寄席感想 2020/3/8

寄席に行ってきたのでその感想です。(レポートというよりはごく個人的な感想です。)

2020/3/8 鈴本演芸場 昼席

・柳家 小はだ「転失気」
・柳家 小はぜ「やかん泥」
小はださんと小はぜさんはお二人ともはん治師匠のお弟子さん。はん治一門全員の高座を見られるというちょっとお得な日だった。言われてみればなんとなく兄弟の様な感じも出てくるので、やっぱり師匠と弟子・兄弟弟子というのは特別な関係だと思う。
・三増 紋之助「曲独楽」
紋之助師匠は曲独楽自体の技術もさることながら、演目が進むにつれてどんどん調子が上がっていき「ヨシッ!!」「いいぞいいぞ~」「よっしゃ~!」などなど、どんどん自分への掛声というかワッショイ的な、何?発言とか台詞というよりもっとワッショイみたいな、心の声じゃなくてほんとの声がどんどん出てくるのすごく好きなんですよね・・・。明るく本当に楽しそうに芸するとことか、もう全身で芸人!って感じで素直に応援できる。「とってもうまくできました!!」ってにこにこして自分で言っちゃうんですよ、そしたらこちらも「芸も師匠も最高だよ!」ってなるしかない。師匠が入るとその香盤のおめでた度が3上がる。間違いない。
・春風亭 朝枝「湯屋番」
二つ目に昇進して朝七さんから朝枝さんに名前も変わったそうです。昇進おめでとうございます。あまり前座さん時代の高座は見られなかったけれど、昇進後にもうこんなに堂に入った高座ができるものなんだな、すごい。菊之丞師匠みたいな感じの二枚目なので、この話が良く似合っていた。そしたら多分船徳とか明烏とかお見立て辺りもはまりそう。見たい。
・柳家 喬之助「寄合酒」
師匠の見た目と今日の着物がブルーなのも相まって「"善”の文左衛門師匠みたいだな・・・」と思ってしまった。(なんだか文左衛門師匠は「ぶんざえもん」という名前の響きが似合っていすぎたので文蔵襲名から3年以上経った今でもいまだに心の中では文左衛門師匠と呼んでしまう)そしたら演目も文蔵師匠で良く見る寄合酒だったので更にちらつく文蔵師匠の陰。というのは大げさで、気持ちの良い兄貴分のおかげで楽しい寄合酒でした。
・青空 一風・千風「漫才」
・桂 文楽「権兵衛狸」
狸系の師匠の狸話はかわいい。なのでわりと強面の文楽師匠でもやっぱりかわいい。田舎弁ばっちりの権兵衛さんも言動の端々で好感度高い!それはお客含めて知り合いも多くなるな。
個人的に権兵衛狸で一番好きなのはさん喬師匠で、独特の感じで「ご~んべ」と呼ぶ声がやみつき。あと狸は燕治師匠もすごく良い。見たい。
・橘家 圓太郎「真田小僧」
時間の都合か、按摩さんだったというネタばらしの手前という一番大切な所で終わってしまった・・・。多分ほとんどのお客さんが知ってるから良いとは思うけど、結構珍しいとこで切ったなと思った。
・ダーク 広和「奇術」
紋之助師匠も良いけどダーク師匠も良いですよね・・・。師匠の「わたしマジックが超~~好きなんです!見て見て!すごいよね!?」という感じがほんと好き。見た目も話し方も端正でグレーヘアがナイスで、でもやっぱり滲み出る正しい胡散臭さ(褒め)。音源がサラッと持参のスマホとスピーカーだったり、ビシッと本格的なマジックを見せてくれるのがショーという感じで本当に楽しい。(もちろん寄席の奇術の芸人さんはマジックの技術だけを見せるのではないので、キャラや話芸も全部ひっくるめてそれぞれの師匠に違った魅力があってですね・・・)
師匠の手からどんどんカードを出していくマジック好き過ぎるので、一度飽きるまで見続けたい。
・柳家 喬太郎「漫談(コロッケそば)」
開口一番で「落語会がキャンセルになったので暇つぶしに来ました」って言ってここまで笑いが取れる。そしてあっという間に師匠と観客の一体感が作られていった。それを可能にするのは、もちろん観客側の師匠への期待と信頼感はあると思うけど、多分師匠の方でも何か信頼というか一部分だけでも開いてくれているところがあるんじゃないかなと感じることができて、こちらの勝手な思い込みかもしれないけど、あれはなんだか心地よく不思議な感覚だったな。
それにしても師匠ってなんであんなに面白いんでしょうね。コロッケやらソーセージやらに擬態して話しても全然違和感がない。コロッケ一つ一つの個性が自然に伝わってくる。ソーセージが「どうも、この棚を仕切ってます、私シャウエッセンと申します」ってすごく渋く言うんですよ。立ち食いそば屋の天ぷらの魚肉ソーセージの切り方が縦!って言ってるだけなのに、町中華で旨くも不味くもない中途半端なカツ丼を食べただけなのに、コロッケそばを食べたことがある人が多いことに遺憾の意を示したって((後ろに反り返りながら)「な~んかそれはそれでおかしくな~い??」)、どれもこれもすごく面白い。軽めの奇跡の人かな。
・すず風 にゃん子・金魚「漫才」
本日の金魚師匠の頭は「花粉症と書かれたティッシュ(トイレットペーパーかな)と使用済みを捨てるミニチュアポリバケツ」。クレイジーだけど実用的。漫才中にポリバケツからペロッとティッシュが垂れるラッキーハプニングもあり。師匠の漫才には問答無用という単語がよく似合う。元気出ます。
・三遊亭 圓歌「やかん」
師匠が古典?と思ったら不純物99%でした。師匠らしい。
・春風亭 一朝「壺算」
一朝師匠と次の正楽師匠は令和元年度の芸術選奨文部科学大臣賞を受賞されました。おめでとうございます!一朝師匠は自分の最推しの師匠なのですが、もうここまで好きだとどこが良いとかうまく言えない。高座にめくりと師匠が存在するだけで既に最高なのに毎回最高の落語まで演ってくれる。全てに感謝するしかない。
・林家 正楽「紙切り(コロッケそば、五月人形、お花見、はん治一門)」
ここで喬太郎師匠のコロッケそばがお題に。楽しかったもんね・・・。BGMが喬太郎師匠の出囃子だったのも嬉しい。はん治一門はそこへはん治師匠の師匠である小三治師匠も追加で豪華な顔ぶれ。各自の特徴を良く掴んでそれを切るのって本当にすごい、特にはん治師匠の横顔が良く似ていて驚きました。
・柳家 はん治「モーツァルト」
昼のトリのはん治師匠。寄席ではほぼ妻の旅行かぼやき居酒屋というイメージがあるので、いったいトリでは何をかけるのかと楽しみにして行った。「ちょっと変わった話を」と前置きしてのこの「モーツァルト」、とても楽しい話だった。初めて聞く話だったけど、師匠のオリジナルなのかな。ご隠居に色々教わった事を別のところで自分でも真似しようとしたらうまくいかない、という古典のセオリーに魚屋の主人とお医者さん、モーツァルトの幼少期の話を当てはめた感じ。途中でBGMにアイネクライネナハトムジークがかかる演出も特別感があって楽しかった。ベルサイユ宮殿の柱に舌を巻き付けるという強烈な絵面、おかみさんが主人と同じリアクションをしたりささやかで役には立たないであろう才能について賑やかにやりとりするくだりのほほえましさ。はん治師匠の声や話し方と相まって、なんだか人間ていいなあと思いました。
寄席のトリはやっぱり特別で、はん治師匠もいつものふんわり優しい感じに更に緊張感と集中をまとわせて、いつもと違うネタをたっぷりと掛ける。寄席でおなじみの師匠でも、トリの時はちょっと特別な高座で知らなかった新しい魅力を見られてすごく楽しいです。

#落語