見出し画像

よもぎみち~ねこの日ショートショート

 散歩中、車道沿いの原っぱに、緑のふかふかが絨毯を広げたのを、ふと踏んでみたくなったのです。
 いつものセメント側溝は、昼の陽気がぬくぬくと、そりゃあ渡り良い場所ですけれど、明日もその明日も、そのまた明日も逃げやしません。
 緑のふかふかは、じきにぼうぼう伸びるか、人に刈られて土になる。今が踏み時と見た私は、側溝の細路をしゃなりと降り、自慢の白靴下を品良く上げて、ふかふかの中でもふかふかした、若い緑へ乗せました。

 柔らかそうなふかふかの、中は思いの外ごわごわと、枯れ草も混じって足裏をつつきます。夜露の残りがじっとりと、靴下に染みて、おぉ冷たい。
 おまけに何でしょう、青臭いわ土臭いわ……『もぐさ』とか言う、うちの主人が戸棚に置く、煙たい薬にそっくり。
 ふかふかを逃げて側溝へ戻り、恐る恐るぺろりとやって、舌が苦さに痺れました。
 これを好んで食べるなんて、人はよくよく悪食だ事。猫の私には解りません。