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坂本龍一のメディア・パフォーマンス その2


書籍「坂本龍一のメディア・パフォーマンス」

2023年10月31日までワタリウム美術館は、以下のリンク先にある「追悼:坂本龍一のアート」というオンライン配信を行っています。

こちらのオンライン配信は全4回から構成されており、第1回は2023年7月7日にワタリウム美術館の地下1階にあるミュージアム・ショップ、オン・サンデーズで開催された「追悼トークセッション『async|設置音楽展』とは何だったのか」のアーカイブです。

登壇されたのは浅田彰さん、松井茂さん、和多利浩一さんで、上記したリンク先には内容について、「40年に渡った坂本龍一とワタリウム美術館との交流について振り返る。特に2017年に開催した展覧会『async:設置音楽展』とはどんなものだったのか。坂本龍一さん自身が展示に関わり、作り上げた様子を振り返る。さらにゲストの方々に『坂本龍一のアート』をお話いただきます」と紹介されています。

菅付雅信さんは会場の様子とトークの概要をツイッターにて以下のようにご紹介されていました。
https://twitter.com/MASAMEGURO/status/1677323615199547394

アーカイブ配信は2時間10分ほどの長さで、とくに前半は書籍「坂本龍一のメディア・パフォーマンス」でも中心的に扱われた、1984/85年の坂本さんによる「メディア・パフォーマンス」について語られています。以下に松井さんの発言を少しだけ引用します。

ものすごくマス・メディアと接近した時代で、それが非常にクリエイティブな状況を生むんだというのは、1970年の万博があって、ちょっと僕からすると閉塞の時代の70年代があり、80年代というのはそういうかたちで、一気に全社会と先端的なものが繋がるっていう時代があった。

音楽っていうものと映像メディアが繋がり始めた時代ですよね。(略)マス・メディアのなかでカウンターをするんだ、そういう戦略を張っていくわけです。

なぜこのようなことが可能な人だったのか、いまから見るとほんとうにふしぎに見えるんです。きわめてメディアを使うことに長けた新しい芸術家像だったことに間違いないんですね。

メディアを使うということに関して、ごく初期の段階から自分の音楽をどのようなかたちで届けるのか。

追悼トークセッション『async|設置音楽展』とは何だったのか

トークイベントの時間的な制約などなどもあり、「1980年代に全社会と先端的なものが繋がり」「マスメディアのなかでカウンターをした」坂本龍一という「メディアを使うことに長けた新しい芸術家像」というポイントが、具体的にどのようなものであったのかについて、松井さんはあまり深く掘り下げておられなかったように思われます。

松井さんはこうした論点について、書籍「坂本龍一のメディア・パフォーマンス」の第1章「メディア・パフォーマンスというゲリラ戦」において、詳しく論じておられます。少しだけ引用すると、松井さんは、

椹木の意図に倣えば、美術が拡張した戦後という時代設定、1945〜1995年は、武満が活動した時代に一致する。言い換えれば、坂本こそが、「拡張する戦後美術」の集大成なのではないか。映画、ラジオ、テレビで音楽の仕事をし、新聞や一般誌にもたくさんの寄稿をし、文化人として社会的な発言をした武満、と捉えると、見事に坂本と重なり、マス・メディアの中の芸術家像という系譜が浮上する。

松井茂「メディア・パフォーマンスというゲリラ戦」

とおっしゃっておられます。すなわち「坂本龍一のアート」という広い枠組みは、音楽家である坂本さんがさまざまな「アート」も手がけていたということのみを意味するのではなく、松井さんは「マスメディアのなかでのカウンター」を実践し続けたことによってこそ、坂本さんが「拡張する戦後美術の集大成」となり得たのではないか、と考えておられるのではないかと思います。ということで書籍「坂本龍一のメディア・パフォーマンス」は2023年9月26日に発売です!


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