き起こす時代が先鋭化すれば、せっかく回復しているインバウンドに多大な影響、さらには回復基調の国内消費に悪影響を及ぼすことが懸念されます。

もしもデモが起きても小康状態を保ち、各国が、安全情報の警戒ランクを引き上げないレベルに留められるか否かが問われそうです。

Q 為替と株価は、政治的な不透明感で乱高下していますが、短期的に終息するでしょうか? 


次の首相が、誰になるのか、この保守派に足を引っ張られる状況で第一党から出せるのか、漁夫の利を得る形で第二党から首相を出すことになるのか(注 インタビュー後、第一党から党首を首相候補に出すことは、上下院の合意が再度得られずできなくなりました)。

その際、連立政権の第一党の前進党と第二党の貢献党は、うまく運営できるのか、これらの懸念が短期的には消えないように思われますので、政治の安定が見えてくるまでは、マーケットを巡る不安定な状態はしばらく続くのではないでしょうか。

Q その他、政治動向の経済への影響はありますでしょうか? 

A
メディアや世論は、かなりピター氏を推しており、上院にもその意向は伝わってはいましたが、状況は膠着し、プラユット氏の引退とピター氏の首相阻止は、保守派によるオフセット取引の動きのようにも見えます。

 タイ市民は、それでも、今度こそは、民主化を進めて、改革を進めようという機運が高まっていますが、日本を含む外資企業は、最低賃金の引き上げやEVシフトなど前進党の急進的な改革には警戒感もあります。

ここで、改革派に保守派が圧力を強くかけているのは事実ですが、日本企業としては、タイ市民の支持する改革の意向は汲んでおく必要があるようには思えます。

また、改革派と保守派を問わず、タイが中所得国の罠回避のために、所得のボトムアップと、新産業シフトを目指すことは、方向性としては変わらないように思えますので、その点にも留意が必要に覆えます。

 Q ビジネスと人権の観点から、選挙結果を実質無効にするような措置は、どのような影響を及ぼすでしょうか?

A
この点は、無論、国連や米欧からの批判圧力が高まり、中国は基本的に一貫して内政不干渉、日本企業はその狭間で、欧米の圧力は回避したいし、中国の影響力拡大もまた回避したいというジレンマが続くことになるのではないでしょうか。

繰り返しになりますが、タイのことは、タイの市民が決めていくしかありません。貢献党が改革派から保守派に連立を組み替える可能性も含めて、表層的には政治的な妥結の形になるのでしょう。

それは踏まえつつ、市民の真意を汲み取り、長い目でみれば、政治はそれを無視することはできませんので、政策もまた市民の意向の方向性に向かうとみることが、日本企業にとってもプラスにはなるように思えます。


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