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電車が走る音、心が温まる。

女性だけに声をかけられればいいってものではない。

バーで仲良くなった30代の男性がいる。音楽の趣味が合い意気投合した。聞くとこの方、ベトナムの駐在員で、たまたま帰国していたみたいだ。

その彼と連絡先を交換し、次の帰国時に飲みに行く約束をしていた。

某日、時刻は1:00を回り、家の辺りはしんとしていた。ぼくは間接照明を1つつけ、お香を焚き、歯を磨いていた。そのときに電話が鳴った。
「今近くで飲んでるんだけど来ない?男女2-2なんだけど」
帰国した彼からの誘いだった。
普通ならここまで寝支度が進んでいるのだし、めんどうだから行かない。
けれど今日は違った。なんかあるかも。そう思い行くことにした。

「20分くらいでつきます」
「お、いいね。待ってるよ」

電車はなかったので自転車に跨った。自分の上からシャンプーの匂いがした。指定された場所にいくと彼が笑顔で手を振っている。イケイケなバーだった。

「おかえりなさい」
「ただいま!さすがだね!よく来たよ」
彼はなんだか嬉しそうだった。
「こんにちは」
「コジくん、こんばんわだよ笑」
「どうもはじめまして、コジです」
知らない男性1名と女性が2名いた。

「はじめまして」
そこにいた男性はものすごく妖気な雰囲気を醸し出している。
「どうも」
「コジくん?可愛い顔してるね」
「お兄さんは色っぽいですね」
「あれ?男性いけるの?」
「いやいや」
「かわいいね」
男のぼくでもドキッとしてしまうほどの男性だった。絶対にモテるし、たくさんの女性を抱いているだろう。話を聞くとその彼もベトナムに住んでいて、向こうで会社をやっているらしい。その見た目は若々しくはあったが40歳近くだという。経験値がノンバーバルで物語っている。

「何飲みますか?」
1人の女性がメニューを差し出してくれた。整った顔でスタイルも美しい。
「ジントニックにします。」
「すみませーん、ジントニックひとつ~」
「ありがとうございます。」
「いい感じの男の子が来ると思ったからどんなイケメンかと思ったらすごく中性的だね」
「すみません、イケメンじゃなくて」
「謝ることないよ」
「そうですね」
りさ30代半ばだという。そうには見えない綺麗な女性だった。

「乾杯」
「おいくつなんですか?」
ニコニコともう1人の女性が声をかけてきた。
「28です。」
「えっ、めちゃくちゃ童顔ですね!同い年かと思いました!」
1人だけテンションが少し高い。
「おいくつですか?」
「24です!」
「あ、逆に?雰囲気が落ち着いてますね」
「よく言われます笑 老け顔かな」
「そんなことはないけど、落ち着いてる」
「それっていいのかな?笑」
ゆみは年下だった。客観的に見てもぼくより年上っぽく見えるが、中身は少し幼稚なようだった。ぼくはりさに釘付けだった。普段出会わないような綺麗女性。ただ、今日は招待された側だ。飲み会を楽しもうと思った。

それからトークはすぐに男女の話になった。
どんな男性がモテるのか。女性に求めるものはなんなのか。みんなで好き勝手に話した。

3杯も飲むと酒が回ってきた。話題はナンパになった。
「コジくんはナンパはする?」
30代の男性が聞いてきた。
「できるときはします」
「お、してる人の言い方だね!どこでするの?」
「場所は決めてないです。声かけたい人がいればどこでも」
「いいねえ、おれといっしょじゃん。」
40手前の男性が乗ってきた。
「お兄さんはナンパうまそうですよね」
「そうだね、おれは帝王だから笑」
「帝王っぽいです笑 どこが多いんですか?」
「クラブが多いね。あそこは楽勝だし」
「クラブですか、確かに強そう。ぼくは苦手ですね」
「そんなことないと思うけどな。まあ得意なところでやればいいさ」
話を進めるとナンパブログで盛り上がった。彼もチバさんの存在を知っていた。

話に没頭していると、時刻は4:00を回っていた。
「そろそろかな」
30代の男性が言い出し、解散することになった。

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