セールスパートナーにHESaaSを浸透させていく道のり
こんにちは。BONXの千田です。今回の記事のテーマはBONXのビジネスモデルであるHESaaSについてです。
通常のサービスはSWのみ、HWのみでそれぞれ販売するのが一般的ですが、BONXはSWとHWを一緒に使って初めて真価を発揮します。そのためHWとSW両方をパートナーに売っていただき、HESaaSとしての利益を獲得していただく必要があるのです。
本記事では、HWのセールスとSWのセールスを分けて説明しつつ、セールスパートナーにHESaaS浸透させるために、やってきたことについて語っています。
Partner Salesをやることになったきっかけ
2020年の終わりごろ、それまでHWのパートナー向けのSalesを担当していた方が退職されました。その翌年明けの2021年1月にCOOの峯岸さんから「Partner Salesは千田さんで」という発言が数回聞こえてきました。当時私には音声DXの案件を開拓するというミッションがあり、四苦八苦しながら案件を作成・提案して、それでも受注できないということを繰り返していました。加えて新卒2年目の1年間くらいしかまともなSalesの経験がなく、Partner Salesをやり遂げられるかどうかいまいちだったので、当時は「全く自信がない」状態でした。ですのでこのタイミングでの峯岸さんの発言には「うーん、無理っすよ〜」と流し気味に答えていました。
折しも2021年3月(当時発売日はまだ確定してなかった)にBONXの2代目のHWである、BONX miniを発売することになっていました。しかし発売日はおろかSales資料もなしという状況。これからたった2ヶ月で、販売ツールを整備して、発売日を決定し、提案をしていく。その後の商談をまとめてクローズし、BONXを納品するまでの道のりを考えると、結構気が遠くなる思いでした。
また2019年から2020年にかけて、売上は落ち込み気味。SWであるBONX WORKの受注が増えていたタイミングだからよかったものの、HW単体の売切りビジネスは限界を迎えていたのでマーケティングコストを掛けることもできない。この状況下でやれることも少なかろうと、後ろ向きなことを言って申し訳ないのですが、当時の状況を鑑みて実際すごく後ろ向きでした。
しかしながらBONXに来たそもそもの理由は「スノーボードに関わる仕事がしたい!」という気持ちが強かったから。CEOの宮坂さんと同じくスノーボード ”バカ” だった私も、学生時代に冬場は北海道、夏場はニュージーランドや南米など年中雪山を追いかける生活をしていたので、大好きなスノーボードに仕事として関わることができると嬉しいなという想いはおぼろげにありました。最終的にはCOOからのミッションということもあり「よしでは一丁やろう!」とPartner Salesを担当させてもらいました。
PS担当直後はHWの販売がメインのミッション
業務向けのサブスク展開を視野にHWの販売を開始
BONXの最初のビジネスモデルはHWの企画・開発・販売でした。そのためプロモーションもたくさん経験していましたし、クラウドファンディングでの成功などコンテンツ的な素材も充実していました。おまけに、スノーマーケットにおいてはBONXは非常に認知度が高い。雪山にいくと思った以上にBONXを知っている人が多い状態だったので、個人向けにBONX Gripやminiを販売すれば、ある程度の数量が売れるなという感触がありました。その上でパートナーシップを拡大しつつ、ゆくゆくは業務向けに、SW・HWのサブスクリプションサービスに展開していくという狙いがありました。
初めからスタートアップならではの提案を貫き通した
BONX miniはクラウドファンディングの頑張りもあり8000万円ほど売れたので、「クラウドファンディングで作ったコンテンツをフル活用してください」や、チラシだけは作って何とか体裁を保ち、「BONX miniはオンラインで売ることを主軸にしてください」など若干無理のある提案をしていました。通常のHWのメーカーはきちんとした販促物を用意して、はたまた店頭に販促のための応援販売員を送り込むなど、小売店の店頭でしっかり販売できる体制を整えています。当時はある意味スタートアップのやり方を押し付けるような形の提案になっていたと思います。しかしなんと担当してすぐにBONX miniの発売があり、計1000台以上のご注文をいただきました。
やったこととしては非常に単純です。パートナーのみなさまにアポイントを取って「条件をよくするので沢山買ってください」とお願いをしただけ。とはいえ、きちんと各社揃って発売日に店頭やECサイトで販売を開始していただく必要はありますので、スケジュールを切って、「発売日に販売を開始していただくには、いついつまでに注文をお願いします。いくつの注文をコミットしていただければ、これだけの有利な条件で出しますよ。」と提案を差し上げました。ここでは注文見込みの回答の期限や、発売日までのスケジュールもある程度細かく指定していました。
一方でオンラインだけの販売を想定して「売れる見込みがなければ店頭の在庫をもたないでください」と受注販売のスタンスを取りました。というのも、それまではお客様がお店で実物を見て買うという事が当たり前というパートナーもいらっしゃって、在庫を持つことを前提としていたからです。私の思いとしてはバッテリーもののBONX HWには賞味期限があるため、売れる分しか仕入れていただきたくなかったのです。
こうした無茶な提案を続ける中、オンラインでの販売を中心に動いてくださるパートナーから数社まとまった注文をいただいたことで、多少気が楽になったことは覚えています。ただし目標が昨年の3倍でしたから、全く足りていないのは事実なので今もですが常に焦っています。
結果として3年で2.2倍の売上に
結果としては私が担当する以前にそれまで横ばいだった2019年と2020年と比べると、担当して以降の2021年は1.6倍、2022年(まだ途中ですが)は2.2倍で着地見込みです。これはBONX Gripの販売に加えて2021年にBONX mini、2022年にはBOOSTを市場投入してSKUが増えたことも一つの要因ですが、上り調子になっています。
「仕入れて売る」から「ソリューションの提供」へパートナーとの共栄を目指す
SWの販売を通してより高機能なサービスを提供
このようにHWを販売することで少しずつできるようになってきたPartner Salesの活動に、SWを販売するというミッションが加わります。これまでのHW販売の「仕入れて売る」から、SW販売は「ソリューションを提供する」に中身が変化します。
SWを開発して販売していく理由は、より高いセキュリティ、大人数で通話、複数チャンネル同時接続など、より高機能なBONXのサービスをマーケットが求め始めたからです。これはいけるんじゃないかという手応えは、2018年9月の入社直後からありました。誰もが知っているようなラグジュアリーブランドがBONXのファーストユーザーになってくださったのです。それ以降、ウェブサイトからお問い合わせをくださるお客様が多くなっていきます。
そうしますと、BONXのDirect SalesのメンバーとCustomer Support/Satisfactionだけでは徐々に手が足りなくなります。そこでより多くのお客様に知っていただき、お客様が望まれる購入手段を選んでいただけるように、SWのパートナーセールスを拡大していく必要があるのです。
SWの販売ネットワーク構築(正攻法)
SW販売において大事にしているのはシンプルに「BONXを売りたい、BONXを売ることで自分たちのお客様の働きをより良くしたい」と言ってくださる、思いを一つにして販売していただけるパートナーと販売ネットワークを構築していくことです。
BONXはスタートアップで知名度もまだまだですから、自分たちの力だけでは当然十分なお客様にサービスを知っていただくことはできません。またこの先も自分たちだけで今の成長スピードを維持できるとも思いません。お客様とサプライヤーの間には当然利害の相反がありますから、双方の間を取り次いで代理交渉をしてくれる存在が求められます。そうしますと、一緒に成長してくださるパートナーの存在が非常に大切になります。
具体的なパートナーとしては、株主でもある、兼松コミュニケーションズ様、加賀電子様、リコージャパン様だけでなく、BONXがPMFしている小売業、建設業、介護業、ホテル業に独自の販売網を持つ企業、携帯電話のキャリア、無線専業の商社など多くのパートナー様がBONXを販売したいと、日々お声がけをいただきます。
そういったパートナーがBONXとビジネスをすることで得られるメリット、そのメリットに対して、BONXが貢献できることの整合を計り、売っていただけるようにする仕組みを作っていきます。具体的にはBONXを取り扱う目的や、その目的にそってメインで売っていただく製品・サービス、販売活動に対して掛けられる人員の策定。そして協力していただける部門への説明、最後に大事な取引の条件、販売開始に向けた営業のみなさんに向けた勉強会の実施、販売キャンペーン施策の企画立案と実行。これらを本当に地道にやっていきます。
これらのプロセスを通じて大袈裟ですがBONXのことを愛して、一生懸命売ってくださるパートナーや 営業パーソンと出会い一緒に大きく成長していく。結果としてBONXをご利用くださるお客様に笑顔になっていただくことが、SWの販売ネットワーク構築のゴールです。
エンタープライズ向けのSW販売における裏話(奇襲法)
上記のように販売ネットワークを構築していく中で、SWのPartner Salesで最初に関わった案件はこの会社が始まって以来の超大型案件でした。しかし当時はBONX(小さいスタートアップ) vs A社(業界のガリバー)という構図だったため、どう逆立ちしてもこの案件は取れそうになかったのです。お客様からも「業界のガリバーがBONXと一緒に案件をやろうと言うのであれば、BONXに依頼できる可能性がある」と言われている状態でした。
どうすればこの状況を変えられるか思い悩んでいたところ、そのA社とスタートアッププログラムを通して関係を持つことができました。「これは千載一遇のチャンスだ!」と思い、A社のプログラム関係者や近しい人に「誰にBONXを扱ってもらう話をすればこの状況から逆転できるか?」と尋ねたところ、Xさんという名前がその候補に挙がりました。
その後Xさんの友達やXさんと過去に繋がりのある複数の大先輩の方々とFacebook上で繋がり、何度かやり取りを重ねて、無事にXさんにたどり着くことができました。
Xさんには「お客様も我々両社が手を結んでくれればBONXに依頼できる可能性があるとおっしゃっています。是非、BONXを扱って、この案件を一緒にやらせてください」とお願いをしました。
その日のうちに適切なご担当に繋いでいただいてから、この案件はトントン拍子に話が進み、結果BONXを採用していただいてユーザー数が一気に1.5倍にまで増加。このあたりの部分は、またの機会にでもお話しできればと思います。
HW/SW販売についてそれぞれ思うこと
HWの販売について
パートナー経由のHW販売については、これまでは個人の方がレジャー目的でECでの購入がメインになっていました。その中にちらほらと、数台まとめてご購入いただく法人のお客様がいらっしゃいます。実は、このセグメントのお客様は一様に、トランシーバー・無線機は買い切りで買って、壊れるまで使い続けていただくケースが多いので、BONXの耐用年数を鑑みて複数回のご購入をいただくかモデルチェンジをするリピート狙いの戦略を行っています。また、ECで販売するにはお客様からの評判が大事なのでモールでご購入していただきやすくするために、レビューにも力を入れていただいています。
SWの販売について
SWの販売についてはまだまだ道半ばですが、パートナーごとにそれぞれ違った成功方法があると考えています。有形のHWを販売するよりはどうしても複雑で難しい。パートナーの先のお客様にはこれまで買い切りで使えていた無線機に変わるものを、毎月のランニングコストを払って使うという常識がない。だからこそ成功と目的の定義付けを一緒にやらせてもらい、その定義から逆算したビジネススキームや、直近の行動を決めて、同志を見つけて少しずつ前に進むことがSW販売の最初の一歩だと思います。
例えばうまく進行しつつある介護業界でいうと、サービス同士の横の連携が非常に重要です。従業員のみなさんへの情報が集まる口を耳として、サービスを開発していく流れを加速させています。
下記のようなサービスと、BONXが有効に活用いただけることが確認できており、各社、活発に販売していただいています。
EGAO Link
HitomeQ
LASHIC
ナースエコール
一口にサービスの連携といっても実際には以下の段階があります。
①前提として相性良く使えること。
例:BONXのイヤホンでナースコールの着信が聞こえて、入居者様と会話ができる。
②先方のサービスからAPIでテキストデータが飛んでくるので、それを受けて情報を再生する。
例:「XX号室の田中さんからのナースコールです」と、どこの誰かを教えてくれるだけで、端末画面を見る必要がなくなる。
③その上で、音声で介護記録を入力することで手動での入力の手間を省き、他の人へのシームレスな連携をする。といった具合です。
このようにBONXと他サービスとの連携を深めていくことで、よりお客様のニーズにマッチする度合いが増えれば、お客様への提案機会が増えて、ご利用いただける可能性が高くなると考えています。
HESaaSをセールスパートナーに浸透させていきたい
BONXのHESaaSになるとできることが大幅に増えます。例えばHWの場合、サブスクリプションで買い続けていただくと、お客様にとってはずっとコストがかかり続ける。でもその代わり自分に合わないと思ったら違うモデルに交換できる。新製品へのモデルチェンジやバッテリーがへたったりするなど、一定の期間使って陳腐化したらサプライヤーが交換してくれる。合わなくなったらすぐに辞められるお手軽さも持ち合わせつつ、HWを使い続けることで、仕事にも有用になっていくのです。
(※一例として、2022年10月から業界初イヤホンマイクのHWサブスクを大幅に値下げし、お客様に使い始めていただきやすくなりました。)
そしてHWとともにSWも進化していきます。機能がどんどん増えていき、不具合が改善されていくというのは当たり前です。BONXならではの将来性として、各拠点のオペレーションレベルが音声のビッグデータ解析によって明らかになり、それがお客様の仕事の進化、チームの成長のためにフィードバックされる。加えて大規模なお客様であれば、運用系のサービスやカスタマイズされた機能を提供することで、細やかなニーズに対応をすることも可能となります。
ビジネス戦略など抽象度の高いレイヤーからお客様と一緒に走ることができればできるほど、DXの幅は広くなり要件は複雑化し、インテグレーションが進み、導入後のビジネスインパクトが大きくなります。このようにエンドユーザー様のビジネスに貢献できる、BONXのHESaaSが秘めた可能性は非常に大きい。
またTesla motorsに代表されるような、HESaaSの領域ではもっとSWサービスが今後拡大していくと思います。SWでできること、AIなどの最新のテクノロジーとの掛け合わせ、HWとの掛け合わせを柔軟にもってパートナーと共にお客様の成長に寄与する提案していきたいと考えています。
最後に
これまでの無線機やトランシーバーは、買い切りで買ったものを壊れるまで使い続けることが常識でした。ある種、先にコストを払ってそれを一定期間掛けて償却するわけです。このとき機種選定を間違えてしまえば大打撃となってしまうので、慎重に選んで購入したものを長く使い続けるという利用のされかたでした。ですので何年もモデルチェンジが進まず、昔のものを使い続けられている方が今もたくさんいらっしゃいます。
この常識を僕らが変えて行く必要があります。その理由はこの人口が減っていく人手不足の局面では従業員のエンゲージメントと生産性をあげることが必須だからです。あえて現場と申しますが、現場で働く従業員のみなさんに最新鋭のテクノロジーを活用した武器をもってフル武装することで、仕事の仕方が変わり、生産性があがっていく。結果として一人一人の仕事の成果が出るようになり、仕事を楽しめるようになってエンゲージメントが上がる。その結果、会社全体が変わっていくのです。
またSWの販売パートナーの強化も同時に行っています。数十社あるためビジネス的にも各社各様ですし、BONXを扱う目的も様々です。自分はサプライヤー的な立場でかつ、ほとんどダイレクト型のビジネスモデルの経験しかないので、Partner Salesというのは今も未知の世界です。
ただしBONXを扱っていただく目的が明確であったり、BONXに高い価値があると認めてくださるパートナー様に出会えていることが、これまでの財産になっています。
BONXではSalesの中でも、パートナーセールス、ダイレクトセールスなど複数の役割を細分化しつつありますので、入っていただいたらすぐにイニシアティブを取っていただくチャンスがあります。ご興味がある方、まずはカジュアルにお話しできればと思います。
現在、BONXでは今後の事業拡大を見据え、採用活動を行っております。
Sales Teamに関する詳しい募集要項はこちらからどうぞ。
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