落語会感想 談修インザダーク 2020/9/7

こんばんわ。立川談修師匠の独演会に行ってきました。

コロナ自粛が明けてから寄席にはちょこちょこ行っていたのですが、独演会は久しぶりでした。というかオンラインではない独演会って今年初かもしれない。まじか。(と思って手帳を見たら昨年末の志ん輔師匠の独演会の後は今年2月の一朝師匠と志ん輔師匠の二人会だけで、独演会はやっぱり年内初でした。もう9月なのにな!)

独演会。沢山の師匠が一席ずつ芸を披露する寄席とは違って、一人の師匠の芸をじっくり堪能できるのが独演会の良さ。師匠としては、会の成否が自分一人にかかってくる責任の重さと、それに比例した自由さとかやりがい感とか、寄席とはまた色々違うはず。お客さんの方も、明確にその師匠を目当てに来ているので、そういう関係性は既にできあがっている空気の中で、ダーンと師匠の個性を楽しめるのも良いですね…。

今日の会は談修師匠の独演会「談修インザダーク8」。今まで予定が合わず行けなかった会ですが、ようやく8にして行くことができました。タイトルの通り、笑いどころが少なかったり、陰惨な場面があったりブラックジョーク的な側面のある噺を中心に掛けている会で、これまでに「らくだ」「死神」「心眼」などの寄席で時々聞けるものから、結構レアな「後生鰻」や「もう半分」、多分かなり珍しい「妲己のお百」「身投げ屋」などなど、一口にダークと言いつつその中でもバラエティ豊かなラインナップなんですね。今まで行けなかったのが残念です。師匠の心眼聴きたい。

今回は「ぞろぞろ」「蜘蛛駕籠」「木乃伊取り」と、笑いどころも多くダークさは薄い演目です。最初に師匠が仰ってましたが、そもそも今は社会状況からして暗くなりがちなので、今回はあえてマイルドな演目を揃えたそうです。

会場は日本橋社会教育会館。こちらは椅子席の前後の高低差もわりとあって、高座が見やすくて大きさもほどよく良い会場でした。なんか会場の雰囲気も良くて、まあ確かに談修師匠が好きな人が集まったら雰囲気悪くなるって事は無いだろうなとも思うんですが。きちんと応援したくなる師匠です(個人の感想です)。

・ぞろぞろ
噺の中で、荒物屋の娘さんが話した、幾度となくお題目を唱えても、適当では意味が無くて本当に気持ちを込めて唱えたものだけが価値を持つという寓話が妙に心に残りました。
噺自体はかなり軽くて楽しい内容で、ぞろぞろっと出てくるわらじに訝しんだりびっくりしたりする親子の様子がかわいい。神様にしても酔って寝てる所を起こされて、適当すぎる御利益を授けるのも抜けててかわいいとこがある(床屋さん的には冗談じゃないと思うけど)。きっと後で神様に文句言いに行ったはず。

・蜘蛛駕籠
タイトルの字面は怖いけど、むしろ怖いのはそこだけとも言える。くせ者の客(客でもない)ばっかりで翻弄されて参っちゃう駕籠屋さん二人の様子が楽しい。駕籠屋の先輩の兄貴分も良いけど、新入りのちょっとぼーっとした感じが師匠に合ってて良い。
ラストは底から二組の足がにゅっと出ている駕籠を、駕籠屋の二人がとりあえず前後で担いでるから結果的には四人で普通に歩いてるだけという、えっどういう状況?みたいな、馬鹿馬鹿しいけどでもなんだか妙に楽しげな様子が目に浮かんで笑ってしまいます。

・木乃伊取り
これも木乃伊とは言っても別に木乃伊が人を襲ったりはしません。まあ、母親の必死の優しさが込められた巾着を見せられても特に胸に響いてない若旦那は怖いと言えば怖いか…。あとラストで出てくる清三の相方の花魁の手練手管が鮮やかすぎて怖い笑。
主な登場人物が7人出てきて結構多いんですが、一人で全員の個性も出しつつスッと演じ分けながら話を通すのって結構すごいことだよな…と改めて落語の凄味を感じました。

談修師匠は、個性豊かな噺家さんの中では(特に立川流の若手は個性がエグい)どちらかと言えば地味寄りで、高座も形通りで独自のくすぐりとかはほとんど無い、無いんですが、でも高座を見ると確かに良いんです。師匠の高座からは、ちゃんと師匠の魅力が伝わってくるんです。
なんででしょうね、やっぱり師匠が落語を本当に好きで、真摯に噺やお客さんと向き合って芸を見せてくれているからかなと思います。もちろん今まで努力とキャリアを重ねられてきて、技術だって十分に間違いありませんが、でも多分最終的には師匠の真面目さとかひたむきさが現れている高座が好きなんだと思います。今回も、会の最初、高座に上がるとき、とても嬉しそうな表情だったのが印象的でした。…そういうとこだぞ(ニコニコ褒)。

良い独演会でした、また行きたいなー。

読んで頂きありがとうございました。