新年早々10年ぶりに熱を出した話
2015-01-04
☑︎体温38.5°
☑︎頭が痛い
☑︎喉が痛い
☑︎咳が出る
☑︎音が遠い
☑︎果汁100%のオレンジジュースが喉に染みる
☑︎マグロの刺身がただの生の魚の肉の味しかしない
☑︎バイトでお客さんに注文された「からあげクン」を袋に入れ忘れるなど些細なミスを犯す
☑︎きっと今の私のこの状態をジップロック社の人が見たらCM出演のオファー来るなってくらい全ての外気を遮断して寝てもそれでもまだ寒い。冬のツーブロかってくらい寒い。
もしかして:インフルエンザ
このとき既に世間では、2015年と言う単語がはびこっていたけれど、個人的には10年ぶりの発熱の事件性の高さを前にしたら、2014年から2015年への移行は定期の更新くらいに過ぎなかった。
ということでやって来た休日診療。
年末年始だからすごく混んでいるかと思ったら、午前の最終受付だったみたいで、私の診察が回ってきたときには私以外の患者さんがいなかったのね。
小学4年生10歳以来の発熱ということは、病院に行くのもそれはそれは久しぶりで。
病院や医学に対する知識は現場より専ら医療ドラマやマンガから仕入れた方が多いから、あれかな、みんなが痛いと口を揃える鼻に棒突っ込まれてグリグリされる検査とかやられるのかな?
その後看護師さんが手渡す検査結果を見たお医者さんが神妙な面持ちで、
「残念ながら…今の医学では治せません」
とか言うのかな?
って、いつもより頭のおかしさ30%増しでお医者さんの前に座ったのね。
「あけましておめでとう」
「あ、あけましておめでとうございます」
いや、新年のポピュラーな挨拶なんだけどさ、
今この現場で開口一番まずそれを言われると思っていなくて、就活の面接で御社への志望理由を後回しにされたみたいな、思えばこの瞬間から完全に相手のペースに飲み込まれていた。
一通りの体調の説明と例の検査をした後、検査結果が出るまでに時間がかかるみたいで看護師さん達が見守る中、私とお医者さんのトークショーみたいな空気になって。
沈黙になると気まずいから意を決して、10年ぶりの発熱であることを言ってみたの。
医療従事者のあなたにとって、10年という月日をさあどう捉えるんだいと。
そしたらお医者さん、それへのリアクションはそこそこに、
「新しく買ったヒートテックの締めつけが強くってね、ほらここ手首がきつくてさ…どうしたらいいかな」
って白衣の袖口を捲ってセーターの下のねずみ色のヒートテックを引っ張って見せてきた。
いやいやあなたのヒートテックの束縛の強さの話とかどうでもいい〜
思い出してみてよ、10年前にヒートテックがあったかどうかも定かじゃないでしょ?
10年というスパンを軸に自身と医療の今後について熱く語ってくれよ〜
「昨日妻がユニクロ半額セールで買ってきてくれたんだけどさ〜…」
もうそこからはこの人本業ユニクロなのかってくらい、ユニクロの回し者かってくらいヒートテックについての自論が止まらない。
最終的には私が数回の洗濯を勧めて、もう私彼に診察されに来たのか、彼のヒートテックを私が診察しに来たのかよくわからなくなっていたそのときーー
「先生、結果出ました」
なんてテレビ的タイミング。
あれでしょ、ここで院内の空気が一変するんでしょ。お医者さんの関心が検査結果へ向く。
「あーAもBも反応出てないから、インフルエンザではないねえ」
せっかくあの検査をしたから反応が出ていてほしかったような気がしなくもないけれど、この状況から早く抜け出したい気持ちの方が強かった。
診察の結果と薬の説明を聞き、椅子から立ち上がりお医者さんにお礼の挨拶をして、彼に背を向けて数歩歩いたところで右足の違和感に気づく。
急に立ち上がったことによる立ちくらみに耐えながら右足の裏を見ると、家を出る前に靴下の裏に貼ったカイロがなくなっているではないか。
きっと何度か貼り直したから粘着力が落ちていたんだろうねって今歩いて来た後ろを振り返ると、そこにあるはずのそれはない。
それを見つけたのはさらに目線を上げた先、
お医者さんの手の中だった。
(あ、わざわざ拾ってくださ…)
私がまだここにいることに気づいていないのか、拾ったそれを手に何かを思いついたかのような表情をしたと思った次の瞬間。
それを、ヒートテックの袖口に、入れた。
何か見てはいけないものを目にしてしまったような気になり、すぐにそっと診察室を後にする。
私の心は、サラファインであった。
新年のご挨拶が遅くなりました。
皆様あけましておめでとうございます。
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今年もこんな感じでゆるゆると更新していきますので、くだらない長文にお付き合いのほど、よろしくお願いいたします。
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