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岸田総理が、シンガポールで開催されたアジア安全保障会議(6月10~14日)で基調講演を行い、世界の耳目を集めました。シャングリラホテルで開催されるので、通称シャングリラ・ダイアログと言われる防衛(国防)担当大臣の会合ですが、通常は、日本は防衛相の参加ですので、首相は、アジアの安保協力に一歩踏み込んだ形となりました。米国が、その姿勢を評価していることは論を待ちませんが、地域のバランスを重視するアジア諸国・地域も、静かに支持する国もあるといったところでしょうか。

日本は、防衛装備品の輸出規制緩和に踏み込んでおり、総理のアジア安全保障会議登壇には、そのあたりの狙いも、見え隠れします。

https://www.washingtonpost.com/business/japans-assertive-foreign-policy-can-start-in-southeast-asia/2022/06/12/63cf4c36-eaa8-11ec-9f90-79df1fb28296_story.html

本会議は、年々注目度が上がっていますが、今回ほど、注目されたことはないのではないでしょうか。ウクライナ侵攻で、世界の安保への関心が高まっていることは背景にあることは論を待ちません。

ロシアは参加を見送りましたが、ウクライナはゼレンスキー大統領がオンラインで参加して、支持を訴えました。アジア諸国は、防衛装備では、インド、ベトナムなどロシアと関係の深い国があることを意識したと考えられます。

さらに、米中国防大臣の対話や、政権交代から間もない豪州と中国の国防大臣の対話が行われたことも注目を集めました。特に、インド太平洋で長期的に対峙する可能性が高まっている米中は、話し合いが平行線であっても、対話には意味があり、前政権時代に冷え込んだ中豪関係もまたしかりです。

近年、2+2という、外務大臣・防衛(国防)大臣同士の会合が増えており、安保のウェイトは増すばかりです。

他方で、スイスのダボス会議や、アジア版ダボス会議として期待されてきたボアオフォーラムなどの、経済主体の会合は盛り上がりにかけるようです。ウクライナ侵攻後の世界の分断やゼロコロナ政策で、権威国家からの参加が減っていることが一因と伝えられていることは残念です。

しばらくの間は、シャングリラ・ダイアログの重要性は、高まり続けることになるのでしょう。G7、G20などでは、財務・中央大臣会合によって、金融・財政面での国際協調が進められていることはご承知の通りです。顔見知りになることが、協調の一助を担っていることは論を待ちません。

シャングラ・ダイアログは、いわば強面の方々の集まりになりますが、顔見知りになることは極めて重要であり、各国・地域のレッドラインに探りを入れつつ、一線を決して超えないようにけん制することが、安定をもたらすことが期待されます。

他方で、アジア諸国・地域は、大国に関与され振り回されることを伝統的に忌諱します。日本の関与は、地域のパワーバランスの向上に資すると受け取ってもらえる国・地域の目利きもまた、企業レベルでは機微分野から求められていくことになりそうです。



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